急章:叶わぬ望み-12
『ハァ……ハァ……』
『はぁ゛……はぁ゛……。く、クソ……一体、なんだってんだ……』
『ハァ……ハァ……な、なんで……』
『はぁ゛……はぁ゛……』
『なんで、やり返して来ないっ!?』
スカビオサとロドデンドロ、そして控える鎧の集団は肩で息をしながら眼前の敵、クートゥを睨みます。
かれこれ数時間。彼等はその手に握る剣を彼女へ幾度、幾百度となく振り下ろし、刃を肉に、骨に食い込ませました。
噴き出す黒く濁った血が彼等の装備を汚し、元の上品な金属色は輝きは、その濁った血によって荒々しく染め上げられています。
しかし逆に、彼等が何か負傷したのかと言えばそうではありません。
彼等はただ自身が何度も振るった本気の斬撃や刺突によって体力が削られ、スタミナ切れを起こして息を荒くしているだけの事。決してクートゥからの反撃にあったわけではありません。
『貴様……なんのつもりだッ!? 化け物風情が俺達に手加減のつもりかッ!?』
『その子が居るから攻撃出来ないのはまだ分かる……。だが小さくとも反撃する程度なら出来るハズだろっ!?』
そんな彼等の叫びを聞き、クートゥは内心でほくそ笑みます。
彼女の狙い……。それは散々自分を斬らせて体力を消耗させ、戦闘の継続を不可能にして彼等を撤退させる事でした。
自分からは攻撃出来ない。
相手は容赦無く攻撃して来る。
反撃をしようにもスターチスに矛先が向かないとも限らない。
そんな八方塞がりの中、クートゥは思い出したのです。自身が〝不死〟である事を。
自分の身体を無限の盾とし、好きなだけ相手に斬らせて疲弊させ撤退ないしスターチスを連れて逃げ出せるだけ時間を稼ぐ事が出来る。そう、クートゥは思い付いたのです。
この方法ならば例え相手が集団であり、中に手練れが混じっていたのだとしても有効に働く……。何週間も走り続けられる持久力と、自身の不死性と自然治癒能力にものを言わせた力技ではありましたが、今彼女が出来る中で最も有効な手段など、他にありませんでした。
『……終わり、が?』
『はぁ゛……はぁ゛……あ゛ぁ?』
『私はまだ、元気、だぞ? なのに、もう、終わりが?』
『っっんのヤロウ……。ぶっ殺してや____』
『待つんだロドデンドロっ! 挑発されているのが分からないのかっ!?』
『ウルセェっ!! 挑発されようが何だろうが斬らなきゃ終わらんだろうっ!? 他にどうしろというのだっ!?』
『……使うしかない、かな』
スカビオサがそう口にした途端、ロドデンドロの怒色に染まった顔が一気に鎮火して行きました。




