女狙撃兵の護衛任務
「動いたっ!」
『ドーーンッ!!』
にらみ合い、膠着状態だった両軍だが、遂に動き出したらしい。
それを見ていた、フランシアは、対戦車用銃を撃った。
「いっ! 痛たたた?」
「反動が強すぎたか?」
フランシアは、肩を痛めたようだ。
対戦車用銃は、威力が大きい分、反動も強すぎるのだろう。
しかし、軽戦車《ルノーFT》の砲塔を撃ち抜いたのは確かだ。
下の車体は動いちゃいるが、砲塔が動かなければ、戦車戦は無理だろうな。
「くっ! もう一発っ!?」
『ドーーンッ!』
「うわっ! 敵の砲撃が始まったか?」
フランシアが、ボルトを引いて、薬莢を出そうとするが。
野戦築城された要塞から、砲撃が飛んできた。
前進する戦車隊からも、砲撃が絶えず飛んでくる。
『ドーーンッ! ドーーンッ! ドーーンッ! ドーーンッ!』
何度も降り落ちてきては、塹壕の周囲に、土煙を派手に吹き上げる砲弾。
「どうにかしねぇとな?」
これは、不味いな。
味方には、戦車が三台。
しかも、その内、二台は非武装の豆戦車《ルノーUE》だ。
敵の戦車隊、要塞の砲撃。
これじゃ勝ち目は無いぞ。
上層部よ、どうしてくれるんだ。
『ブゥゥ~~~~ンッ!!』
ん、空を見上げりゃ何か飛んでくるのが見える。
「アレは戦闘機ね?」
「たった三機かよ? いや、銀機竜も一機だけ居るな」
フランシアは、空に顔を向け、目を細めて呟く。
俺も同じく空を見上げりゃ、銀色の機械竜が見えた。
『ドカーー! ドカーー! ドカーー!』
「爆撃か?」
連中は、戦車隊を攻撃しなかったが、その狙いは要塞の方だったらしい。
三機の戦闘機からは、機銃弾が放たれ、何回も手榴弾が投下される。
『ドドドドドドドドドドーー! ドカーー!! ドカーー!!』
要塞の上に設置された、野砲と迫撃砲の八割は、今ので破壊されたな。
その次いでに、扱っていた砲兵隊も、かなりの数が死んだだろう。
『ドカーー! ドカーー!』
そして、戦車隊だが、前進は止めたらしい。
代わりに、砲撃が激しく成ってきた。
味方の《ルノーFT》は何処だ。
「ん? あっちから来たか」
「味方の戦車部隊だわ?」
『キュラキュラキュラキュラ』
俺は、敵の戦車部隊の右手から、味方の戦車部隊が来たのを見る。
フランシアも、対戦車用銃を構えながら右側を振り向く。
そこには、沢山の戦車が前進してきた。
軽戦車《ルノーFT》が一台。
中戦車《シュナイダーCA1》が三台。
重戦車《マーク3》が三台。
あの一台は、さっきの軽戦車《ルノーFT》だな。
側面に回り込んでいたのか。
増援部隊と一緒に、奇襲を仕掛ける積もりで居なくなっていたのか。
『ドーーンッ! ドーーンッ!』
『ドーーンッ! ドーーンッ!』
双方で、撃ち合いが始まったか。
よし、フランシアも対戦車用銃を撃つだろう。
『ドーーンッ!』
「えっ? 何処を撃ってい?」
「左側から来るわっ!」
そっちは反対方向だろうと思った。
だが、フランシアは敵の別動隊を見つけたのか。
弾丸が発射された方角を見ると、確かに敵部隊が来ていた。
しかし、ただの敵部隊じゃない。
騎兵隊と魔物から成る混成部隊だ。
「当たったわね、もう一発っ!!」
『カチャッ! ドーーンッ!』
フランシアが当てたのは、大型の魔物だ。
あれは、キラー・フォックスだな。
真っ黒い体色から察するに、アンデッド化されたのだろう。
他の魔物達も、既に全員死んでいるのだろう。
何故なら、魔物達の体色は全て真っ黒だからだ。
「アンデッド化した魔物と騎兵隊か?」
『ドドドドドドドドドドーー』
「もう一発っ!」
『ドーーンッ!』
俺は地面に設置した、軽機関銃を撃つ。
フランシアも、対戦車用銃を撃つ。
俺の放った機銃弾は、何人かの騎兵と何頭かの馬を倒した。
フランシアの狙撃は、ビッグ・フロッグの頭をブチ抜き、奴を倒す。
「あの騎兵と魔物達の狙いは私達よ、だから来せないでっ!」
「確かに奴等が来たら不味いよな」
『ドドドドドドドドドドーー』
『パンッ! パンッ!』
騎兵と魔物を攻撃する、フランシアと俺達だが、他の連中も騎兵に攻撃を加える。
さっきの随伴部隊の連中も、騎兵と魔物を狙って、撃っているようだ。
これなら、奴等は俺達まで、たどり着けないだろう。
連中の目的は、俺達を殲滅した後、戦車隊に向かう。
それから、騎兵は手榴弾を投げて。
魔物達は突進したり、鋭い爪で戦車を破壊する気だろうな。
「でも、後、騎兵は五人? 魔物は三匹だっ!」
ここからは、よく見えないが、ウルフ系が二匹。
更に、巨大なベアー系が、最後尾に一匹見える。
『ドーーンッ!』
「あ痛たたた」
フランシアは、また一匹仕留めた。
彼女が、体長五メートルのベアー系の魔物の眉間を撃ち抜いたのだ。
この調子なら、楽に掃除ができるぜ。
ん・・・背後に何か感じるな、誰かの気配が。
「ふ? うわっ!」
「くぅっ!!」
背後に、スケルトン兵が現れた。
奴は、トレンチナイフを片手に襲いかかってきた。
「死ねっ! 人間っ!」
「誰が死ぬかよっ!」
『カチカチッ』
しまった、弾切れか。
なら、軽機関銃をぶん投げて。
「覚悟っ!? ぐふっ!」
「止めだっ!」
腹に、十一キロもある軽機関銃をぶつけられた、スケルトン兵。
奴が後ろに倒れたので、俺は追撃して頭を踏み潰す。
「ぎあっ!!」
『バリッ』
やった、倒し・・・。
「不味いっ! まだまだ居るわよっ!」
『パンッ!』
フランシアの言う通りだ、スケルトン兵だけじゃねえ。
コイツ等は突撃部隊だ。
正面の騎兵部隊と魔物達は、囮で本隊はこっちだったのかよ。
「こうなったら」
背中の戦斧を振り回すしかない。
狭い塹壕なら、こっちの方が有利だぜ。
「来るわっ!」
フランシアは、狙撃銃を捨てて、銃剣を右手に握る。
「おらあーーーー!!」
「うらあーーーー!?」
『ドドドドドーー』
『ドンッドンッ』
塹壕の中で身を屈めた俺達だが、ここを目指して突撃部隊が掛け上がって来る。
ゾンビ兵、スケルトン兵、グール兵とバラエティーに富んだ編成だ。
顔を少しだけ出して、連中を見たが、直ぐに顔を引っ込めた。
何故なら、俺を狙って、短機関銃や騎兵拳銃《ロート9》を撃ってきたからだ。
危うく、顔面が蜂の巣にされそうに成ったぜ。
「うらっ!?」
「死ねっ! ゾンビ野郎っ!」
「喰らえっ!」
「喰らうのは、あんたの方よっ!」
俺は、戦斧を振って、ゾンビ兵の首を撥ね飛ばす。
フランシアは、銃剣をスケルトン兵の額に、ぶっ指した。
『ドドドドドーー』
『カンッカンッ!』
「うわっ!」
短機関銃だ、危うく頭を撃ち抜かれるところだったぜ。
戦斧の刃を顔の前に出したので、何とか防いだぜ。
それは良いが、これはーー。
「あんた、もうお仕舞いだよ?」
「ああ、その様だな・・・」
フランシア、俺達は包囲されてしまったな。
随伴部隊は、右の方に居たはずだが、何処に行ったんだ。
それに、コイツ等は一気に出てきたが、何処から出やがった。
「降伏しろ? さすれば、命だけは助けてアンデッドにしてやろう」
「チッ! 冗談じゃねえよっ!」
多数のスケルトン・ゾンビ兵が短機関銃を向ける。
その真ん中に居る、指揮官らしき制帽の黒髪のヴァンパイア。
奴は、降伏勧告をしてきたが、俺はまだ諦めちゃ居ないぜ。
「そうよっ! 私達は?」
『パチンッ』
「女、お前は後で可愛がってやるから、今は黙っていろ」
フランシアの頬を叩いた、指揮官ヴァンパイアは、真っ赤な目をギラつかせている。
く、ゲス野郎・・・どうにかして、この連中を倒さないとな。
じゃなきゃ、二人ともアンデッド兵にされちまうぜ。
後、一話で終わるわ。
なろうじゃ、《》しても、英文字と数字はルビに出来ないんだね。