dark shadow38話 大いなる光の力
「ヘルヴァトス!」
闇の竜は闇の息吹を纏い、より禍々しさは増す。
「やれ!」
「そうはさせない!」
アストラルの声が響く。
「何!?」
闇竜の息吹が消え去り、光の竜の姿が現れる。
「バドルフ、これは返しておくぜ!」
「な、ということはついに手に入れたのか?」
アストラルの右手の剣は雷鳥の姿をかたどっている。
柄には神鳥の尾、漆黒の刃には蒼白く稲妻の紋様に神聖文字
神聖文字が刻まれている。
雷光渦巻く背景。
竜の背に立つ勇者が降臨!
「貴様、セルパトラミスか?」
「その目、その輝き、その魔力。ギルフォラーズ!」
いがみ合う竜。
光と闇。
「これは宿命の戦いだ。」
ヘルヴァトスはそう言い放ち、アストラルに斬りかかる!
「皆、雑魚は任せた!」
アストラルは勇者の剣を構え、立ち向かう!
ヘルヴァトスは闇に消え、影からの奇襲をかける。
「くる!」
アストラルの脚が反射的に後ずさりをさせ、眼前を遮る黒い何かが横切る!
その直後、アストラルの頬に熱を感じた。
「━強い。気配を感じとるには・・・。」
アストラルは心を無に剣を額の前に構えなおす。
目を閉じた漆黒の背景が光の影響で紅く染まる。
「貴様なにを!?」
「姿を消せるのは影、そして光が影を照らす今、隠れられる場所などありはしない!」
アストラルは地を強く踏み込んで空高く飛躍する!
剣の刃先が天を向いたとき、青白い稲妻が剣に収束。
「誤りし闇よ!消え去れ!」
剣は振り下ろされた。
その瞬間、激しい落雷が発生し、爆発を引き起こした。
地には稲妻が迸っていた。
そこにヘルヴァトスはいない。
「逃げたか。気配もない。」
「ギルフォラーズ。貴様だけでも死んでもらうぞ!」
闇の竜は闘気を纏い、光を打ち消した。
互いの竜の力の差は互角。
「守り神という誇りを捨てたか。ならば生かしてはおけぬ!」
「ならばその守り神として朽ち果てろ!」
闇の竜の口から黒い光線が放たれる!
光の竜は間一髪のところで翼を掠め、態勢を崩しつつ闇の竜を睨む。
「そうか。闇は純粋か。純粋故に悪にも手を貸してしまう。」
光の竜は闇の竜に噛み付き、口から光のブレスを撃つ!
捨て身の攻撃。
闇の竜はひるみ、光の竜は牙が砕けた。
「バカなやつだ。自己犠牲をしてまで我を倒すというのか。だが無意味!闇の前で光は勝てぬ!」
闇の竜は一瞬で爆発的な魔力を増幅し、村の方角を向いた。
「勇者アストラルよ。かならずこの世界を救ってくれ。」
光の竜は守り神の誇りを忘れない。
アストラルは悟った。
それと同時に魔法弾は村へと放たれた。
息ができないほど凄まじい突風が吹き荒れる。
光の竜は村の盾となる。
「勇者よ。闇に負けるな!」
そう言い残し、光の竜は闇に消えていった。
自らの命をも顧みず、人々を守る。
最後まで守り神であり続けた。
そして闇の竜は全てのエネルギーを使い果たし、砂となって崩れ去った。
「これは!4つのオーブ!」
また全部で8つのオーブが揃った。
「これで天空に行ける。」
「バドルフ、勇者の塔に船を出してくれないか?」
「アストラル、すまねぇ。ここに来るときに船はとてつもない損傷をしてな。とてもじゃないが海を渡るとなんかできやしないさ。」
いくらオーブが揃っていても塔に行かない限りは天空へは行けない。
飛行能力の発動は瞬間的なもの。
約2分もすれば消えてなくなってしまう。
「これからどうする?」
「バドルフさんだ!おーい!」
後ろから聞こえた声。
「君はミノタウロス族の子供か。元気にしてたか?」
「もちろん!それでこの人達は・・・もしかして操られたボスを倒してくれた人!」
「あ、そうだったな。」
「そういえばここって木材の産地だろ?船修理してもらおうぜ!」
「ちょっとカリム!」
「いいよ!助けてくれたんだからさ。」
村人達が総出で船の修理に取り掛かった。
「バドルフと村人達は知り合い?」
「知り合いも何もこの世界中を回って物資を届けてるからなぁ。」
「海賊なんでしょ?悪いことするんじゃないの?」
「そりゃ昔は悪党としてその名を馳せていたんだが、ヘルティア王国の財宝を奪おうとしたときにだな・・・。」
「それ悪人すぎだろ!」
「コホンッ。でもそのときに魔物が攻めて来て俺は宝を捨てて応戦した。そんな俺を国王様は許してくれたんだよ。それからというもの、国王様に仕える海賊として足を洗ったのさ。」
「・・・なるほど。」
それから5人はヴォルナ村に滞在した。
ヴォルナ村の近くには広大な森林が広がっているため、木を他の村などと取引して生活をしている。
そのため、木材が豊富で船の修理は進んでいた。
「なんで俺が?もう疲れたー。」
カリムは木材を村から運ぶ役を任されていた。
「カリム!モタモタしないの!」
「よりによって指示する人がアスカだもんなぁ。俺は力じゃないの!メインは素早さなの!」
「俺も手伝うよ。少しずつ運ぶ量を増やしていけば以外と楽に運べるよ。」
その夜、カリムは両腕が筋肉痛になっていた。
しかし、平和な時間は驚くほど速く進み、船の最終調整に取り掛かっていたとき。
「おーい!」
ミノタウロス族の子供が声をかけてきた。
「お兄ちゃん達は世界を救う勇者なんだって?」
「そうさ。いつか絶対にこの世界を平和にしてみせる。」
「これ、弁当作ってきたんだ。」
アストラルは大きい葉に包まれた弁当を受け取った。
「待って。5人分あるから。」
「そんなに作ったの?」
「うん!中身は開けてからのお楽しみだよ!」
そんな会話をした後にバドルフは声を上げた。
「出航だ!」
アストラルはこれから襲い掛かる敵は今までとは違う予感がした。
それでも、勇者は前に踏み出していく。
8月の毎日投稿に向けて螺旋の時間からの脱出ゲームという作品を全力で書いています。
このdark shadowという作品は文章を書く練習のための作品と言っても過言ではないでしょう。
ちなみに今は18話を書いているところです。正直これは遅れていますね。
まだまだ修行中ですが今後もよろしくお願いします。
多分投稿ペース落ちています。