dark shadow 36話 勇者の剣
アストラルは仲間達と別れて勇者の剣を手に入れるべくヘルティア王国から船長の船に乗っていた。
アストラルの目線はヘルティア王国の方角を真っすぐ向いている。
「皆、どうしてこんなときに。」
袋には七つのオーブが入っている。
しかし今は魔王軍が世界中を支配されそうな状態。
かろうじてヘルティア王国は守りきれたが、リーザ村は滅び、他の村もどうなっているのか分からない。
「お頭!前方に渦潮が!」
そのとき、アストラルが隠し持っている宝玉が光り出した。
「そういえばこの宝玉があいつとめぐり合わせてくれたんだっけ。この宝玉には明らかにオーブとは違う特別な力がある。」
アストラルは勇気を出して、渦潮に飛び込んだ!
「あれはやはり夢じゃなかったのか。」
アストラルは海底に沈む崩壊しかけた都市を眼前にそう呟いた。
そしてアストラルは宮殿の中へ入っていった。
そして玉座の間にたどり着く。
「そなたが来ることは分かっておったぞ。」
アストラルには聞いたことがある声だ。
「デミウルゴス様!」
「アストラルよ、オレイカルコスが必要なのだろう?しかし、今は時間がない。とてつもない邪悪な気配が近づいてきている。」
アストラルは驚いた。
「やはり魔王軍が!」
「そうではない。だが今は操られている。魔王が作りし海の巨大イカは食べた者に寄生し、意識をも操ってしまう。」
アストラルには心当たりがある。
巨大なイカ、それを食べたさらに巨大な魚がいたことを。
「アストラル。オレイカルコスを授けよう。これを授かることは世界の運命を託されるというこどだ。心によく刻んでおけ。それをドルミア火山の火口に投げ入れ、勇者の剣を作るのだ。」
アストラルの意識が遠退いていく。
気が付けば船長の船の甲板に倒れていた。
「大丈夫か?アストラル。」
「う、船長?」
「こ、これは!オレイカルコス!手に入れたのか。」
船長は突然テンションが高くなった。
「アトランティスを超絶的に発展させた貴金属オレイカルコス。しかしそれは地球が人間を試すために作られた物質でアトランティスの人々はオレイカルコスを使って発展したが使いすぎて地球は人間を必要な生き物と認識しなくなり、この世界の暗い影と呼ばれる何かを送り込んでアトランティスを海底に沈めてしまった。しかもそいつはへルティア王国まで攻めいった。オレイカルコスは海底に沈んでなくなったと言われていたが間だ残ってたのか。おぉよしよし。」
船長のキャラがおかしい。
「あの、船長?」
「え?あ、」
船長は咳払いした。
「あの、船長さん?ドルミア火山ってどこにあるんですか?」
「ドルミア火山はレクソ大陸とエルナ大陸の間のレイナル川を進むと洞窟がある。そこから山を登ればドルミア火山の火口にたどり着く。ドルミア火山の洞窟前までは送ってやろう。」
「いいんですか?ありがとうございます。」
「何?気にするなアストラルも仲間が心配だろ?」
アストラルは黙った。
アストラルの心には常に仲間の姿を写し出していた。
「早く行きたい。皆の所に。」
アストラルはその思いを胸にしまった。
船はレイナル川をどんどん上っていく。
船員たちはオールを必死で漕いでいる。
アストラルは川の浸食が進んでむき出しになった洞窟を見つけた。
「船長。俺はあの洞窟から火山に向かう。」
「待つんだ。あの洞窟は確かドルミア火山から少し離れてしまう、途中に竜の巣窟があってそこにはこの山脈地帯の雷を操る恐ろしい竜なんだ。雷光のオーブがあればその竜の背に乗っていくこともできるかもしれないのだがな。」
アストラルは雷光のオーブを取り出した。
「なんで持ってるんだ!?」
「闇の竜が落としていった。」
「なるほど!光と闇の反動だな。悪しき闇は光を退け、誤りし。光は闇を救う。雷光のオーブの竜はまだ闇には染まっていないのだろう!」
アストラルは洞窟を見つけた。
「あそこから行く。」
船長の船は洞窟に近づいていく。
アストラルは洞窟の中に向かって跳びだした。
その瞬間、雷光のオーブが淡く光を放つ。
アストラルは盲目の中、わずかなオーブの光を頼りに道を進んでいく。
雷光のオーブの光は奥に進むにつれて強くなっている。
それから1時間程暗闇を彷徨った。
アストラルはひらけた場所に出た。
上には暗い雲が空を覆っているのが見え、周りには岩の壁が閉塞感を醸し出す。
暗い雲の間を稲光が時折ほとばしる。
その稲光に反応するように雷光のオーブが光る。
アストラルの眼前に白く美しい竜が現れた。
「そなたが勇者か。礼を言うぞ!何か願いを言うがいい。」
「一刻も早くドルミア火山に行き、勇者の剣を完成させたいんです!」
「その目、本気のようだな。いいだろう。我が背に乗れ!」
白い竜はアストラルを乗せて飛び上がった。
針のように突き上げる岩山を縫って雷の如く高速でドルミア火山へと近づいていく。
やがて下には湖が見えてきた。
「あれがドルミア火山だ。」
アストラルは湖に向かってオレイカルコスを投げ込んだ!
暗い雲に覆われた空はしだいに黒く染まって夜のような静けさになる。
「な、何が起ころうとしているんだ!?」
ドルミア火山が噴火した。
火の粉が吹き荒れ、湖だったはずの火山の火口が紅く染まり、大地の力を一気に噴き出す!
数多の炎を纏った岩石が降り注ぐ!
「勇者よ。おまえの勇気を見せよ!」
「勇気?」
巨大な火柱の中に光る何かがアストラルの目に映る。
それは勇者の剣。
「あれが!?勇者の剣!」
「急げ!もたついていると消えるぞ!そうしたらまたあの貴金属を取ってこなければならない!」
「でも!火口の中って!」
「それでも勇者か!そんなことで何が守れる!」
白い竜からの鋭い口調を聞くとアストラルも本当のことだと思い知らされる。
「でも、あれが勇者の試練だとしたら死ぬことはないよね?」
アストラルは白い竜の背から跳び上がり、手を伸ばした!
「怖い!でも、ここで止まってたら、あいつらの所には!」
アストラルはその腕で熱を感じた。
「熱い!」
体が全て焦がされる感覚。
そしてその中でも炎のなかにある何かを握る。
火柱を貫通し、アストラルはドルミア火山の火口の淵に着地。
「はぁ、はぁ、やった・・・のか!」
アストラルの腕より先、手には勇者の剣が握られている。
金色に輝き、柄には雷鳥をかたどった文様、そして刃に刻まれた神聖文字、その全てに神々しささえ感じる。
「よくやったぞ!勇者よ。早く背に乗れ!ヴォルナ村にいくぞ!」
「まだ戦っているのか?」
「闇の竜が近づいている!」