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99+今日は何の日?


「父さん父さん! はいっ、プレゼントー!!」


 ゲームをやる僕と何も言わないけどテレビを見せて欲しい父さんの居る居間に、けたたましくやって来たのは勿論ユウヤ。今日は父さんが居ます、何でだろうアサキです。


「ん、何?」


「今日父の日だから花買ってきたんだよ!」


 此の雨の日にご苦労なことだ。そうか、今日は父の日だったのか……父の日? Father? 六月の第三日曜日……やべ、何をする気もない。

 そう思って雨降り空を眺めれば、僕はユウヤに目をやる。白い花か、ユウヤにしてはセンスあ……


「「……」」


「どうしたんだい、二人共?」


 ユウヤが持っている其れって。


「ユウヤ」


「何、アサ君」


「お前は父さんに死んで欲しいのか」


 キクの花だぞ、真っ白な。



「……Oh My ガッ!!」



 何処で止めてんだよ。


「と、父さんごめん! キクかよ!! 其れキクかよ!! 俺てっきりキクに似た何かかと思ったんだよ!!」


「キクじゃなくてもキクに似た何かも嫌だろ」


「別に父さんに死んで欲しいとかのアレじゃないから!!!!」


 普段知識人じゃないユウヤでも、白いキクの花の意味くらい知っているらしい。死人に送る花だぞお前。


「こんな花捨ててやるー!!」


「――良いよ、ユウヤ」


 自暴自棄に花を振りかぶるユウヤを止めて、父さんは笑顔で花を受け取った。ユウヤは唖然としてるけど、父さんは非常に嬉しそうだ。


「ユウヤが僕の為に買ってきてくれたなら、キクだった構いませんよ」


「でもー……」


「ありがとう、ユウヤ」


「……うん!」


 平和だ。

 うちの父親は本当に出来た人間だと思うよ、何処から僕やユウヤが生まれたのか検討もつかない、遺伝子は全部マヒルに行ったんだな。


「で、アサ君父の日何かしないの?」


「雨の日に何をしろと」


「雨じゃあアサキは動いてくれませんよね」


 よく分かっていらっしゃる、雨の日に何かしろって人がおかしいんだ。Rainly dayだぞ? aが2つも入るんだぞ? ……まぁどうでも良いことはさておき、とりあえず本気で何も考えていませんが何か。


「アサ君ひどーい」


「勝手言ってろ、僕は母の日だって何もしなかった」


「奥さん可哀相に……」


 うちでそういうイベントが好きなのは両親とユウヤだけだからな。マヒルが居ない今、結構僕だけ仲間外れみたくなるがどういう了見だこら。



「「……」」



 畜生野郎共無言になりやがった。何かするっていうまで動かないぞこいつ等。何かする? 何すればいいんだ? 僕はユウヤと違って大概のことが出来ないってのにどうすべきなのさ。

 やっているゲームの内容が頭に入って来なくなるくらい背後から視線を感じる、見るなよこの野郎。



「「……」」



 見てる見てる見てる見てる。見ないで下さい。拝観料取るぞ。拝観料? 拝まれてはないよな、じゃあ何料?



「「……」」


「……分かったよ、何、何かすればいいのさ」


 負けたよもう。


「よっしゃ! アサ君の負け~」


「何に負けたのかもはや分からないよ」


 振り返って叫べば嬉しそうな二人に御対面。もう、ゲームなんてやってらんないからいいっての……。電源を切ればリモコンを父さんに渡し、ユウヤが爽やかに笑うのを目に止める。



「アサ君」


「何」



「今日の昼食一緒に作ろっ!!」

「断る」


 ばっさり。


「何でよー!!」


「僕が出来ないの知ってるだろうが」


「前に自分から作ってくれたじゃん! えと、クリスマス辺りに!!」


 嗚呼、懐かしい思い出。けどあれはクリスマスの勢いでやっただけであって、あれから凄い勢いで料理の腕が下がったから(※自覚有)やりたくないんだよ。


「大丈夫だって! 俺が居るんだからさぁ」


「でもさ」


「美味しくなくたっていいんだよ? 僕はアサキの料理が食べたいな」


 ……逃れられない台詞を吐きやがる!! しかも美味しくなくていいって何かムカつくな。

 僕は仕方なく、もう本当に仕方なく立ち上がって、


「失敗したら知らないから」


 とだけ言ったら、嬉しそうにされた。

 ……本気で昼飯抜きでも知らないぞ。


















「ただいま~……え、誰か亡くなったのかしら!?」


 深夜近くに帰宅した母さんが、机上の花瓶のキクを見てそう言ったのは誰も知る由もなく。




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