98+必勝! 体育祭!/おまけ
アサキです、体育祭疲れた。
なのに未だ帰れない。何でかって? ――カトウに呼び出されたからに決まってるじゃないか。それなのに此の人何も話さないで、ええと、とかあのー、とか接続詞のつもりな言葉ばかりを口走っている。正直早くして欲しいんだけど。
「だからねっ、そのー……」
「……」
何時まで続く、この吃り具合。
「あ、先にこれ」
「先にって……結局話は何処に――あ、此れ僕の……」
相変わらずカトウは話の段取りのない奴だったが、その手に握られているのは赤いハチマキだった。番号は23番、……僕のじゃないか。
「昼に拾ったのよ! それから返しそびれて、嗚呼もう遅れて悪かったわね!!」
「別に不平不満は漏らしてないんだけど……。でも、何で僕の出席番号知ってるのさ」
「それは……モモから聞いたからに決まってるじゃない……」
何故か自信無さげに言っているが、僕が気にする訳もなく。え? 面倒だし?
「とりあえずありがとう。で、本題はこれ以外に何かあるの?」
「え? あ、ええ、うん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
そう言ったカトウは今度こそ話すらしく、心意気を整えてからこちらを見た。
「あんた、高校とかもう決まってる……?」
「……は?」
――真面目な話来た!!
「は? ――じゃないわよ! 私は本気なの! ……もう夏になるってのに進路とか決まってなくて、先生には私なら良いところ狙えるって言われたのに決まらなくて……」
どうやら本当に本気な様だ。僕は不安そうにつらつらと話すカトウをジッと見ながらそう思った。
「やりたいことがないとか、そういうんじゃないのよ!! でも、やっぱ色々あるじゃない!? 私優柔不断だから決められないし――」
「カトウ、君の将来の夢って何なの?」
「え――えと、私は、先生、かな」
「何の」
「学校の」
「どの」
「特に決めてないわよ! 何よその淡々とした物言いは!!」
「科目は」
「科学! というか理数科! 好きな科目其れと体育しかないの!!」
理数系の女子って珍しい。
変わってるなぁ……。
「……今、変わってるとか思ったでしょ」
さーせん。
「でも、でもでも、高校からそういうこと考えるべきなのか分からなくて、私そういうの考えるの苦手だし……」
「未だ良いんじゃないの」
このままくどくどくどくど根暗トークされても何なので、簡潔に意見を言うことにした。
「高校から理数科行かなくても、大学からそういう方向に行けば充分。詳しいことよく分からないけど、女の子って高校生活エンジョイしたいだろ」
「……」
「第一夏休みって時間があるんだから、文化祭とか見に行って決めたら? 僕はそうするつもりだけど」
――反応がない、只の屍のよ――
「凄いわね」
――うだと思ったけど生きていた。
「私の周りってろくなこと言ってくれる人が居なくってね。アンタに聞いて良かったかも」
カトウはあっけらかんと言ってのければ、本当に清々しそうに帰りましょ! と言った。誰の所為だと……まぁいいや。
「また今度、話聞いて貰ってもいい……?」
「……気が向いたら」
その後自宅でユウヤに質問攻めを喰らったけど、鳩尾に一発入れたら黙った。
何なんだよ一体。