96+必勝! 体育祭!/中
「疲れたわ……」
「リョウちゃん200m走一番だったね!」
モモが言ってくれた様に、午後初っ端の競技は200m走でした。一番取った……! ちょっと嬉しい! けどキクカワ先生に凄く褒められたのは何だったのかしら……?
「――あれ」
「ん? どうかしたの?」
「いや、落とし物発見」
クラスの場所に戻る際に見つけたのは真っ赤なハチマキ。体育祭とかよく居るのよね、ハチマキなくす奴とか。
私はそれを拾えば番号を見て、
「モモ、あんたのクラスのよ、3123? 二十三番……って誰だか分かる?」
「え? あ、本当だ。後で届けと――ん? いや、リョウちゃんが届けて?」
と言ったのだけど。モモは其れを受け取ろうと手を伸ばす。が、何かに気付くとすぐに手を引っ込めて笑った。
「私、次出るから行くね?」
「え、ちょ、モモ!?」
――行っちゃった……。
んー? 3123……って、……あれ、まさか――?
「ユウヤ、大丈夫ですか?」
「ふふふふふ平気だよ~」
ふは多いけど平気だよ。委員会の仕事をせわしなくしていたはずなのに、気付いたら保健室に居ました。そしてアスカも居ました、クーラーガンガンな保健室でサボるだなんて羨ましいぞ!
「頑張り過ぎらしいですよ? 軽い熱中症に貧血だそうです」
「うわ、俺にしては重症。でもそろそろ戻らないと……」
そう、俺は戻らねばならないのさ。何故なら俺にはまだ個人種目で出番があるから。抜けたら負けちゃうしね、アスカのカバーもするって言ったのに倒れてちゃほんとに世話ないよ。
ベッドから起き上がろとする、けど、アスカが起こさせてくれない。
「まだ駄目ですよ」
「えー、もう大丈夫だよー」
「駄目です、熱中症を甘くみないで下さい」
顔真っ赤ですよ? と苦笑してアスカが言うものだから、自分は青組なのにな、とか下らないことを考えてしまった。
その時、廊下に足音が聞こえる。先生かな?
――ガラッ
「おい死人」
「え」
違った、いきなり入ってきて死人呼ばわりする保健の先生は居ないはずだもの。
勿論我が弟、アサキでした。
「アサくーん! お兄ちゃんのお見舞いかい!? 嬉しいよ!」
「お前が保健室だって知らない奴に聞いたから涼みに来た」
「ちくしょ、目的は其処かよ!!」
暑いからって!! 暑いからって人を無下にしちゃいけないよ!!
「で、二割本気だけど冗談はさておき」
本気なんじゃねぇか。
「何してんの?」
「ちょ、何不思議気に首傾げてるの!! 倒れたくらい聞いたでしょ!? 訝しげに聞くな馬鹿!!」
起き上がってツッコンだら、頭がクラクラした。ふあー。また寝転がると、聞こえるのはアスカの笑い声。
「だから、まだ駄目って言ってるじゃないですか」
「うー……」
「アサキ君も、悪ふざけはこの辺にして」
「へいへい」
どうやら悪ふざけだったらしい。まぁ、アサ君はツッコミだもんね、たまにはボケたいんだよね、でもせめて健康な時にお願いします。
「午後の種目、ユウヤのとこは変えたらしいよ」
「あ、そうなの?」
「全員リレーまで来なくていいって」
「最後の種目じゃん!!」
最後まで出れないの俺!? 残念……。
「リレーは出ろってアヤメ先生が言ってた」
「うん、分かったー。……って、アサ君は何か種目なかったっけ?」
平然とこの場に留まるアサ君だけど……?
「ユキとカイトに任せてきた、二人んとこ行ってそれから此処まで走って来て疲れたから」
「この軟弱男!!」
真面目体力無いなアサキは。
でもまぁ、体力ないのは仕方ないにしても、今さらりと嬉しいことを言ってくれたから良いや。本人は気付いてないみたいだけど。
「……」
「ん、アサ君どうしたの?」
一段落ついたかと思ったら、アサキがキョロキョロし始めた。何か探してるのかな。
「ハチマキ無くした」
「「……」」
無愛想に言うけど、そういうことらしい。走ってきたから落としたんじゃないの?
「……ま、良いや」
基本諦めが早いアサ君は凄まじい勢いで即座に諦めやがったけど、立ち上がって保健室を出ようとしてるところを見れば、恐らく探しに行くのだろうと分かった。
「じゃ、そのまま動くなよ馬鹿ユウヤ」
「分かったよー」
仕事は僕がやるから、と最後に付け足せば、一体何のことだか分からないのですが何ですか。
「委員会じゃないですか?」
黙っていたアスカが呟けば、それが解だと気付いてつい相槌を。
さて、リレーまではあと数時間ある。それまで体力温存といきますかー。




