9+一味沢山。
「何を言っているのよ貴方!」
「何をだと? 俺は俺の感じた事を言っているだけだ」
「何よ其れ! 貴方はそんなだから甘いのよ!」
「五月蝿いな……甘い事の何が悪いってんだ!!」
「悪いに決まってるじゃない!! そんなに甘いから彼だって居なくなってしまったのよ!! 私の彼を返して!!!!」
「あいつが消えたのは俺の所為じゃない! 君の方からだってあいつが居なくなったじゃないか!!」
「えぇそうよ、私の愛しい彼は居なくなってしまった、これから……これから私は何を頼りに此処に来ればいいと言うの!?」
「――ねぇ、何の話してんの?」
「「カレーの話」」
こんにちは、馬鹿の話を聞くのも疲れますアサキです。今昼飯をユウヤとカイトと食べに食堂に居ます。食べているのは勿論カレー。
「だってカイト君ったら甘口なんだよ? お子ちゃま!」
「何をぅ! ユウヤは辛口なんて舌壊れそうなもんよく食えるよな!」
という事らしい。
「で、彼とかあいつとか言ってたのは?」
「「じゃがいもさん」」
二人揃ってじゃがいもにさんを付けるのは大丈夫なのだろうか。僕の心配を余所に二人は悲しそうに自分達のカレーを見る。
「食堂のおばさま方……煮込み過ぎてじゃがいもさん溶かしてやんの」
「俺のじゃがいもさんカムバック!」
「良いじゃん、じゃがいもくらい……」
はぁ……とため息をついてカレーにぱくつく僕を横目にいじけている二人は本当にいじいじとカレーを食べている。早くしないと次の授業遅れるんだけど、僕も道連れ的に。
「じゃがさーん……うま」
「じゃが様ー……うま」
美味いなら良いじゃないか、じゃがいも居なくても美味いなら良いじゃない。
「うまうま」
「うまうまうま」
「……うまうまうまうま」
「……うまうまうまうまうま」
「張り合うな五月蝿いから」
どっちが美味かろうがどっちでも良いから。うまうま言ってると僕がアニメ方向に違う事考え出すから止めて。
「そういえばアサ君って甘口? 辛口?」
「勿論甘口だよな!」
「何おぅ! 双子なんだから辛口に決まってるさっ!」
「中辛」
「「……邪道」」
「中辛を馬鹿にすんな」
こんな奴等と食う飯は、何だかんだ楽しいです。