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83+他に取り残された人。

前話で取り残された、もう2人。


「……」


「……」


「……」


「……」


 ――会話がない! せ、せっかくあの馬鹿三人衆――酷いとか言わない!――が無駄な気を遣ってくれたのに……。

 こんにちは、一組に取り残されましたリョウコです!!!!


「……」


 ちくしょー! 会話が続かないどころか会話に入れないわよ! ああ、ああ、ヒコクアサキってば座ったままボーッと外見ちゃって! 私が居るの分かってるんだからせめてこっち見なさいよ!! なんか侘しいじゃない! おんなじ教室に居るのにこーんな距離開いちゃってさ!


「ねぇ」


 こんな機会もう二度とないかもしれないのよ!? 何時も何時も取り巻かれちゃって私が話し掛けることなんて出来ないわよ!!


「ねぇってば、カートーウー」


 てかそんなことより私は話しかけるのだなんて無理なんですけどね! ハズカシイもの!! ええそうよ! 無理よ! 笑えばいいじゃない!! 笑い転げててお腹がよじれちゃえばい――


「カトウリョウコー」


「ふぁひゃい!!」


「……そんなとこ居ないで、こっち来れば?」


 い、何時の間にかヒコクアサキがこっちを見てるじゃない……! 私が一人で悶々としてるの見られた!? うわわわもう帰っていいかしら!!!!(※テンパり過ぎて読みにくい文章でお送りしています)


 と言いながらも、私は何とか冷静を装ってヒコクアサキの席に近付いた。そりゃ窓際のあいつの席と入口じゃ、距離あり過ぎるものね。


「……あ!」


 そうだった! ノートを返しに来たんだったわ! これをネタに会話をするのよリョウコ!


「あの、これ、ありがとうね!」


「ああ、別に構わないけど」


「凄く分かりやすかったから、テスト勉強にも使わせて貰っちゃった!」


「そ。お役に立てたならコイツも本望じゃないかな」


「は、ははっ!」


「……」


「……」


 ――会話終了。

 って早いわよ! まだものの三十秒よ!?

 ……今始めて、ヒコクユウヤ、ロクジョーカイリ、サキネユキの凄さを知った気がするわ。一対一じゃあ無理よ! ……でも、駄目よリョウコ、ここでめげたら試合終了だわ!!(※某漫画引用)


「ヒコクアサキ!」


「何」


「あ、えと、その、あーと」


「……」


「……何でもない」


「そ」


 ――もう泣いていいかしら。






 そんな状態のまま、十五分は経ってしまった。

 ――私のばーか!!!! てか馬鹿三人衆! 早く帰って来なさいよ! 二人っきりは……嬉しいけど――もう無理だから!!



「ねぇ」



 と、あっちから声がかかった。


「な、何!?」


「何で何時もそんなに慌ててんの?」


「……」


「……? ……おーい」


 ――あんたの所為よ!!!!

 って言ってやりたいんだけど、言ったら駄目だから言わない。そりゃ言えないでしょ!?

 不思議そうに私を見るヒコクアサキに気を取られつつも、


「私はあんたみたいにのんびり生きてないからよ!」


 とか言っておいた。――軽く流されたけど。特に興味ないみたいね、もう……。


「じゃあ別にもうひとつ」


「?」




「カトウはさ、どういう時に楽しい?」




 少しびっくりした。そ、そんな質問が来るとは……! どういう時?


「……んー、友達と話してる時とか、美味しいもの食べた時とか――好きな人のことを、考えている時……とか……」


 軽く暴露してしまった。まぁ、うん、気付きゃしないわよ……多分!!


「……」


 聞いといて反応なし!? 何なのよ此の人!!


「最近さ、」


 と思ったら返って来た返事。タイミング考えて欲しいわ。


「最近、楽しいって思うことが増えたんだよね」


「増えた、って、あんた楽しい時あったの?」


「そりゃあるよ、僕だって悲しくも人間なんだから」


 こいつが、楽しい――? ……ごめん、笑いそうになったわ。


「今、君が何考えてるか分かるんだけど」


「ごめん、忘れて」


「……良いんだけどさ。……忘れてた感覚な様な気がして、少し驚いた」


「忘れてた、ねぇ。じゃあ私も聞くけど、ヒコクアサキ、アンタってどうしてそう大人びてるのよ」


「何処が」


「全体的に。アンタがそんなだから話してると私が劣等感に苛まれる」


「んなこと言ったらユウヤとカイトどうすんの」


「言えてるわね」


 何時の間にか普通に話が弾んでいた。他愛のない会話だけど、少しだけ嬉しかったりした私。……だけどさっきの質問だけが、頭の隅でどうも引っ掛かってる。



「ね、私と話してるの楽しい?」


「そこそこ」


「正直過ぎるわよ、仮にも女の子と話してるんだからお世辞でも楽しいって言いなさい」


「無理」


「……まぁ良いわ。でね、楽しい時は――ちゃんと笑いなさいよ」


 あ、キョトンとしやがったわ。ちゃんと聞きなさいよ、話してるんだから。


「人間なんでしょ? だったら楽しい時笑うの! あんたいっつも仏頂面なんだから!! 私を追いかけて来てくれてサボろうって言った時のあの笑顔、何処行ったの?」


 あの時の清々しい笑顔と言ったら何とも言えなかった。悪戯っ子の悪戯成功を思わせる笑顔、最近全く見ていない。

 ――何が邪魔してるのかしらね。


「あー……笑顔、ね。ま、……何時か」


「適当ね!?」


 相変わらず。



「笑顔、か……」



 適当なのに、もう一度呟いたから、少しは頭に残してくれてるんだなぁ、と嬉しかった。


 何時か、何時でも恥ずかしくなく、コイツの隣に居れる日が来るのかな――って!! 私何考えてるのよ!! はずかしっ!! もう恥ずかしくて死ぬんですけど!!!!


「何一人で騒いでる訳?」


「な、何でもないわよ!!」


 聞かないで、お願い……!!



 ……ま、こうやって馬鹿やってられる内はいっかな、なんて思う私だった。




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