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82+不審者尋ねて三千里。


 るんたったーるんたったー。今日はテストだったぜいやっほー! 白紙に近い解答用紙を何枚も提出しましたユウヤです! ――絶対怒られる。

 つか、五科目を一日だからありえないんだよー。無理に決まってるじゃーん。


「あ、ユウヤユウヤ」


「ん?」


 独り淋しく考えていたら、廊下から声をかけられた。……誰だっけ。


「ライテだよ」


「ああ。あれ、今日は一人なんだね」


「僕が何時だってコウスケと一緒に居ると思うなよ」


「ふーん。……で、何だい?」


「そうだった、何かさっき校内に不審者が居るって聞いたんだよ」


 何その面白い情報。


「ユウヤ好きそうかなって」


「大好き」


 ナイスだよ、もう探しに行くしかないでしょ。

 俺はライテ君家のそー君と別れてその不審者を探し始めた。







「不審者!」


「誰がだ」


 いっちー先生でした。


「せんせ、せんせ、不審者が居るって本当?」


「不審者ァ? んなのどこに居やがるんだよ」


 あれ、先生の耳には入ってないんだね。俺はそー君に聞いた話を何時までもかったるそうないっちー先生――クールなんておこがましい――に言えば、やはり先生はかったるそうにしてため息をついた。


「まーた面倒な……」


「うわ、先生本音」


「ユウヤ、先生命令だ、そいつ捕まえて来い」


 え、俺? 大歓迎だからいいんだけど生徒に頼んでいいんスか。


「じゃ」


 いいのかなぁ……――って行っちゃったー。

 ……仕方ないなぁ、探そう。






「不審者発見!」


「ちょ! 五月蝿いヒコクユウヤ!!」


 リョウちゃんが居ます。分かってますよ、でも真面目に不審者っぽくて。


「……何してるの、一組の教室前で」


「見れば分かるでしょ!! 入るに入れないでいるのよ!!」


 覗いてるだけって滅茶苦茶不審者だよリョウちゃん。ほわい?


「て、てテスト勉強したかったから取り忘れたノートをモモに借りようとしたのよ」


「で?」


「も、モモも取ってなくて、そしたらヒコクアサキが貸してくれて……!」


「あらー」


「だから返す訳よ!」


「あはーん」


「――あんたちゃんと聞きなさいよ」


 ふぁい。

 聞いてないことがバレました。俺はつられて不審気味に教室を覗いてみた。


「……アサ君にカイト君にユキちゃんが居るね」


「余計な二人が居て返しにくいのよ!!」


 そりゃ居るでしょうよ、取り巻きの如く。二人は基本暇人なんだから。


「別に居たっていいじゃんかー」


「ばっ、馬鹿じゃないの!? あの二人は気付いてるんでしょ!? わ、私が――」


「ああうん気付いてるよリョウちゃんが好きなこと」


「言うなっての!!!!」


 まどろっこしいのは嫌いなんさ!

 しかしまぁ……ふむ、仕方ないなぁ。ここはお兄ちゃんが人肌脱いであげようではないかー!



「――カイトくーん、ユキちゃーん!!」


「はぁ!?」


 ――思いっきり叫びました。リョウちゃんは何かもう悲鳴に近い叫びをあげましたがまぁ良いよね。



「おやユウヤ、何時から其処に居たんだい?」


「しかもリョウコまで一緒じゃねェかよ、何か用か?」


「うわ、バレた! ヒコクユウヤあんたの所為でバレたわよ!!」


「……」


 うん、無反応な人が誰だか言わんとも分かるぞ☆ 俺は爽やかに笑いながらリョウちゃんを無視して、



「校内に不審者が現れた! いっちー先生よりそやつを捕まえろというミッションが下されたのだ! 我と共に行こうぞ!!!!」



 と叫んでみた。



「「YES BOSS!!!!」」


「馬鹿だろお前等」


 良いノリだよね二人共。そして相変わらず冷めてるアサ君のツッコミを余所にカイト君とユキちゃんはこっちに来てくれるみたいだ。


「じゃあアサキ、行ってくるよ」


「学校の平和は俺が守ーる!」


 そんなことを言ってアサ君への挨拶をすれば――あからさまにカイト君はおかしいけど――廊下にやってきた二人。


「じゃ、リョウちゃん行ってらっしゃい」


「へっ!?」


「ほら、俺達が不審者探しに行ってる間アサ君の暇潰しに付き合ってあげてよ」


「え、ちょ」


「ふむ、そういうことなら言ってくれれば良いのに。さぁ行こうかユウヤ、カイリ!」


「おー!!」


「ち、ちょっと待ちなさいよー!!!!」


 どういう訳で自分達を呼んだのかが分かった様子の二人は俺より先に歩き出しました。……只不審者騒動が楽しみっていうのもあるんだろうね、ははっ。







「不審者ー!!」


「叫んでも出て来ないと思うんだがね!」


 俺以上にやる気なカイト君。なんてやる気なんだろう。本当に騒ぎが大好きなんだからな此の人は。


「情報が無いのなら聞いて回ろうじゃないか」


「其れが良いね、さっすがユキちゃん!」


 という訳で、聞いてみよう。





 一人目、キクカワ先生。


「んん? 不審者かぁ、生憎知らないなぁ、というかヒコク兄とロクジョー、貴様達はこんなところで油を売ってないで勉強を――」


「「ありがとうございましたー!!」」



 二人目、モモちゃん。


「不審者? あ、見た見た、何でも怖そうな人らしいよ? 遊ぶのも程々にね、三人共」


「ユウヤとカイリの枠に私も入れられてしまったね、はっはっは」


 入るよ普通に。

 三人目と四人目、タッ君にセイタ君。


「不審者? 職員室にでも行きゃ会えんじゃないか? んなことよりハジメ知らない?」


「ハジメ君ならさっき廊下に居たよー」


「サンキュー。……って何処の廊下だ――速っ!! あいつ等の去るスピード尋常じゃないな!!」


 セイタ君が騒いでるけど知りません。俺達はいそいそと職員室に行くことにしました。

 ――そんな途中の廊下にて。


「――!? ユウヤ、カイリ、あの人ではないか?」


 先陣を切っていたユキちゃんが曲がり角で立ち止まった。覗いてみればあら不思議、見覚えのない大人が一人キョロキョロと廊下をさ迷っています。


「あれで間違いないな! キョロキョロしてるのが実に挙動不審だ!!」


「確保だ!」


「判断が早過ぎではないかな?」


 此の三人だとツッコミが居ないからナンセンスだと思ってたけどそうでも無いや。ユキちゃんがちゃんと意見を入れてくれるからね!

 引っ込めていた首をまた出して、目標の確認をする。……ふむ、大学生とみた、マヒル兄と同い年くらいかな? 髪の色が銀髪……不良か? 後ろ姿では其れしか解析が出来なかった俺。



「何やってるんです?」



 しかも解析してたら、後ろから声をかけられてしまった。


「アヤメ先生、気配がなかったです」


「ははっ、ユウヤとカイリ君は分かるけど、其処にユキ君が居るなんて珍しいね」


 ぬっ、と背後現れたのはアヤメ先生だった。よーし、こうなったらアヤメ先生に不審者の報告だ!! でも気配がなかったことをスルーした先生って何なんだろう。


「不審者? ……確かに見慣れない人だね」


「あーや先生と同じ銀髪です! 不良ですぜ!」


「うん? 其れは僕が不良って言いたいのかなユウヤ?」


 いや、あーや先生はマフィアでしょ。


「英語の成績は1が良いのか――」


「ごめんなさい」


「素直が一番だね」


 先生こええ。ある意味いっちー先生よりこええ。



「とにかく、先生が行って来るよ」


 あーや先生は特有のスマイルを浮かべれば、そっちへと歩き出した。待ってろと言われた訳じゃあないので普通についていきます。



「あの、来賓の方でしょ――」



 しかし流石に近場には行きたくないので、丸見えだけど廊下の隅で観察することにしました。あーや先生は其の人に声をかけ――て固まってしまった。


「――あ」


「ユウヤ、どうかしたか?」


「何かあったのかい?」


 二人が言うのはさておき、あーや先生に振り向いたその人の顔に――見覚えがあり過ぎて。



「――せっちー!!」



 ――思いきり叫んでおまけに指差し彼の人の名を呼んだ。


「ん? おお、ユウヤじゃーん! お前何でこんな――嗚呼、お前ここが学校な訳か」


 せっちーことセツさんは、俺に気付いて笑顔で手を挙げた。気付かなかったぞ!!


「そうだぞ! ――じゃなくて、こんな学校で何やってんのさ! いい歳して不審者騒動起こすな! そして髪の色が変わってるぞー!!」


「まぁそう一気に言うなって。髪は元がこの色なんだよ! んで不審者になりに来た訳じゃなくて――コイツ探しに来ただーけ」


 せっちーはそう言って、俺と自分の間に居る人――すなわち、あーや先生を指差した。

 せっちーがあーや先生を?


「何ともミスマッチ」


「ですよね~」


「ちょ、こら! お前が否定すんなよシロ!!」


 機能停止気味だったあーや先生は再びのんびりと機能し始めた。相変わらずのんびりだ。


「え、せっちーと先生って知り合いなの?」


「知り合いっつーか……こいつ俺の兄貴だもん」




「「「……え?」」」




 今までかやの外だったカイト君とユキちゃんと見事にハモった。……あーや先生とせっちーが……? この万年のんびりたまに鬼畜なあーや先生とどーみても馬鹿まっしぐらなヘタレ不良が兄弟?



「「「ありえない」」」



「ですよね~」


「だからシロっ! お前が言うなよ!!」


 始めて会った人にだってありえないと言わせるせっちーとあーや先生の兄弟関係。……そうだ!


「俺とアサ君が双子なのとどっちが驚きかな!」


「それは――」


「「「お前だよ」」」


「畜生! 流石に勝てないか!!」


 どんな兄弟にだったら俺達は勝てるんだ!(※勝てません)



「まぁ……不審者と言うものですから、セツで良かったよ。とりあえず応接室に居てくれるかな?」


「おーう」


 案内は宜しくね、とあーや先生は言って職員室に入っていってしまった。うーむ、意外な話だったなぁ。



「ね、せっちー」


「何だ?」


「アヤメセツって言うの?」


「ああ。言わなかったか?」


「うん」


 ……今度からちゃんと名前を聞こう。






「俺達、やっぱ忘れられてる部類だよな」


「……仕方ないんじゃないかな?」


 其処に居たはずなのに、出番があまりなかった方々の呟き――俺には聞こえてないんだけど。




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