76+爽やかですが色々遇って。
こんにちは、引き続きマヒルです。過疎な地域にひっそりと君臨する商店街に来させられているんだが。
「あらー!! もしかしてマヒルちゃん!?」
「あー、おばさんお久しぶりー」
「あらあらまぁまぁ!! マヒルちゃんったらすっかり格好良くなっちゃって~!!」
「え、マヒルちゃんなの!? あらホント!!」
――とまぁこんな具合に、おば様方に絡まれています。
「前会った時なんてこ~んなだったじゃないかしら!」
「やぁねぇアンタ! それじゃあ見えないじゃないの!!」
俺のサイズをミジンコにして騒ぐおば様方。こんな過疎地の商店街だから人が変わることもなく、確かに見知ったおば様達ではあるんだが……元気だなぁこの人達……。
「マヒルちゃんったらあんまり来てくれないからおばさん達淋しかったわよ~。オトワちゃんと二人でお買い物かしら?」
「お母さんが居る」
隣のオトワがボソリと答えれば、おば様方は「オトワちゃんは可愛いわね~!」と騒ぐばかり。何だこの商店街、うちの近くの商店街とおんなじだな。
「マヒルちゃんとオトワちゃんが一緒ってなると、ユウリちゃんが弟ちゃん達と遊んでるのかしら?」
「「いや、あれは遊ばれているの間違いです」」
思わずハモった。ユウヤはともかくアサキは完璧に遊ばれ――いや、弄ばれている。
『よっしアサキユウヤ! 今日のノルマはツチノコだ!! 捕まえるまで帰れねぇと思えよ!!』
『アイサー隊長!』
『一生帰れねーよ』
――嗚呼、大丈夫かなアサキ。体育会系二人に振り回されてそうで怖ぇ。
ユウヤも今日は普段着で行ったからな……騒いでそうだ。(普段着=“普通の”男物の服)
「マヒルくーん、オトー、待たせてごっめんねー!!」
其処へ走って来たのが我等が隊長、ハザラさん。おば様方も気付いた様で「こんにちは、ハザラちゃん!」などと声をかける。……三十五歳でもちゃん付けされてんだなハザラさん。
「ハザラちゃんったら良いわねぇ、こーんなイイ男とひとつ屋根の下だな・ん・て!」
「うふふっ、おばさん何言ってるのよ! 私は夫一筋なんだから~。あ、マヒル君フリーですよ」
「おいこら個人情報」
「あらっ、こんなイイ男がフリーだなんて! 世も末ね!!」
俺が彼女居ないだけで世も末なのか?
「マヒルお兄……自分の格好良さに気付いてないから……謙虚だから……」
「あらあらあら! 謙虚だなんてオクテねっ!!」
「あのさ、人の目の前で人を置いて話をするのやめよ? な?」
もう先帰っていいですか。こんな時、冷静に本当にアサキとユウヤが居てくれたらとか思う俺。……やはりブラコンなのだろうか。
『隊長! 先に見えるあ奴は何でしょうか!!』
『おお!!あれは野生の兎だ!』
『兎くらい店で見れるし』
『追うぞ隊員共!!』
『アイアイサー!』
『え、ちょ、置いてかないでよ。迷子になるじゃん、……ねぇ!!』
何してるかなぁあいつ等……。
とまぁ、そんなおば様方と別れ帰路を行く俺達。ぼちぼち夕方、という感じな時間ですな。
「マヒル君! 案の定モテモテだったね!」
「ははは……」
確かにまぁ、おば様方からはな。
「ちらほら居た数少ない女の子達も……マヒルお兄の事見てた」
「は? んな訳あるかよばーか」
冗談がましく笑って言えば、オトワもハザラさんも笑ってくれた。
「でもやっぱ皆でお買い物は楽しいね! 明日は皆でピクニックにでも行こうか!」
「そうだな、ピクニックくらいなら双子の片方も来るだろうな」
「いざとなったら俺が頼む。アサキお兄には」
そしてまたも皆で大爆笑、大爆笑は主にハザラさんだが。
明後日にはまたつまらねぇ学生生活な訳だし? 少しくらいのんびりしましょう、ってな。
「たっだいまー!」
「お帰りはーちゃん達! しっかし、其れどころじゃなくってね」
家に着いたら母さんが満面の笑みだった。そして帰って来ていたらしいユウヤとユウリちゃんの姿もあったんだけど――……あれ、アサキは?
「ん、どうしたんだい義姉ちゃん」
「えっとね、
――アサキが帰って来ないのよね?」
そんな事実に扱く慌てている中学生達と、笑顔な母さんを見て、慌てればいいのか笑えばいいのか分からなくなった。