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75+血の繋がりは否めない。


「ゆうたんあーたん行くぞ!!」


「「おー」」


 やる気なく言ったのは俺の弟達です。はい、マヒルです。


「こらこらやる気がねーぞ! そいじゃあ行ってきやすまーたん」


「“たん”を付けんな」


「じゃあマヒル兄貴行ってくるよ」


「おー」


 そしてその弟達を引き連れて何処かに行こうとしてるのは、昨日やって来た父さんの実家に住む俺達の従妹、ユウリ。ユウヤよりも勇ましく、アサキよりも元気な従妹だ。……本当に元気だな。


「何処行くんだ?」


「裏の山に行って来るんだ、夜には帰るよ」


「そ。まぁ気をつけろや。アサキもユウヤもなー」


「ほーい」


「行きたくない」


 片方否定してるが俺にゃ聞こえない。すまんアサキ、頑張れ。







「んー……ねみー……」


「あらまー君、一緒に行かなかったの?」


「だぁからまー君言うなっつーの。俺今年で成人なんだぜ? 行く訳ねぇだろ」


 田舎過ぎるのかギーギー鳴る床を通り、玄関から戻った俺。朝っぱらから渋茶を啜る母さんの隣に座りひとつ欠伸をした。


「あら、マヒルったらもう成人? 早いわね~……」


「ま、実感は無ぇけど」


 眠い。気候が幾分暖かいし、やる気起きねーよー。ごろーん、と身を伸ばしてまたひとつ欠伸。



「――マッヒルくーん、朝っぱらから寝てちゃあ夜寝れませんよー!!!!」


 お。

 障子をパタン、というかスパーン!! と開け放ってやって来た方に名差しされた。


「あ、おはよーござまー」


「お休みスタイルで何を言うかなマヒル君!」


「眠いんスもん」


「相変わらず元気ねー、はーちゃんは」


「あ、義姉ちゃんもおはよっ!!」


 この姉ちゃんはハザラさん。こーんな元気なのに実は父さんの妹って奴で俺等にとっての叔母さんに当たる訳だ。……何処が三十五歳なのかは本人に聞いてくれ。


「マヒル君マヒル君、あたしとデート行こう!」


「お断りします」


「えー! 何でよ! 出掛けるくらい良いじゃないかい!!」


「だーって、ハザラさんと絡むの色々うぜぇし」


「うざいだって!? 酷いよマヒル君!! ユウもオトも付き合ってくれないんだから良いじゃないかー馬鹿ー!!」


「誰が馬鹿だって?」


 うわい本人やって来たーい。


「ちょ、オト! そうやって障子の陰からそうっとやってくるのやめて!?」


「……」


 オト、と呼ばれたその子はスススッと入って来ては俺の隣に座り、見上げて「おはよ」と呟いた。


「おー君おはよ~」


「おはよう、シユウ伯母さん」


「オトワ、お前の母さんが騒いでんだけど」


「放っておくと五月蝿いから、マヒルお兄どうにかしてよ」


「俺かよ」


 未だにぎゃーぎゃーと騒ぐハザラさんを見て、俺はため息をつく。母さんがどうどう、と宥めているが聞きゃしねぇ。

 ちなみにこのオトワ、というのはハザラさんの息子でユウリの弟に当たる訳で。


「お前が買い物付き合ってやりゃあいいじゃねぇか」


「俺が……? ……嫌、つまんない」


 アサキに似てる様な似てない様な奴、だが。


「じゃ、俺も着いてってやっから」


「マヒルお兄が? ……じゃ、行く」


「やったー! マヒル君ありがとー!!」


 アサキの数十倍素直な良い子だと俺は思う。まだ小学生だし、嬉しそうにしているところを見ると可愛いなーとかも思うしな。

 飛び付いて来たハザラさんをかわし、俺はふわぁ、と欠伸を漏らす。


「行くなら早く行こうぜーハ、ザ、ラ、さん」


「うう、痛い、避けた癖に酷いよマヒル君……」


「お母さん、早く」


「はーい♪」


 そしてハザラさんはうちの両親と同じく親バカだ。

 本当にうちの家系にゃ親バカばっかりだ。用意をしに行ったハザラさんを見て俺は立ち上がる。


「んじゃ、母さん行ってくらァ」


「うん、いってらっしゃーい。逆ナンされない様に気をつけなさいよー、あんた格好良いんだから」


「息子に何言ってんのアンタ?」


 田舎だからか、田舎に俺みてぇな都内っぽいのが居ないからんなこと言ってんだろ? ええこら。


「大丈夫」


「あ?」


「マヒルお兄ならモテるよ」


「阿呆」


 オトワまで何を言う。流石の俺も照れるぞ。


「あ~、マヒル君お顔が真っ赤~」


「うっせぇ母親! 行って来る!!」


「あ、待ってお兄」


 トタタッと追って来るオトワを確認しつつ、俺は逃げる様に外に出た。そりゃ出たくなるでしょう、ええ。


「おっ、何かやる気だねぇマヒル君! じゃ、義姉ちゃん行ってくんね!!」


「行ってらっしゃーい」


 母さんに留守を預け、俺達は買い物に出掛けた訳で。

 嗚呼、もう帰りたくなって来た。




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