74+GWはごーいんぐまいうぇいでは決してない。
水田、森、畑――。もう、此処本当に日本なのかな。
こんにちは、アサキです。父さんの素晴らしきドライビングテクニックを駆使して、夜な夜な此処までやってきましたアサキです、基ヒコク家一行。
「やっぱり空気がおいしーなー!!」
「だなー、まぁとりあえず眠いぜ兄ちゃんは……」
一目散に助手席から飛び降りた僕の隣には兄貴。そしてその隣には……――ユウヤ……?
「ねぇ、ユウヤ」
「何?」
「……ユウヤ?」
「コラー、お兄ちゃんの顔を忘れなーい」
忘れたくもなるよ、――そんな格好されちゃ。またも登場素敵な水色スカート。まぁそれは良い――よくないんだけどさ――として……髪の毛どうした。
普段は栗色にもなる短髪を撥ねはねさせている癖に、何故にロングストレート?
「ママが買っちゃいました☆」
「“買っちゃいました☆”じゃねぇよ馬鹿親」
何買ってるんだよこの野郎。
此処が田舎だから良いものの、もし此処が自宅だったら僕は引き篭りになっていたところだよ。
「え、アサキ何か言いました?」
「あ、いや、父さんじゃないから安心して」
「そうですか」
荷物をおろす父さんの邪魔をしてはいけない、とりあえずコイツを殺るのは今度にしよう。
「おーい!」
「……ん? 今声が聞こえた様な……」
「何言ってるんだいマヒル兄。何の声も聞こえないよ」
「そうだよ、聞こえない」
「おーい! アサキユウヤマヒル兄貴~!!」
「え、名指しされてんじゃん、やっぱり――」
「「気の所為気の所為」」
「誰が気の所為じゃゴルァ!!!!」
「ぐふぁ!!!!」
兄貴が後ろに振り向くのと、ユウヤが前のめりにぶっ倒れたのはほぼ同時。
「ちょ、テメェ何しやがんだよバーカ!!」
「はん! んな格好してあたしの前に現れるのがいけないんだよユウヤちゃんめ! ……畜生可愛いなァ!!」
「「褒めてるし」」
うわぁ、やっぱり現れたよこいつ。僕はひとつため息をついて、男らしくキレるユウヤを見てから其方に目をやった。マヒル兄はあー、またか、とでも言いたそうな顔をして二人を見ていた。てかユウリよ、女の子が男子に背後から飛び蹴りをするな。
「相変わらずだな……」
「――おお! マヒル兄にアサキ! お久し!!」
「久しぶり、――ユウリ」
ペタン、とユウヤの上で座って僕等を見る此の人はユウリ。僕やユウヤの従姉――誕生日的にだから同い年だけどね――、という奴だ。叔母さんの家に来たんだからそりゃ居るよなぁ。
「ちょ、ユウリ! 気の所為ってアサキだって言ったじゃん!!」
「アサキは良いんだよーだ! アサキはあたしのマブダチだから!!」
「じゃあ俺は何な訳!?」
「下僕。てかアンタ、その格好で“俺”なんて言うなよ」
ユウリは何故かため息をついてユウヤから退く。
久しぶりに会ったがユウリは全く変わらない。元気なショートカットに動きやすそうな服。……同い年の女子にゃ見えません。
「なぁユウヤ、何でアンタそんなに可愛いのさ。あたしにも分けなさい」
「何を!? 何を分けろと!?」
「あ、ユウリちゃんじゃなーい」
ギャーギャーと騒いでいる二人に気付いてか、母さんがやって来た。そりゃ居ましたもんね、近場に居ましたもんね。
「あ、シユウ伯母様!!」
「お久しぶりね~、相変わらず可愛いわね」
「やだっ、叔母様ったら! あたしなんて全然……ユウヤの方が可愛いですって!!」
「いえいえ、本物のレディには敵わないわ~」
母さんはぎゅー、っとユウリを抱きしめるなりべったべた、もうべったべたとくっつき続けた。………………。
「ちょ、おいアサ! 勝手にどこかに行こうとすんな!!」
「此処に居たくない」
逃走はマヒルに止められてしまった。ちっ。 その内に女共は離れたけど。
「そいじゃあご家族! 改めて我が家へようこそ! パパもママも仕事だからね!! 部屋はあるから適当にくつろいじゃってよ!!!!」
本当に改めるなりそう話すと、ユウリは家へと入っていった。其処まででは無いけど外は暑い、だから僕は即座に後に続いた。
「パパママが帰るのは夕方だからさ、そしたら夕飯にするって! 其れまでは自由にぱっぱーっとねー」
「「ぱっぱー」」
「五月蝿い双子」
ぱっぱーって何だろう。まぁ良いや。
とにかくやっと、GWの始まりだ。