73+春だから。
「ただいまー」
自宅のリビングにて、ゴロゴロと横になっていた僕。父さんも母さんもユウヤもいる、という何とも珍しい自宅状況の中誰かが帰って来ました、アサキです。
……いや、一人しか居ないんだけどさ。
ガチャ
「うわ、皆居やがる」
「お帰りーマヒル兄ー」
「あらマヒル」
「やあ、お帰りなさい」
勿論、マヒルな訳なんだが。
ソファに居座ってゲームをするユウヤとか、キッチンで何かしてる母さんとか、ただ笑ってる父さんとか……寧ろいきなり帰ってきた兄貴に驚けと言いたい。
「皆こんな真昼間から何やってんだよ」
「暇ー」
適当な対応だ。春だからな。
「祝日だからね、何をしようかな……と考えてたら皆こんな感じなんだよ」
「要するに体たらく家族」
「あー君それ言ったら終わりー」
だって本当じゃないか。皆してグダグダしやがって……僕もなんだけど。まぁ、春だから。
「――で。マヒル、何で帰って来た訳?」
「うわぁ、家に帰って来ただけなのに何で俺弟にんなこと言われてるんだ……?」
「マヒル兄ー、アサ君は何時ものことでしょーがー」
「そりゃそうか。あれだよ、GWだから帰って来ただけ、何か出掛けたりすんだろ? アサキから電――」
「言うな消えろ」
「ええ!? ま、まぁ良いや、とにかくそういう訳だ」
人が誰にもバレない様に電話したんだからバラさないでよ。
「「電?」」
父さんとユウヤがハモった、ヤメテ、追及しないでクダサイ。
「何でもねぇよ、んで父さん。今年はどっか出掛けんだろ?」
「あ、はい。そのつもりです……が、何でマヒルが知ってるんですか?」
「勘」
「はぁ」
勘。そう言っといてくれて本望。僕は知らんふりをして読んでいる漫画を読む。良いじゃん、春なんだから。
「三人共、予定などはない様なので、実家の方に帰ってみようかなっと」
「「「……実家?」」」
実家……実家……父さんの実家……?
あれか、店も電車も何もない――近くにはね――、あの田舎な地方のことを言っているのか此の人は。
「叔母さんの家に行きましょう。そしてのーんびりと余暇を過ごそう、と思うのですが……やっぱり今の子供達は嫌かな?」
「俺は構わねぇよ」
「俺もー」
「僕も」
我ながら張り合いのない息子達だ。
「うん、息子達ならそういうと思った。――奥さーん、叔母さんの家に決定しましたー」
自分も妹のことを叔母さんと呼べば、やはり息子達の思考を熟知していた父さんは満足気に笑って僕等を見た。後にキッチンに向かってそう叫んで、飛んで来た母さんもこんにちは。
「よっし! じゃ、明日学校帰って来たらすぐ出発するから宜しくね!! アサちゃん、ちゃっちゃと準備しちゃうのよ?」
「何で僕だけに言うの」
「ユウ君もまー君もこういうイベントの時ははしゃいで準備が既に終わっているパターンが多いからよ」
「まー君言うな、準備終わってるけど」
「俺も終わってるよ!」
何で終わってるんだよ……! 流石過ぎるよ……!!
「……分かった」
「よし!」
「――漫画とゲームと……――」
「アサキー、何しに行くんですかー」
父さんにツッコまれつつ、とりあえず準備をしてしまおうと思った僕だった。いいじゃん、遅くたって……春だし。