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71+親心に子心。


「たーだいまー……っと」


 ふー、今日も疲れたー。今日も一日仕事疲れたよーっと。ママです、シユウママですー。 相変わらずただいまーというものの、結局誰の返事も帰って来ないのよ――


「お帰りなさい、奥さん」


 ――あれ?


「こんな時間まで毎日お疲れ様です、あ、コーヒーでも飲みますか? ……嗚呼、眠れなくなるから紅茶にする? あ、でも紅茶にもカフェインは入ってるよね……」


「ちょ、ちょちょちょちょー。……シンヤ君?」


「はい?」


 あれー? ――凄く懐かしい夫さんが見える。ニコリとするその姿はまさしく我が愛する夫君、シンヤ君だ。

 プルプルと震える人差し指をシンヤ君に向けて固まってしまった私。


「……あれ? シンヤ君何で居るの……?」


「うん? 帰って来ちゃ駄目でした?」


「いや、ううん、全然いいんだけどね? 寧ろ一旦落ち着きたいから抱き着いていいかな?」


「良いですよ」


 流石シンヤ君。とてとて、と疲れた体を引き摺り懐かしのシンヤ君に抱き着いてみた。


「疲れたよー、シンヤくーん」


「お疲れ様ー」


 ぎゅー。えへへー、シンヤ君懐かしいー。一年振りくらいかなー。シンヤ君はポンポン、と私の背中を叩いてから


「はーい、リビング行きましょうね」


 と、リビングへ連行した。体よく移動を強いられたけどまぁいいや。



「で、シンヤ君、いつ帰って来たの?」


「数日前ですね、GWまで休もうかと思って」


「え、何その自由なお医者さん」


 そんなノリでGWまで休んでいいのかしらね、夫君。その割に去年の夏休みから居なかったはずなんだけど。


「アサキが珍しく熱出したみたいだったから、一緒に部屋で寝てました」


「あー、だから居なかったんだね」


 同じ部屋なのに居ないってどういうことなのかと思ってしまったわ。シンヤ君ったら、心配性なんだから。


「ま、其れがシンヤ君の良いところだけど!」


「内心が口から漏れてるよ奥さん」


 いけないいけない。


「ふふっ……――ごめん、家のこと放ったらかせてて」


 笑みを漏らしたシンヤ君。昔っから変わらない笑顔だけど、謝る時は何時も少しだけ笑顔が曇っちゃう。何時も明るいシンヤ君が好きなんだから謝らなくたっていいのにー。


「いいよいいよ、私もだし。アサちゃんとユウ君に謝るべきよ」


「もう謝ったよ。二人共『別にー』の一点張りだったけどね」


 中学生で親がろくに居ないのって苦にならないのかな、なんて考えてはみるけど。アサちゃんもユウ君も良い子過ぎて、何も言ってくれないんだよなぁ……。


「マヒルにも久しぶりに電話したんだよ」


「あら、まー君に?」


「同じ様なこと言われたけどね」




『父さんも母さんも好きなことやってりゃいーの。もしもいざ、双子に何かあったとしたって、そん時ァ俺がどうにかしてやっからよ』




 ――マヒルは本当にしっかりし過ぎてるから。双子達よりも一人で、孤独な生活をさせてしまっていたはずなのに、見た目は不良だけど凄く、凄く良い子に育ってしまったと思う。


「マヒル、何であんな子に育ったのかしらね」


「奥さんの息子ですから」


「やぁね、確実にシンヤ君の血でしょ」


 頭もルックスも優しさも、全部全部シンヤ君のもの。私の要素なんて全てユウヤに行ったわよ。


「じゃあ、アサキは?」


「アサちゃんはー……突然変異」


「息子に何を言うんですか」


 ま、血が混ざり合って違うDNAを生んだのよ。(※適当)


「でもアサちゃんも――すっごく良い子だからいいの」


「――ですね」


 笑顔でまとめた私に、シンヤ君は笑顔で同意してくれた。







「でも、女の子が居ないのは貴女にとって悲しくはないですか?」


 シンヤ君の入れた紅茶を飲んでほやほやしていると、ふとそう言われた。……ん?


「何言ってるのよシンヤ君。――ユウ君が居るから悲しくないわよ」


「……嗚呼」


「一緒に料理してくれるし、お洋服選びだって一緒にしてくれるし、娘とやってみたいことランキング上位は大抵出来るからね!」


 ……元気さを出してみたのに、何故か幸薄い顔をされました。……あれ、何か間違えたかしら……?


「ユウヤは男の子でも……か」


「何か言った?」


「いえ、別に」


 腑に落ちない様かシンヤ君だけど、まぁ良いか!


「――ねぇ、奥さん」


 机に立て肘をついて手を組み、シンヤ君は何時もの笑顔で笑った。


「たまには、皆で出掛けますか」


「うえ?」


「GWですもん。久しぶりに、家族で遠出でもしませんか?」


「え、い、良いの? 貴重なお仕事休みだよ?」


「ええ、僕も皆で遊びたいから。駄目……かな?」


 はうう! 首を傾げてこっち見ないでシンヤ君!! 可愛い……!! 断れる訳ないじゃないの!!!!


「勿論行くわ! 部長に電話して休み取って来るね!!」


「あ、でもマヒル達も予定あるかも……――」


 私は携帯にがっつく。部長部長部長部長部長――(※現在PM:11:30)。え、シンヤ君が最後に何か言った? 私には何も聞こえない。









『――嗚呼、そういう理由でこんな時間に電話寄越した訳』


「うん、久しぶりに二人共はしゃいでるみたいだから。正直激眠いけど、兄貴もGWは空けときなよ」


『おう、兄ちゃんも激眠ィ。分かったよ、じゃーなアサキ、お休みー』


 電話が切れた。

 先程トイレに行ったら、両親の話が聞こえたのでとりあえず我が兄に伝えておきました。


「うー……アサくーん?」


「ごめん、起こした。……ユウヤ、GW出掛ける予定ある?」


「アサ君とお出かけするよてー」


 勝手な予定だ、聞いた覚えも承諾した覚えもない。


「じゃあ無いな、空けとけよ」


「んー、お休み――ぐー」


 速ぇ。


 ――ま、たまには先手をうってあげてもいいよね、忙しい両親に、家族サービスってやつ。




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