70+雷かみなりゴーロゴロ。
こんにちは、モモです、お久しぶりです。今日は皆部活がなくて、皆で帰ることになってます。嬉しいなぁ。
リョウちゃんもアサキ君もロクジョー君も一緒、ニカイドー君もユウヤ君もユキ君も一緒なんだよー。……だけど――
――ザー――
「うわー、雨ー」
ロクジョー君が呟いた通り――大雨です。というか、
――ピシャン! ――……ゴロゴロ――
――雷雨です。
「キャ!!」
「……」
私の横で跳びはねたリョウちゃんと、無言で耳を塞ぎつつ座り込むアサキ君。アサキ君は怖い……のかな?
「何だよリョウコ、お前雷怖いん?」
「ばっ、馬鹿言わないで! 雷なんてただの音――」
ゴロゴロゴロゴロ――
「――……よ!!」
リョウちゃん、今の間説得力ないよ。
「あー君、下駄箱に座り込むのは邪魔だと思うんだけど」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿」
「聞こえちゃいないか」
ブツブツ言って気を紛らわせているらしいアサキ君。雷、怖いんだね……リョウちゃんと似た者同士! ……だから何だろうごめんなさい。そしてユキ君は一人、楽しそうにアサキ君を見ている。
「つーか、これじゃあ帰れないんだけど」
「だねー、俺とかカイト君は別に帰ろうと思えば帰れるけど、アサ君とかアスカは無理だろうし。リョウちゃんも、モモちゃんユキちゃんもずぶ濡れちゃうよ」
ニカイドー君は体が弱いみたいだし、アサキ君は此れ、だし。私は濡れても平気だけど……リョウちゃんも此れ、だしなぁ……。ユキ君はやはり私達と同じ扱いなんだね、ユウヤ君。
夕方から悪化する、とは聞いていたけど、此処まで悪化するなんて聞いてないよお天気お姉さん。下駄箱には、私達と同じ様に帰れずグダグダしている人が大勢見受けられる。……はぁ。
「やむの待つ……というのは、得策で無いでしょうね……」
「だな、つかアスカは雷とか平気なのかよ?」
ロクジョー君の言葉に、ニカイドー君はニコリと笑って言う。
「雷? ただの自然現象ですよ? 馬鹿なこと聞かないで下さいよ~」
現に二人程其の自然現象で戦闘不能なんだけどなぁ。流石はニカイドー君。
「しゃあないから、家族に迎え頼むかー」
ロクジョー君はニカイドー君の言葉に苦笑を漏らしてから言った。そうだね、車が一番だよね。
でも家、仕事共働きだから来てくれるかな……未だ帰ってないかも……。
「俺は姉ちゃんに頼むか」
「あ、携帯なら貸しますよ」
「え、ニカイドー君携帯学校持って来ちゃってるの?」
「こうなること、予想してましたから」
流石ニカイドー君……ユウヤ君が「流石腹黒☆」とか言ってるけどニカイドー君は動じません。すごーい。
「んじゃ借りるぜー」
「うわー、兄貴居れば来てくれただろうけど居ないしなー……」
ロクジョー君が電話を始めた中、ユウヤ君が落胆。嗚呼、マヒルお兄さんは今家に居ないんだよね。
「私の家もお父さん居ないから無理ね、お母さんペーパードライバーだから運転なんてさせらんないわ――キャア!!」
冷静に言ったリョウちゃんは雷で叫びつつも言ってくれました。叫んじゃって、女の子だなぁリョウちゃんったらー。
「家は無理ですね、共働きなので」
「あ、うちも」
ニカイドー君の家と同じだもんね、小さく手を挙げて言っておいた。
「てか、時間が掛かったとしてマヒル兄に頼むでもいいんだけど、マヒル兄の携帯番号俺覚えてないんだよなー!」
「清々しい笑顔で言われても困りますよ」
携帯番号って長いものね……。私も自宅しか覚えてないや。ユウヤ君はアサキ君の前に座ると、「アサくーん、マヒル兄呼ぶー?」と叫んでいた。アサキ君に聞こえてるかは定かじゃないけど……。
「うし、姉貴来てくれるそーだ、誰か乗ってく? 二人くらいなら乗れっけど」
カイト君帰郷。ちょっと違うけど気にしないよ。
「アサ君聞いちゃいないし時間掛かるかもだけど俺達はマヒル兄呼ぶよー。リョウちゃんとかモモちゃんは先にカイト君の家のに乗って帰っちゃったら?」
「あれ、マヒルお兄さん呼べるんですか?」
「アサ君から聞き出せば」
だからアスカは残っててー、と笑ったユウヤ君。今のアサキ君から聞くのは至難の技だと思った私。
「雷五月蝿い帰る帰る帰る帰る帰る帰る帰る」
もはやアサキ君の方が怖いよ。
「アーサーキー!!」
――勇者……! 勇者だよユウヤ君……! こんな恐怖なアサキ君(※正しくは恐怖しているアサキ)の耳を塞ぐ手を引きはがして名前を叫ぶだなんて……!!
「んだよユウヤ! 俺はワンダーランドに逃げる!!」
「何処にあるのか分からないそんな所に逃げるのお兄ちゃん許しません!!」
「混乱してるアサキも面白いね」
此処で爽やかに笑うユキ君の方が面白いよ。あ、ごめんなさい。
「迎えに来て貰おうよ! そうすればアサ君怖くないで――」
「別に怖い訳じゃない、五月蝿いだけ」
「此の屁理屈男! ――じゃなくて、帰れるっしょー?」
「……そっか、父さん家に居るんだった」
「――……あ」
あれ、マヒルお兄さんじゃなくて……?
「あー! そうだった! 父さん帰ってるんだった……!!」
「え、お前まさかマヒルに迎え来させようとしてた訳? 三十分弱も待たせる気だった訳……?」
ユウヤ君はアハハ、と笑い飛ばしているがそそくさとニカイドー君の携帯番号を借りて家へと電話をしていた。
「ユウヤ、相変わらず馬鹿じゃな――」
――ピシャン!!
「……――」
また耳塞いじゃったアサキ君。
「完全無欠のアサキの、二つ目の弱点だね☆」
ユキ君……元気だね。
結局そんな感じでグダグダしつつ、私達は帰りの車を待ちました。
「――あ。姉ちゃんの車」
カイト君の声で、車が校門から入って来たのが見えた。そりゃカイト君の方が先に電話したし、家近いしね。
「んじゃ、俺先帰るな。アサキ~、俺様が居なくなって泣くなよ~」
「泣かないし、五月蝿いだけだし」
アサ君は耳を塞ぎつつもそう反論した。強がってます我が弟。雷雨の時は毎回こんな感じだから慣れてるよー。
「おー待たっ、カイちゃん!」
皆で笑ってたらウミさんがやって来た。ピンク色の傘を携えて化粧っ気なウミさんは、不覚にも綺麗だと思った。
「サンキュー姉ちゃん。んでさ、もう二人送ってやっても構わねぇ?」
「全然構わないわよ! 愛するカイちゃんのお友達なんだから!!」
「姉ちゃんうざい」
シュールな姉弟だ、とか思った。が、人のこと言えないので黙っておく。
「じゃ、アスカ、ユキ、行こうぜ」
「はい」
「ああ、済まないね、カイリ」
色々考えた結果、来る時間が大差ないなら近い家に送って貰おうということで、うちがモモちゃんとリョウちゃんを送ることになりました。……まあそんなに大差無いんだけどね。
「じゃーねー!」
三人プラスウミさんに手を振ったら、また雨の音だけが耳に残った。他の人はもう帰っちゃったしね、雷は未だ鳴ってるけど。
「父さん遅いなー。こういう時程飛んで来て欲しいよ」
「ユウヤ君のお父様って優しいの?」
現在まともな会話が成り立つ唯一のモモちゃんにそう聞かれ、とりあえず首を縦に振った。
「凄く優しいよー。あんまり怒らないし」
「そっか、早く会いたいなぁ……」
「もうすぐ会え――あ、来た」
車が見えた。水色な中型車、ありゃ家の車だ。出口近くに立っておーいって手を振ったら、黒い傘差した父さんが笑顔でやって来た。雷でもやっぱ笑顔なんだね、父さん。
「ごめんね、遅くなって。平気だった? いや――アサキ平気?」
「ううん、俺はへーき。――俺は」
そりゃ家族だからね、アサキが雷駄目なことは父さんもよく知っているってことでして。
「あ。父さん、こっちの二人送――」
「良いですよ」
「早いよ」
最後まで聞こうよ。
「可愛いらしいお友達ですね、ちゃんと送りますよ」
「あ、の、お願いします」
「お、お願いしますぃやああああ!!!!」
ジャストに雷が鳴ってリョウちゃんが悲鳴を上げた、こっちが怖いよう。
「大丈夫ですよ、雷なんて自然現象です」
――悲鳴を上げたリョウちゃんに、父さんは笑顔で手を頭に乗せた。――何だ此のロリコンみたいな図。
「ロリコン」
待てアサキ、俺が言わずと頑張った台詞を吐くな、てか大丈夫かよ。
「父親に酷い言いようですね。とにかく、帰ろうか」
父さんは苦笑して、でも満面に笑ってそう言った。座り込んでいたアサキも渋々立ち上がり――立ち上がらなきゃ帰れないし――学校を後にした。
――余談。
「ヒコクアサキ達のお父様……素敵な方だったわね」
「そうだね、格好良いし紳士的だし、あんなお父様素敵だったね~」
そんな会話が、一組でなされたのは次の日で。
あり、リョウちゃん父さんに乗り換えですか。