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69+修羅場らばーは的外れ。


 こんにちは、もうすぐこんばんはユウヤです。夕方ですよ、教室から素敵な日の入りが目の前に見えて気分は最高です。


「……」


 ――此の人が居なければ。



「ねぇカイト君」


「んー」


「そろそろ訳を話して俺を家に帰してよー」


 何やら今日ずーっとテンションが低かったみたいで、放課後になった瞬間泣きついてきました、めっずらしー。しかし何を話すでもなくふて腐れてるので、俺は自席でのんびりと言葉を待っている状況。


 ちなみに今まで聞けた状況は、アサ君と喧嘩した、ということのみ。


「喧嘩したなら謝ればいいじゃーん」


「あやまるチャンスもくれないんですもんあのひと」


 幼児チックに話さないで欲しいよ。


「あさ、あやまろうとおもったらさ――」



『あ、アサキ昨日は悪かっ――』


『あ、おはよう――ロクジョー君』



「――って言われたんだよ」


「苗字呼びされただけじゃないの」


 其れで弱っててよく今までアサ君と友達やってたな。


「其れに授業中にさ――」



『アサキ、そのー、教科書見せて?』


『良いよ、はい、ロクジョー君』



「――素直に教科書見せてくれちゃったんだぜ?」


「いや、そりゃ良かったじゃない」


 そりゃアサ君じゃあ怖いけど、返って良かったじゃないか。


「絶対怒ってる……! 帰る最後の最後まで笑顔で『じゃあねロクジョー君』とか言われたもん! どんだけ俺を蔑めれば――」


 ロクジョー君は今日一日、とにかくアサ君のダイレクトアタックを数十回に渡って受けたらしい。半狂乱で騒ぐ姿はすんごく面白いぜロクジョー君☆


「まぁまぁ落ち着いてーロクジョー君」


「お前までロクジョー君言うな!」


「はいはい。で、カイト君どうやって怒らせた訳よー」


 とっとと本題に入って欲しいです。普段おふざけ担当な俺は溜息を吐きながらカイト君を見た。


「……言って、怒んねぇ?」


「何よ君、俺に言ってもキレることアサキに言った訳……?」


「言ってねぇ言ってねぇ! 怖ぇよお前!! 流石双子睨まんといて……!!」


 えへへ、睨んでないよぅえへへへへ……はは。


「で、何言ったの? どうせ吹っかけたのはカイト君なんでしょ?」


「ふ、吹っかけた訳じゃねぇよ……まぁ、言ったのは俺だけど」


 言ってんじゃない。


「違う! 俺はあいつが何にも言わないから!!」


「言うって……何が?」


「ほら……最近春現に浮かされてるかの如く、色々考えてたみたいだから……」


「……あー……カイト君も気付いてたんだ」


 こりゃ駄目だよアサ君。君が悟られるのが悪いんじゃない? 俺は暢気にもそう解釈して、更にのんびりと続けた。


「アサ君が黙ーって何も言わないからカイト君はかっとなって――」


「スカしてんじゃねーって言いました」


「――テメェ誰の弟がスカしてるって……?」


「怖いから睨まんでって、つか、別にそういう悪い意味じゃないんだって!!」


 ガタン、と立ち上がってカイト君をどう捻り潰すかと考えたけど、カイト君が慌てて否定するものだから動きを止めてしまった。


「じゃ、何?」


「そりゃ、アサキがそういう性格なのは知ってるけどさ……俺としてはもう二年の付き合いな訳で? 悩んでたりするなら、少しは、話して欲しいなー……とか思うのでして」


「つまり、“んなスカしてねぇで俺様に頼れってんだ馬鹿アサキー!!”……という訳ですね、カイトさん」


「うん、そういうこと」


「――ですって、アサキさん」


 すんごく中途半端な体勢を直立に戻し、俺は俺達の後方、ドア枠に寄り掛かる弟――アサ君を見て、ニッコリと笑った。


「ほー、余計なお節介此の上ありませんね、ユウヤさん」


「――!? あ、アサキ、お前、何時から――」


 腕組みをして溜息を吐いたアサ君は、一度伏せた目を前方に向け、カイト君を見た。


「お前、バッカじゃねぇの? 一般人よか頭無ぇのに俺のこと心配? 出来る訳? つーか放っとけば?」


「な、馬鹿っつーな!」


「他人だし、人とろくにまともな会話しないし、名前間違えるし」


「そりゃアサキが自主的に――」


「迷惑掛けるし、つまらない奴だし、百害あって一利ないし」


「――其処は違うぞ馬鹿アサキ! お前は害とか無ぇだろうが!!」


 ……ふむ、大丈夫そうだねもう。言い合う二人を横から見て、再び席に座った俺。


「とにかく、放っとけって言ってんの」


「……」


「――言いたくなったら、自分から言うからよ」


 アサキは足元に置いていた鞄を拾うと、何時もの様に担ぎ込む。カイト君は――というか俺も――ポカーン、としてアサ君を見てた。


「何、ボーッとしてないで早く帰ろうよ。――僕、帰ってゲームしたいんだけど」


 あ、一人称が戻した。

 俺は一人、俺も一緒に帰っていいんだなー、とか考えていたけども、隣の方は未だポカーン、としていらっしゃる。


「アーサ君、カイト君応答がないよ」


「何コイツ。……帰り、コンビニ寄って何か奢ってやろうかと思ったのにね」


「お?」


 あ、反応有。俺はアサ君の隣に並ぶ。


「早く行こうよ、それとも何? 此の僕の誘いを断る訳? ――カイトの癖に」


「い、……行くに決まってんだろバーカ!!」


 さっきまでふて腐れてたのは何処へやら。カイト君は思い切り立ち上がって、アサキと俺の居る方へと走り込んで来た。


「俺肉まんがいい」


「また? 昨日食っただろ」


「あー君、俺も俺も」


「……何此の安上がりコンビ」









「アサキ、本当はさ」


 カイトと別れてから家路を歩く僕等。ユウヤは苦笑して僕を見た。


「――全然怒って、なかったでしょ?」


「分かったんだ」


 流石、というべきなのか。ちょっとした他人のことの嘘には気付かないのに、自分自身の感情的なことに関してユウヤには昔から何でもバレる。兄貴にも、父さんにも、隠してるつもりなのにバレる。


「そりゃー分かるよー。だってアサ君が怒ってたら、一人称なんて無意識に変わるじゃないかー」


 そうか、あんな意図的に変えてちゃバレバレか。


「……じゃあ、何でだと思ったのさ」


「言ったら怒るから言わない」


「じゃあ其れ正解」


 ユウヤは本当に買わせた肉まんを頬張りつつ笑った。絶対に言わないで欲しい、喧嘩の要因。


「余り俺の手を煩わせないでよねー」


「え、お前其の台詞よく僕に言えたね?」


 普段煩わせてくれるのは何処のドイツ? と言いたかったが、確かに迷惑の大きさは僕が上な気がしたので言わなかった。こいつは普段ベタベタなのに、こういう時はマジに偉そうで、兄貴みたいに振る舞う。まるで――昔に戻ったみたいだと思った。


「ユウヤ」


 そして不意に思う。何も聞かないで傍に居る様になったこいつに、昔から迷惑掛けまくりだと。


「んー?」


「――ゴメン」


「――どったまー」


 返事がおかしくないか。謝ったつもりなのに、どう致しましてって、おかしいだろ。


「いーの。アサ君のゴメンには、沢山色んな感情が篭ってるんだからねー。ありがとー、とかどけー、とか」


 ヘラヘラしやがってコイツは……。


「今のはきっと、ありがとー、かなって」


「……」


 ヘラヘラしてんのに――凄いから困る。


「ユウヤ」


「むい?」


「朽ち果てろ」


「――はい?」


 僕は歩調を早めて歩き出す。後ろからは慌てたユウヤの声。


「ちょ、アサ君今のは何!? 朽ち果てろって、流石にお兄ちゃん分からないよ!?」


「そのままの意味です」


「酷い!!」


 分かられて溜まるか。今のはカイトと喧嘩(※みたいなもの)の要因になったやつと同じなんだから。ユウヤが気付いた其の要因、僕は暴言に混ぜた此の感情を、バレるもんかと無表情を装って歩いた。






 カイトの方はユウヤにバレたけど、此れはバレる訳にはいかない。――“照れ隠し”だなんて、誰が言うもんか。



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