59+勉強会、出動。/正午の部
「603年てーっと……十七条の憲法!」
「惜しい、それは一年後だね、皆分かるかい?」
「「「……」」」
「……アサキ?」
「冠位十二階じゃねぇの?」
「正解、流石はアサキだね!」
『さっすがー!』
「テメェ等馬鹿にも程がないか」
ふふっ、やはり彼等は面白いね。こんにちは、かな、今は丁度正午を回る頃だからね。分かるとは思うが此の家の主、ユキだよ?
私の方の勉強はほぼ終わってしまったからね、皆の宿題を手伝っている所だよ。うん? 残り? 嫌だなぁ、午後からやるに決まっているだろう?
アサキは既に宿題を終わらせている様で、私の勉強机を陣取って頬杖ついてふて腐れているよ、ははっ。……おかげで私はベッドの上さ。
「歴史の宿題も終わった所で休憩といこうじゃないか、そろそろお昼時だからね」
「おー! 飯飯!!」
一目散にカイリがシャーペンから手を離した。……まぁ、仕方ないね。
今日は私の家に誰も居ないもので、皆で昼食を作る、という素晴らしき予定を立てている訳なのさ。という訳で勉強は一旦やめて、一階に降りることになった。
「なぁユキ」
「ん、何だいアサキ?」
「僕料理とか出来ないよ」
おや、意外な欠点かい? アサキは一向にふて腐れたまま私に言うものだから、何やら可愛いらしさまで伺えるね。
「アサ君は確かに苦手だよね、料理」
「あらーん、完全無欠のアサキ君にも苦手分野はあった訳だな」
「ということはやっぱり料理の出来る女の子にならないと……」
「リョウちゃん、考えがだだ漏れだよ?」
やはり皆の思考はユニークだね、特に三人目。キッチンに移動した私達は、作る予定のカレーの具と対面した訳だ。定番だな、カレー。
「じゃあアサ君はユキちゃんと一緒に玉葱切ってよ」
「うん」
「了解したよ」
アサキはユウヤに言われるがまま玉葱を手に取って私の方にやって来た。
「ユキ、玉葱ってひとつでいいのかな」
「うむ、良いんじゃないかな?」
正直私も其処まで得意じゃないんでね、玉葱だけで勘弁してくれたまえ。――他の話を聞く所、どうやらモモとリョウコが他野菜を切って、カイリとユウヤが鍋などを散らか――失礼、セッティングするらしい。
ユウヤは料理が出来るらしいから良いが……と、目を離したスキにアサキが玉葱を切り出していた。
トントントントントントン――
――みじん切り?
「ストップアサキ」
「ん」
「カレーにみじん切りの玉葱が入っていた所を見た事がないんだがね?」
「……」
出来れば切る前に聞いて欲しかったよ。
「じゃあ何切り?」
「……くし切り、ではないか?」
「くし切り? ……知らないよ、どう切るの」
「……」
さて、お互い知らないパターンはどうすればいいのかな?
「……もう、適当に切ってしまわないかい?」
「賛成」
という訳で適当に行くことになった。
「アサくーん、ユキちゃーん、玉葱炒めるよー」
「はい」
「あんがとー――ってちょ、アサ君これ――」
「玉葱」
「知ってるけどさ、何此の切り方様々オンパレードは」
「玉葱」
「ばっさばさに切り倒し――」
「黙って炒めろや」
「……うん、分かったよ」
ふむ、こうやってアサキの押し切り術が鍛えられた訳だね。……別名ごまかし術だなぁ。
ま、味は変わらないよはっはっは。