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55+思いがけない組み合わせ。/前


 只今漫画を読んでいます。今日で学校が終わりという訳で午前にて帰宅な僕は――両親は仕事、兄達は出掛けている、要するに僕は一人という訳です。


「アッキー?」


 ……一人という訳です。


「アッキーってば。……わーったよ、ちゃんと呼びますよ、アーサキー?」


「何で何時までも貴方僕ん家に居るんですか」


 一人、なはずでした。こんにちはアサキです、……何で一人じゃないんだよ。


「だから、マヒルがこっちの家に帰って来ちゃってるからだってば」


「自宅に帰りなさい」


 忘れてた、此の人居たんだった……! 僕は身内でも何でもないセツさんに絡まれています、此の人の苗字聞き出して自宅に送り返してやろうかな。


「皆居なくてつまんねぇよー、アサキ何か楽しい事ねぇの?」


 人の話を聞いて欲しいよ。

 まぁ仕方ない、此の家にはまともな話を出来る人の方が少ないんだった。僕はパタンと漫画を閉じ、セツさんに向き合う。


「じゃあ遊びにでも行けばいいじゃないですか」


「何処によ。金なんざ持っちゃいねぇんだから無理無理」


「立ち読みにでも行けば」


「お前じゃないんだか――」


「殴るよ?」


「スマン、馬鹿にしてる訳じゃない」


 俺には忍耐強さがないから立ってられないんだー! と喚くセツさん。……本当、何で此の人帰らないのかな。つかマヒル、ちゃんと面倒見るって言った癖にもう放置か、放置なのか。

 ……此れがペットの世話をしない子供を持つ母親の気持ちか……!!


「で、何。僕に何しろっていう訳」


「俺様の暇に付き合――」


「は?」


「って下さいお願いします」


此の人本当に年上なんだろうか。扱いが僕の中でカイト並に酷い。……酷いのは僕か。


「じゃあ、単刀直入に質問する。――セツさんの苗字って何?」


「お? 言ってなかったんだっけか」


「うん」


どうせ暇なら聞いてみたかったことを聞いてみよう。だって暇だし。


「へっへっへー、気になるってか」


「其れで良いや、気になるー、うわー僕すんごく気になるー」


「やる気無ぇなコラ」


 だって差ほど気にならないし……教えませんって言われたら構わないんだから良いよ。


「じゃあいーや。何時か――分かる時が来る」


「こういう所で何で少し格好良いめに言ったのさ」


 ベランダに繋がる窓の方見て黄昏れているセツさん、一体何が言いたいんだ。

 そしてそんな所に舞い込んでくるは――



 ぴーんぽーん――



 ――というインターフォン。


「誰だよこんな真昼間に」


「知りませんよ……」


 しかしとりあえず客人的なセツさんに出させる訳にはいかない。仕方がないので一階へと下りて玄関へ向かった。……どうせあれだろ、カイトとかだろ。


「はーい」


「こんにちは~!」


「え、あ……ウミさん?」


 其処に居たのは珍しい人物。珍しいどころじゃない、初めての人物だ。……え? ウミさん家知ってたんだ。


「ウミちゃんだよ! お久しぶりねアサキくーん」


「お、お久しぶりです……が、何の用ッスか……?」


「うん、今日はアサキ君じゃなくてお兄ちゃんに用があるのよ」


 兄? 兄貴……ユウヤ?


「ちなみにユウヤ君じゃないよ? マヒルの方ね?」


「え……」


 兄貴に用が……? というかそれ以前に――


「ウミさん、兄貴の知り合いだったのか」


「あれ、言ってなかったかしら~? 同じ大学なのよ」


「へ、へぇ……」


 全て初耳過ぎる。


「アサキ、コーヒー貰うぜー……って」


「うふふ……あれ、セツじゃない」


「ウミ、てめぇが何で居やがるんだ」


 玄関でバッタリしました。そりゃマヒルとセツさんは同じ大学なんだから、ウミさんがマヒルの知り合いイコールセツさんの知り合いって可能性は低くないよな。


「アサキ君と弟が友達なのよ」


「弟……? まぁどうでも良いか」


 何やら言い争うかと思ったが其処まででは無いらしい。セツさんはま、上がれや、とか言い出して勝手にウミさんを上げてしまった。……せめて家主の許可取ってくれない?


「お邪魔しま~す」


 そしてウミさんもお邪魔しちゃった。遠慮しといて欲しかったのは内緒にしておこうか。

 セツさんがコーヒーを入れ出したのを見送ってから、ソファに座っているウミさんに言う。


「で、兄貴はもう少ししないと帰って来ないですよ」


「そう……レポートについての話したかったのになぁ……」


「俺には聞かねぇの?」


「自分と同等レベルの馬鹿に聞いて何かが進展するとは思ってないわよ~」


「そりゃそうだな」


 馬鹿達が馬鹿を認める様は、実に滑稽である。ああみえてマヒルは頭が良いからな、文武両道、眉目秀麗……畜生、あいつ絶対に僕の兄貴じゃない。


「ウミさん、今日カイトは?」


「カイちゃん? カイちゃんならお家で宿題やらせてるわよ~、アサキ君達とユキちゃん、って子の家でお勉強会するとは聞いたけど、出来るとこくらいやっちゃいなさいって言ってね」


「流石」


 姉度は高い様だ。うちの兄貴達なんか宿題は最終日、な奴等だからな……。


「おらウミ、コーヒー」


「ありがとうセツー。……でさ、何であなたは此の家に居るの?」


改めて聞いた此の話題。そうだよね、先ず他人が何で居るか凄く気になるよね、僕も気になるよ。

セツさんはドカッと座り込み、そしてうーん、と考えているみたいだが、答えはこうだった。


「――家出してるから」


「家出してるんだ」


 新事実だ。


「まぁまぁ、大きく出たのねセツも……」


「ま、俺様だからな」


「黙りなさい?」


「はい」


 ……セツさんが尻に引かれてる? まぁ、どちらかというとウミさんが爽やか鬼畜キャラだったことの方が驚きだが。


 マヒルが帰るまで待たせて貰うわね、と言ったウミさんと僕等は、暫し団欒と至った。


 ……続くらしい。



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