52+場違いにも程がある話し合い。
『あーおーげーばーとーおーとーしー』
とか歌うのは良いと思うけど、卒業式って昔から基本泣けない。
つー訳でただ今卒業式の真っ只中。未だ二年だから関係ないんだけどさ。アサキです。
『皆様、ご着席下さい』
教頭がんなことを言う前から座っていた僕は、名前の順的に隣のハルナを見た。
「なぁハルナ」
「何よ。式最中に私語は厳禁だぜ?」
「は? お前誰に言ってんの?」
「ごめん、アサキにルールとか通じないんだった」
其処で引き下がられても悲しくなるからやめて欲しい。
「俺達来年卒業だぜ? 早くね?」
「別に」
「おおう。お前から話しかけてきといて会話即中断させんのやめようぜ」
「さーせん、でも……卒業式って何が悲しい訳?」
「別れとか?」
「ありえない」
「雰囲気とか――」
「ノリかよ」
「出発と――」
「白々しい」
「人の意見をことごとく否定すんなよ!!!!」
シィン――。
ハルナの声が体育館に反響。
「「……」」
『ゴホンッ。続きまして――』
隣を見ると、真っ赤なハルナ君が居ました。
「お前なんか嫌いだ」
嫌われてしまった。……まぁ構わないんだけど。
「恥ずかしさのあまり俺は死ぬ。骨はアサキ、拾ってくれ」
「たりィよそんなの。ユウヤに任せる」
「呼んだ?」
適当に名前を出してみたのだが、やはり居たかユウヤ。そりゃ後ろの席だから居るだろう。
「ハルナが死ぬって」
「ごしゅーしょー様」
「お前等嫌いだ……!」
兄弟揃って嫌われてしまった。……まぁやっぱり良いんだけど。
所かわって。
「ふぁ……」
「あー、駄目だよイツキ先生。とりあえず教師なんだから欠伸なんてしてちゃ……というかさっき叫んだのって先生のクラスじゃ……」
「そうだぞイツキ君。一組の皆は、君を見て将来大人になるんだからな!」
「うるせーシロクロコンビが。俺が何処で何しようが勝手だろうが」
此の人は自分が教師としての自覚があるのかな……。あ、初めまして、アヤメと言います。
パイプ椅子にかったるそうに座ってる彼は一体何故教師になったんだか。
「式中なんだけどなぁ……」
「卒業してんのは俺のクラスの餓鬼共じゃねぇ」
「てかあんたとシロちゃんは新任教師だったじゃーん。来年が楽しみ楽しみ……イツキ君、泣くかね」
「誰が泣くか。餓鬼共が卒業するくらいで泣く訳ねぇだろうが、此れから何度卒業を見ると思ってんだよ」
「うわ、禁句を吐きやがった」
平和な同僚方です。特にイツキ先生は同期だけど、こんなにたくましい同期というのもどうかと……。クールを越えて、傍若無人って感じです。
というか二人共、今卒業式中なんですってば。
「悪いアヤメ、寝ていい?」
「駄目に決まってるでしょうが。後で色々仕事押し付けるよ?」
「嫌だ。お前マジ半端なく押し付けてくんだろ、絶対」
其れくらい言わないと素で寝るからに決まってるでしょうが。
僕を挟む形でパイプ椅子に座っている二年担任教師。さっきからひそひそと良く分からない話で(※主に両端が)盛り上がっている。……卒業する生徒の事なんて考えちゃいないよ此の人達。
「つーかさぁ、来年度どうするよ」
「何がだよキクカワ」
「クラス変えだよ、ク・ラ・ス・変・え。受験もあるし、出来ることなら頭良い奴欲しい」
「わー、コクシ先生黒い。コクシなだけに」
「お褒めの言葉ありがと、シロちゃん」
「褒めてねぇよ」
確かに褒めてないって、コクシ先生。
「とりあえず、ヒコク兄君はまたシロちゃんが持ってね」
「え、またですか。三年とも僕で良いのかな……」
「良いんじゃねぇの? 俺もユウヤは嫌いじゃねぇがクラスに居るのは嫌だ。……じゃあキクカワ、弟どうすんだ」
「あんた持ちなさいよ。……私でも良いけどあの子、すんごく扱いにくいんだから」
「嗚呼、お前国語だもんな。あいつ国語寝ちまうだろ」
「起こすの可愛いから無理」
「教師失格だな」
コクシ先生って可愛い子に甘いからなぁ……。小さいですからね、アサキ君は。……本人に言ったら睨まれそうだけど。英語は真面目に受けてくれるからまぁ良いか。
「最近転入してきた奴はアサキと仲良いから俺が持つか。あいつ頭良いし」
「うわ、何、あの子頭良かったの? 私ったら唯可愛いだけかと思ったわー……」
「嗚呼、じゃあアスカ君は僕に持たせて貰って構いませんか?」
「ああ。つかそうしねぇとユウヤがキレるだろ」
「そうねぇ……でも、新しい友達を作ったりしなきゃじゃないのかね」
「良いんじゃねぇのか? ……つーかもう、持ち上げちまおうぜ」
「え、良いの其れ」
「良いねー。私が校長締め上げ――ゴホンッ、言っておいてあげるわ」
今聞こえた台詞はスルーしてあげて下さい。僕も面倒ですから。
……って、あ。卒業式、終わっちゃった。
絶対。絶対絶対絶対に――校長室に呼び出しくらいそう。