50+スキーの後のカウンター攻撃。
「アッサくーん!」
「ん」
「そういや聞いてよ~!」
と言って、ユウヤの昨日の武勇伝を聞かされる憐れな僕。こんにちは、アサキです。久しぶりの学校がたるいです、もう少しで春休みだ、頑張れ僕。
ちなみに今日は一日テストです……え? 何の? 学年末だよ。
スキー林間の後にテストとか、世界はどうなってるんだろうな、あはははは。全てを捨て切ったユウヤは逆に開き直ってハイテンションだ、大丈夫かよこいつとツッコみたくなる。
「――って訳で、可愛い転入生来たよね?」
「可愛い転校生? ……あー、来た来た」
そう、テストは受けないけど今日から――と言ってももう春休みだけど――此のクラスに転入生が来たんだった。今カイトと図書室に行って……嗚呼、帰って来た。
「あいつだろ」
僕はそっちを指差す。カイトはだらし無くたらいまー、と声を上げる。ユウヤはそんなカイトと転入生――ユキを見て固まった。
「ただいまアサキ。やはり図書室というのは良いね、私にはうってつけの場所だよ。……って……君は昨日の……!」
「き、君……昨日の子……?」
ニコリと笑うユキを前に、ユウヤは口をパクパクと動かして指差した。どうやら唖然としている様だな。
――まぁ、間違えてたんだから仕方ない。
「嗚呼、また会えて嬉しいよ君。同じ学校なのならば言ってくれれば良かったのにね」
「あ、やー……びっくりさせよっかなー、と思ったらさ、俺がびっくりしちゃったよ」
「うん? それは一体どういう……嗚呼、もしかして君も間違えていたのかな……――私が“女”だと」
そういう事だ。
サキネユキ――誰もが見惚れるんじゃないかというくらいの端正な顔立ちからは予想出来ない性別。そう、彼女――いや、彼は男だ。
「先程会ったばかりのカイリにも、同じ反応をされたよ。『お前男?』ってね」
「昨日会った時はてっきり女の子だと思ってた……! ごめんね!?」
「いや、良いんだよ。慣れているからね」
ニコリ、と、ユキは特徴のある一物ありそうな笑みをユウヤに向けた。……まぁ、其れがサキネユキって奴だから。
「ところでアサキ、それに昨日会った君も、二人はどういった関係なんだい? 私的に考えると、兄弟というのが妥当な線かな」
「正解。学年的に一緒だから双子だけどな」
「ふふっ、良かった。名前を聞いても良いかな?」
「俺? 俺はユウヤ、アサ君のお兄ちゃーん! 宜しくねー、ユキちゃん!」
ちゃんかよ。
「嗚呼、宜しく頼むよユウヤ。ちゃん、というのも斬新で良いかもしれないね」
お前もお前で否定しないのかよユキ。
「ふむ……アサキのお兄さんにしては元気が宜しい様だね。アサキのご家族は皆そうなのかな? アサキは突然変異体?」
「「……?」」
「ユキ、其の馬鹿共には捻った言い回しは通じない、脳内で漢字変換すら出来てないから」
ユウヤとカイトが首を傾げたので、僕は溜息をひとつ吐いて言いやった。……相変わらずユキは楽しそうに笑ってるけど。
「実に楽しい学校生活が送れそうだ。クラスが別たれたとしても、是非仲良くしてくれよ、アサキ、カイリ、それにユウヤも」
「おー、ユキは頭良いらしいからな。アサキ以外にも頭良いキャラが増えて俺は助かってる」
要するに、写すノートの出所が増えたとカイトは言いたいらしい。
「ユキちゃん、女って思うと可愛くて、男って思うと美男子だよねー」
「うん? 何を言うんだいユウヤ。可愛いと言うならば自分の弟を見てみろ」
「ユッキー、登校初日で病院逝きになりたいのかな~?」
「ユキ、そのテのギャグは心してかまさないとアサキがこうなって殺られるぜ?」
「心したよ、カイリ」
クスクスと笑うユキ。反省の色は何処に行った。
……まぁ、楽しい仲間が増えたんだ。今日は許すとしよう。
とりあえず今は、目の前のテストを頑張りますかね。