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496+双子の些細な言い合い。


 アサキです、何時の間にか休みがもう少しで終わることに今日の朝方戦慄した。来週卒業式だと……それから二週間もしたら休み終わりだと……僕は未だ休み足りないというのに。


「――世界が滅べば良いのに」


「急に物騒なこと呟かない……!」


 嗚呼、ユウヤ居たのか。


「良いじゃんもう、結構休んだでしょ? 二月からずっと休みだったんだよ?」


「足りん」


「じゃあどれくらい休みたいってのさー!」


「年中」


「無休ならぬ不動……!?」


 買って来たゲームに熱心に取り組みつつ(※自分で言う事ではありません)、僕はユウヤのツッコミをスルーした。

 此処で凄くどうでも良い知識だけど、ゆとり教育だか実り教育だか近年の教育について知ったこっちゃないまま大学生の生活について考えてみた結果、大学生って一年の内の1/3以上休んでることになるんだよね。いやそりゃ大変になるよ、今後のこと考えたり色々やんなきゃならないこと多いって聞くし自主的に動かなきゃならないってことらしいけど……此処まで言って何が言いたいかって、今までの生活が馬鹿馬鹿しくなるくらい休むという僕のこの遣る瀬無い思いを誰か受け取ってくれないか。そして同時にさっさとその休みを僕に下さい。


「ユウヤは休まなくても生きていける生き物かも知れないがな、この世の中を生きる人々は皆休息を摂らなきゃ生きていけないんだよ」


「うん、限りなく正解に近いこと言うけど俺もかな」


「何もしてなくても“怠い”“疲れた”という若者は軟弱だと言われるだろうけど、実際怠いし疲れてるんだから仕方ないじゃないか!」


「うん、アサ君、落ち着こう、お菓子食べる?」


「食べる」


 休みが終わることに関するショックが大き過ぎたようだ、一先ず落ち着こう。差し出された干しイモを食べ……干しイモ? こいつ今菓子って言ったけど干しイモって果たして菓子の部類に入るのか? というか何で干しイモ食ってんだ。食べるけど。


「でもさ、ずっと家に引き籠るのって逆に身体に悪いって言わない?」


「動いて疲れるよりはマシだ」


「アサ君はもう少し外出た方が良いと思うよ俺」


 ……確かにこの休みほぼ引き籠ってたけども。自分でも自覚している分何とも言えなかった。


「大学生になったら、今までみたいに近くに学校ある訳じゃないんだからね! 電車とか電車とか電車とか――」


「乗り換えとかお前大丈夫なの」


「……」


 僕の心配をするより自分の心配をした方が良いと切実に思わせる間である。


「お、俺こうみえても方向音痴じゃないんだからね! そりゃちょっとホームが見当たらなかったりして乗り遅れるとかはあるけど……!!」


「昔近くの公園から帰ってくるのに随分と道に迷ってらしたような覚えがあるのですが」


「そういうこと何で覚えてるかな畜生!」


 一緒に連れ回されたからに決まってんだろ馬鹿野郎、あの頃から僕の中でお前の存在は厄介者に他ならなかったわ。


「とーにーかーくー! アサ君はもっとお外で遊ぶべきだってお兄ちゃん思うの!」


「僕は幾つだそしてお前は幾つだ」


「幾つになったってアサ君は根暗だもん!」


「貶したいの? 乏したいの? どっちなの?」


「……とぼ……し?」


「ただの馬鹿だったね、ごめん。今のツッコむところだから」


「嗚呼もう難しい言葉使わないで下さいっ!!」


 ご察しの方も多いでしょうがユウヤにとっての難しい言葉でお送りしています。お前が部屋の中で暴れようとどうでも良いから、干しイモで僕を指すのだけはやめろ。


「外に出なくたって生きていける」


「まぁ、アサ君がそれで良いなら良いけどね……」


 やっとのことで諦めたユウヤがそうやって溜息を吐くものだから、心の中だけで勝利を噛み締めつつ現実では干しイモを噛み締めた。勝利というより、もうどうにもならないという長年の経験故の退きな気もするけど、最早僕には何も聞こえなかった。幾ら少し暖かくなってきたからといって外は未だ寒いんだぞ、誰が出るか。









「もう少し暖かくなるまで我慢するやい」


「生憎もう少し暖かくなったらあっという間に梅雨が来て夏が来るから僕は再び引き籠るのだった」


「ほんとこの子どうにかして!!」


 外に行かなくて良い時くらい、家の中で惰眠貪ったって罰は当たらんだろうっての。

 ……そう思わない? 否定は受け付けないけど。




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