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495+卒業シーズン一ヶ月前。



「卒業、かぁ……」


 マヒルだ、久し振りにバイトが休みで日中家に居るものだから、最早何をしたら良いか分からない状態でテレビのリモコンカチカチ変えまくってたところでユウヤが一人そんなことを呟いた。


「お前等ももう高校卒業か……あんなに小さかったのになぁ……」


「マヒル兄それ何時の記憶、俺達がそのサイズだったの小学生にも満たない頃だよね!」


 座っているのについソファ程度の高さに標準を合わせてしまった、いやだってお前等これくらいだっただろほんの少し前まで。


「俺もアサ君も何時までも子供って訳じゃないんだからさ」


「俺にとったら二人共まだまだ手の掛かる弟――で居て下さい」


「願望になってるよ!?」


 忘れようたってそうは問屋が卸させない、兄ちゃんお前等大好きなんだからな(※どうやら疲れている)。

 話を戻そう。ダイニングでぼやっとしていたユウヤが言う様に、二人は三月になれば卒業式やって春休みって訳だ。高校三年から大学にかけては休みたい放題であるから羨ましいと言えば羨ましいが、院通ってる俺とてそう変わりはしないというもの。


「なんかさー、中学の時は卒業したくないなーって思ったんだよね」


「そうなのか?」


「うん、でもなんか今はそうでもない。卒業して、その先何があるのかなーって感じでちょっとわくわくするかも!」


 にへっと明朗な笑みを浮かべるユウヤは確かに楽しそうで、先程ゲーム買いに出掛けた双子の弟とは雲泥の差だなとか冷静に考えてしまった。


「マヒル兄って卒業の時どうだった?」


「俺? ……俺、は……」


 中学の記憶は既に薄れてしまっている為割愛するとして――覚えていない訳ではなくて、余りにも思い出すような内容が無いというだけなんだが――、高校の頃は……。


「……あー……」


 思い出せたのはトウマが泣きッ面浮かべていたことくらいかも知れない、連絡するから! と再三言われたのにその後携帯一回ぶっ壊して連絡着かなくなったんだったな確か。こればっかりは悪かったよトウマ。


「え、何、頭抱えてるけど」


「いや、俺も全然寂しいとかは無かったな、ってよ。けど大学入ってからほとんどの奴が疎遠になったな」


「そうなんだ……」


 あまりにもトウマに対して可哀想な思い出だった為笑って誤魔化せば、ユウヤは気持ち落ち込んだ様子をみせた。


「じゃあ俺も、友達と疎遠になっちゃうのかなー……?」


 友達大好きっ子の言葉と聞いて呆れるな、……言わないでおいた。

 俺の場合、あまり自分から積極的に誰かと連絡を取るというタイプではないのと、周りの奴等も結構淡泊な奴が多かったということが要因だったような気もするから、そこまで心配する必要は無いだろうとは思うんだが。何せユウヤだ、家族間のメールにすら絵文字顔文字を多様してくるこいつが友達とのメールや電話を疎かにするとは到底思えない。


「ユウヤ、お前中学の友達とは?」


「ふぇ?」


「中学の友達と、今も連絡取ったり、会ったりしてるか?」


「うん、学校違う人ともよく連絡取ってるよ! 皆忙しいからあんまり会えないけどね」


「だったら大丈夫だろ」


 持ってたリモコンを机に置いてから、ソファに凭れてユウヤを見る。


「高校ん友達も、お前が連絡怠らなかったら切れやしねぇってこと。……だろ?」


「……あはは、うん、そうだね!」


 そうたった一言言うだけで馬鹿みたいに嬉しそうに笑う弟に、つられるようにして俺も笑った。俺も大概単純に生きているつもりだけど(生憎そうは生きられていないらしいが)、ユウヤは本当に単純明快というか、……単純馬鹿だと兄ながら思う。何時までもそんなんじゃ何時か誰かに騙されて痛い目見そうなものだけど……何時までもそうあって欲しいとも思ってしまうのは兄心ならではなんだろうな。








「ただいま、……何、兄貴」


「……お前ももう少し単純な生き物だったら良いのにな」


「……ゲームがあれば僕はそれで良いのだった」


「嗚呼、凄く単純だったな」


 帰ってきて早々至極真剣な表情でガッツポーズ決められちゃそう認めざるを得ないわ。




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