493+本気の声色くらい、分かるんだけどな。
※電話と言う名の会話のみ
『学校がありゃあるで超疲れる訳だけどよ、無きゃ無いで暇だって俺思う訳よ』
「へー……バイトする、とかすれば……?」
『姉ちゃんが許さんし金に困ってないから良いわ』
「えー……カイ君ん家って裕福なんだねー……」
『いや全然、まぁ父さんがちゃんと働いてっしなー、ゼン家と違って』
「……んとだよ、何なんだよ農業したいから田舎住みますって……意味分かんねぇと思わない? 小学生だった俺の頭は何でそれ容認したのかね?」
『馬鹿だったんじゃねぇの?』
「カイ君には言われたくないね☆ ……はぁ、」
『あん? なんかゼン元気無ぇ……?』
「元気―? あー、夜勤明けであんま寝てなくて頭回んないだけ、というかカイ君もさっさと宿題の続きやんなくて良いの? 今月中とか言ってたじゃん」
『俺の力だけじゃどうにもなんねぇからやっても無駄なんだよ、つーか寝てないなら寝ろよ、電話切って良いから』
「電話したの俺だしもう少ししたらミヤ迎えに行かなきゃだから。暇なら寝ないようにもう少し電話付き合ってよ」
『別に良いけどよ。……ゼン家って、姉ちゃんとその子と三人暮らしなん?』
「そーよ」
『大変だな』
「そうでもないよ、あっ君達ん家のが大変そうじゃない?」
『確かにな。最近になって上の兄ちゃんが家戻って来たらしいけど、医者先生とお母さん忙しいみたいだし』
「医者先生? ……嗚呼、お父さんお医者さんなんだっけね、裕福で羨ましい」
『でもマヒル……上の兄ちゃんはがっつりバイト野郎してるっぽいけど』
「マヒルさんねー、何回か見たことあるけど格好良いね。どっちかと言えばあっ君が似てるからあっ君将来格好良くなる訳か……今も格好良い部類に入るか」
『アサキは格好良い部類じゃなくて年中怠い部類だ』
「意味が分からないけど今ゼン君ツッコむ気力無いよ」
『お前だってお姉さんと似てんじゃねぇの?』
「あんなのと似てたら俺舌噛んで死ぬ努力をする」
『結果死んでないし』
「きょうだいって基本真ん中が似ないもんなのかな、シギん家も真ん中の子が超クールビューティというか」
『お前……年下にまで……』
「幼馴染だよ二歳しか変わらないってば、つかうちの学校の一年だし」
『は!? マジかよちょっ、それ何で教えてくんなかったし! 気になんじゃねぇか!』
「いや、ユリちゃん人見知りあるし、シギに『学校で話し掛けたらドブ川に叩き落とす』って言ってたから俺も声掛けちゃ駄目かなーみたいな」
『それ何処の女版アサキ?』
「そういやあっ君っぽいわ、……でも大丈夫だよ、あっ君みたく何時でも何処でも、って訳では無いから」
『いや、あいつも最初は猫被んだよ。猫っていうか、黙ってるっていうか。途中からこう、……俺みたいな扱いになる訳だ』
「カイ君は中でも酷い気がするっていう俺の思いはそっと心にしまっておくことにするよ」
『おっとっとー、全くしまえてない。そして話は戻るが、ゼンて何時から今の三人暮らしなん?』
「俺? 何で? そんなにゼン君のことが気にな――」
『いや、だってお前が小学校の時に親が隠居だろ? で、お姉さん子供居るってことは二十代前半ないし後半……ゼンから見て義兄さんとやらは単身赴任で…………あん?』
「人のボケをスルーしただけならともかく一人で考え込んで一人でこんがらがってるんだけど何かなこの子」
『だってよー! お前ん家って案外複雑じゃね!?』
「あ、バレた? 実は俺一回中学で一人暮らしだったんだよね☆」
『どういう……!?』
「ほら、高校生の姉貴と二人暮らしだったんだけど、姉貴が奇跡的に結婚して一回義兄さんと二人暮らしした訳だよ」
『ほら、って言われてもな……え、何がどうなって今だし』
「お腹にミヤが居るのが分かって直ぐだったかな? 義兄さん超良い人っていうかお人好しっていうか、血の繋がりすらない俺が一人暮らしするのも反対してた人で、自分が忙しくて姉ちゃん一人にすんの嫌だから俺が居てくれたら凄く安心だなんたらかんたら理由付けてうちに義兄さんごと戻ってきた」
『……でもそのお義兄さんって、』
「そ、現在単身赴任中。まぁ三、四年間とか言ってたしそろそろ戻ってくるんじゃないかな? そしたら俺どうしよっかなぁ……」
『……え、何が?』
「……え、だってほら、折角の家族水入らずの場を乱すのもアレじゃん? だから一人暮らしでもしようかなと」
『お前だって家族だろ?』
「いや、まぁそうなんだけども」
『だったら居りゃ良いじゃん。幾ら義兄さんとやらが他人だろうが、家族は家族だし、血が繋がってたって何時まで一緒に居られんのか分かったもんじゃねぇんだぜ』
「……カイ君?」
『なんつって』
「……びっくりさせないでよもう、カイ君がカイ君っぽくないこと言うからゼン君睡魔吹っ飛んだ」
『良い貢献してやったと思えや』
「ハイハイ、……ん、ちょうど時間も頃合い、小さなお姫様のお迎えに行ってきます。カイ君はあっ君とこでも行って宿題死ぬ気になってきなさいな」
『おーよ、いざとなったらマヒルさんに頼み倒す。そんじゃ』
「うん、ばいばーい」
「“血が繋がってたって”、――か」