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492+どこまで考えているのやら。

「つーか……、何なんだよコレ……最早めげるだろ……」


「めげている暇があるなら少しはやる気を出して頂きたいのですが」


 ハァイ、ゼン君だよ。部活で皆が揃うのなんて久し振りってくらい揃ったこと無かったんだけど、一番最後に来た俺が部室を見回したところ、今日は全員居るみたい。全員何が凄いかって顧問まで居るってところだよ、ハヤサカどうしたの。


「ツヅネ、アレ何」


「あ、ゼン君先パイおっひさー☆ っす! あれは何とかなんたら推薦で受験は受かったもののその後に届いた宿題っぽい多大な量の書類達に頭を悩ましたカイ君先パイが担任であるハヤサカセンセーに泣き付いた図らしいっすよあはは滑稽☆」


 そういやお前も久し振りに見たけど一言も二言も多いね。


「次アサ君だよ」


「ん、やっといて」


「アンタそれじゃゲームやってる意味無いじゃない」


「そしてそこの人達は通常運行なのね理解」


 少し離れたところで何時も通りにテレビゲームに勤しむ面々は良いとして……うん? 良いのかコレ? あっ君とリョウコちゃんは良いとしてゆっ君良いの? 君決まってたっけ?


「大丈夫だよ! ハヤサカ先生が推薦で行かせるって言ってた!」


「あ、口に出してた? そしてハヤサカさん最終手段じゃないそれ」


「推薦と言っても自己推薦の類で行かせるだけです、そこのば……頭の弱い方がなかなか行動に移らないので強行手段ということです」


「今馬鹿って言い掛けたよね、ハヤサカもう完全に化けの皮が剥がれてるよね」


 カイ君の宿題から視線は外さず溜息交じりにそう言うハヤサカは、続けざまに「ヒコク君の担任である方が何時までものほほんとしているから……」だのぶつくさ文句を言ってるけども。この人は何処までもほのちゃん先生に悩まされて生きるようだ、流石の俺もご愁傷様とか思う。子供よりも同僚嫌いにならないことを願うばかりよははっ。








「っていうか、っていうか!」


「……どうか、……したの?」


「どうかしたの? じゃないのよナツメっち! この状況を見てみんしゃい何かおかしいと思わないのかお前はー!!」


「……?」


「嗚呼もうナツメっちったら鈍感さんもう二月だよ二月! だってのにほらこれ! 此処に先パイが皆居るこの状況! ほらほらナツメっちの姉さんは今どうしてるのかな!?」


「多分、家で、読書」


「だよね!? お家だよね!? 受験終わった人は二月から休みでお家でエンジョーイ! してる訳ジャン! ハイッ、じゃあ同学年の先パイ達が学校に居るこの状況!」


「うん、……?」


「あーもーこの子ってばのんびりしてるんだからいやでもそこがナツメっちの良いところであり良いところでしか無いよねっ!! オレはそういうのよーく分かる子だもんね!!」


 暫く各々自由に過ごしていたら、はっとした様子を見せたツヅネが騒ぎ出した。まぁナツメには全く通じてないというか、ナツメは基本ぼうっとしてるから伝わってても無反応なんだけどさ。話を聞いてた俺と、あっ君辺りは言いたいことが分かったみたいだけど。


「ということで! ゼン君先パイ達は今日も今日とて何で学校に居るんですか!」


「うん、居ちゃ悪い?」


「大歓迎だけどもでっす!!」


 ツヅネの言う通り、三年は二月から受験期間って感じで休みになる……のが定例なんだけどね。だから俺が今学校に居る理由も勿論あるし、他の皆も――カイ君なんて一目瞭然だよね――何かしら用事があって来たんだと思うんだけど。


「ゲームする約束してた」


「私は図書室に本返しに来たら……皆が居たからつい」


「アサ君の付き添い!」


 うん、碌な理由なんて無かったね。卒業式の答辞の話とかしに来た俺一人だけ超真面目に見えるよね。


「あああああもうハヤサカわっかんねぇよ!」


「今の説明で分からなかったんですか? もう諦めたら良いんじゃないですかね」


「教師がそれで良いのかよ!」


「何度やっても理解出来ない生徒に同じことを反復すること程無駄な時間は無いと思いますが」


「もっと丁寧に教えろやァ!!」


「殊更丁寧に教えているつもりですが? そこにいる三人なら今の説明一度で十二分に理解出来たことでしょう」


「アサキとゼンとリョウコは理系で出来てんだ……俺文系だし……」


「では他の宿題で国語と英語があるようですしそちらを頑張れば良いんじゃないですかね、それか何時ものように聡明なご友人を頼るとか。私は忙しいので失礼しま――」


「すまなかったハヤサカ先生様!!!! 習ってないようなとこは流石に無理!!!!」


 あっちもあっちで凄く大変そう、何処までも鉄仮面なハヤサカだけど、あの人も生徒のあしらい方ってのを学んできてる気がする。正直凄く笑いそうになったけど何とか堪えた。カイ君、あの調子で終わるのかな。俺が心配することじゃないだろうけど、……っていうかひとつ思い出した。


「あっ君、確かあっ君カイ君と同じ大学の同じ学科じゃないの?」


「うん」


「……え、あっ君は宿題無いの?」


「僕センター、あいつ推薦、宿題なんてある訳がない」


「あったとしても、アサ君ならどうにかなるよねっ。何故か片言なのが気になるけど!」


 無駄にキリッとした表情であっ君が言うものだから、周り共々笑ってしまったけど。……俺実はちょっと気になってたんだよね、あっ君がセンターなんて面倒な手段選んだ理由。



(まさかとは思うけどあっ君、宿題のこと見越してこっち選んだ……?)



 取ろうと思えば適当な推薦で適当な試験通って行けたような、楽な道を通って生きることを生き甲斐にしているような人(※それは失礼)がそれで行かなかったんだよ。その理由がまさか――、


「ゼン君、」


「……ん? 何?」


「急がば回れってことじゃないかな」


「……」


 ……若干意味違う気もするけど、所謂そういうことか。ほぼ無理矢理だけど、俺納得。

 全く理解していないゆっ君及び後輩達と、呆れたように笑って課題に苦しむカイ君を見るリョウコちゃん。いやぁ……本当にそうだね。




「あっ君には勝てる気がしないよ、色んな意味で」


「僕も負ける気しないよ、色んな意味で」



 何を言うにしろ、まずはカイ君にエールを送るっきゃないと思った俺でした。

 高校生活も、もう終わるみたいだから。 




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