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489+受験シーズン真っ盛り。

「へぇ、センター試験かー」


「えぇ、まぁ」


 ユウヤでっす! 学校帰り、久し振りにアスカの家に遊びに来たよ! 相変わらず胡散臭い笑顔だなぁとか思って見てたら、偉くグッドタイミングでにっこり微笑まれた。うん、やっぱりアスカって凄いね!


「アスカは頭良いしそうなるよね、あ、でも頭良いんだったら推薦ってやつでも良かったんじゃないの?」


「あはは、それはそうなんですけどね。確かユキ君は学校の推薦で行くとか」


「これだから頭の良い奴は……!」


 学校の推薦って何? いや本当もう学校から推薦されるようなこと一切無いんだけど俺? そりゃスポーツとかやってたら話は別だろうけど、生憎放課後とか休みが丸潰れになりそうな運動部になんて所属してたこと無いですけども。そんなの入ってたらアサ君が死んじゃう、生活能力的な意味で。

 気付いたら高校三年の最後の学期になってたんだけど、時の流れって早いね。三年生は一月終わったら休み入っちゃうし、実質一ヶ月も切ってしまっている。推薦とかの人はもう学校決まってて有意義な休みを過ごすんだろうけど、……ははっ、そんなの無理に決まってるじゃないか。


「そういえば、ユウヤはどうなさるんですか?」


「ふ、ふふ……聞いちゃう?」


「そういう反応する気がしていたので今まで聞けなかったんですが」


 我ながら幸薄い笑みを浮かべつつ、さっき出された紅茶を飲んだ。嗚呼、紅茶美味しい。


「まぁ隠すことじゃないしふっつーに言うと未だ決まってないよ」


「知ってますよ」


「言ってないのに!?」


「だってユウヤですよ?」


「あははっ! 真顔で帰ってきやがんの!」


 さも『ユウヤがそんな簡単に進学先決まる訳が無いですよね』な笑顔が返って来て俺涙目。仕方ないけどね! 分かってたし! 進学するって決めた時からさこうなるだろうって思ってたもんねーだ!! ……いじけてなんか無いやい!!


「頑張って下さいね、ユウヤ」


「も、勿論!」


 と返事をしつつも俺は紅茶の世界に逃げる、美味しい、紅茶美味しい。もう俺紅茶になりたい、ダージリン辺りに。





「……ですが、正直ひとつ意外でした」


 俺がそんな世界に逃げているのを同じく紅茶を飲みつつ楽しげに――此処が違うけどね!――見ていたアスカがそう言ったのを聞いて、俺は顔を上げた。


「何が?」


「アサキ君ですよ」


 アサ君? ……嗚呼、そういうことね。確かに俺もちょっと意外だったけど……案外アサキらしいなぁとも思ったんだけど。


「まさかあのアサキ君が――センター試験受けるだなんて」


 神妙な面持ちでアスカが言うものだから、数ヶ月前の学校での出来事を思い出して俺は笑った。

 友人中の誰しもがアサ君は指定校推薦とかで行くと思ってたもので、たまたまアサ君の零した『センター受ける』の一言に恐らく全員驚いた。



『え、……アサキ何て?』

『センター受ける』

『どうして?』

『え?』

『アサキおま……、お前がセンターなんて面倒な道を通るとか言い出す訳無ェだろ!? お前誰!?』

『偽物だわ、此処に居るヒコクアサキは偽物だわ……!』

『本物のあっ君は自宅でゲームしてるねきっと』

『カイトシバく』

『俺だけかよ!』



「――その後アサ君メッチャ不機嫌だった」


「何よりカイリ君が不憫ですね」


 自業自得だとは思いますけど、と続けられた言葉は聞かなかったことにして。


「ただ単純に、学校の推薦にはそこの学校が無かったってだけらしいけどねー。そりゃあったら推薦取るでしょアサキ」


「他の推薦は?」


「アサ君ならセンターで余裕だって担任の先生に言われたんだってさ」


 あの子何気に真面目だから模試とかちゃんと受けてんのよ、問答無用で学年トップだったらしいし、更に何気に勉強ちゃんとしてるし。よく考えてみると家でもちゃんとやってるっぽいしなぁ、リビングでゲームしてる姿見る回数が……そういや減った……だと……。


「まぁ、アサキ君の心配は特にしてませんけど……。カイリ君やリョウコさんはどうなさったんですかね」


「カイト君は俺とおんなじようなもんだけど、俺と違って武器があるだけ良いよね……」


 英語なんて俺には宇宙語にしか聞こえないのに。


「リョウちゃんもセンター受けるってさ、受けてから決めるとは言ってたけど、きっとアサ君と同じとこ行くんじゃない?」


「おや、それはそれは」


「部活の先輩が居る学校だし、リョウちゃん先輩と仲良かったしね。結構早い段階から候補に決めてたらしいよー」


「ふふっ、良かったですね。アサキ君の志望がそちらになって」


「確かにね」


 リョウちゃんには悪いけど、二人でははっと大爆笑。暫くそうやって笑ってたけど、ふとアスカが何かに気付いたように笑い止んで、俺を見た。


「……あれ、ユウヤ、じゃあ……」


「ん?」


「アサキ君と同じところ、行かないつもりなんですか?」


「……」


 黙った俺に心底驚いたように、そして何処か心配そうにアスカが俺を見続けるもので、さっきとは違う意味で笑えた。


「別にずっと一緒じゃなくたって良いんだよ、確かにちょっと寂しいけどさ!」


「……そうですか」


 ……ちょっととか言ったけど本当はすっげぇ寂しい。でも俺にもちょっとは、こっちは本当にちょっとだけど、――ちょっとくらい、やりたいことも出来たからさ。


「学校違ったって家で会えるし、友達も……ほら、こうやって会えるじゃん?」


 そりゃ会える時間は少なくなるだろうけどさ、友達とも。けど完全に切れる訳じゃないんだし、俺はそれでもやってけるんじゃないかなって単純にそう思ったんだよね。だから大丈夫だよ! そう言って笑ったら、アスカは少し呆れたように微笑んで、



「ユウヤのその前向きなところは、素晴らしい才能だと思います」


 そんな風に褒めてくれた。……褒め……たよね?








「高校の友人は一生の友になると言います、大事にしなきゃですからね」


「中学の友達だって一生の友達だよ」


「あはは、その様です」


 どんなに経ったって、これからもずっと友達だよ。だって友達ってそういうものでしょ?


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