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488+新年なんてどうでも良いから休みを下さい。

「やはり炬燵とは至極暖かいものだねっ」


「だよなァ、外から入ってくると天国っつーか……」


「……」


「お、アサキおはよーさん」


「アサキ! 明けましたおめでとうだよ!!」




 アサキだけど、朝起きたらリビングが騒がしかったのでとりあえず開けたばかりの扉を閉めた。


「……はっはっは! アサキ無駄な抵抗は止すべきさ! 何故なら朝の廊下とは実に寒々しいものなのだからね! 暖かいお布団の中に居た君にそんなものが耐えられるかな!?」


「寝起きに見たくねぇもんがリビングにあったもんでつい」


「友達を見たくねーとか言うなよなー、つーか何時までも寝てんなよお前は」


「未だ九時前だ馬鹿野郎」


 部屋の中から文句を言われるけれど、言った通り未だ朝の九時すら回ってない。こちとら早く起き過ぎたと思ってた矢先にコレだよ。ていうかこんな朝早くからお前等人ん家で本当に何してんだって。カイトはまぁもう何でも良いけどユキ、お前だお前。

 渋々リビングに入れば、見間違いであって欲しいと思った現状がそのまま人の家に広がっていた。


「……」


「おーアサキ、見事にパジャマっ子だな」


「ふふっ、そんなところで立ち止まっておらずに新年の挨拶でもどうだい?」


「自分ん家の炬燵が朝から占領されてる図を前にしたら誰でもこうなるわ」


 朝っぱらから人ん家でだらっとしやがって……。とりあえず寒いのは事実だから、僕も炬燵に入っておく。めちゃくちゃ寒いよ朝。それから、カイトとユキが何故家に居るかということもそうだけど、それ以上に何に違和感かって、二人以外の姿が見当たらないことに違和感があった。


「おいお前等」


「んー」


「ユウヤは」


「んんんー」


「蜜柑を食うな、食うなら喋んな」


「「……」」


「黙るな」


「お前が喋るなっつったんじゃねーか!」


「五月蠅い蜜柑寄越せ」


「あはは、アサキは相変わらず理不尽だね!」


 ユキの発言はスルーしてそのまま渡された蜜柑を食べる、蜜柑が美味いからもう何でも良い、寒い。……と思ったが流石にこのままでは意味が分からないからちゃんと話を聞くことに。



「ユウヤならば、私達を家に招いてから買い物に出掛けたよ。温かい緑茶も淹れてくれた訳だが……流石はユウヤだね、主夫街道まっしぐらさ」


「返す言葉が見当たらない、どうでも良いけど家の奴居ないのに出掛けるって不用心か」


 見てなかったとはいえ容易に想像出来る光景につい溜息を洩らした。こんな時間から買い物ってあいつ本当何目指してんの、冬休みも終わるって頃に。


「で、お前等は何しに来た」


「何と言われるまでも無い、新年の挨拶及び遊びに来ただけさ!」


「俺ただの便乗」


「この暇人が」


 渾身のドヤ顔をかますユキに、もそもそと蜜柑を食うだけのカイトは本当に蜜柑を食いに来ただけの様子。こいつも歪みねぇな。昔から言ってるけど少しは常識的な面でユキを見習え蜜柑野郎。


「アサキも正月明けで暇をしてるだろうと思ってね、暇潰しには丁度良いだろう?」


 確かに暇してたけど、やるゲームも無いし。


「俺年越した瞬間から暇だったわ」


 お前はもう少し気張れ。


「って言っても、うちじゃやることなんて高が知れてるけど」


 自分の家のことだから良く分かるけど、うちで遊ぶだの何だのってリアルにゲームしか無いと思うんだが。


「そして何より何故こんな早い時間に来た」


 そこでやっと一番聞きたかったことを聞けたんだけど、二人は何処までも当然と言った風な表情で同時に、


「「暇だったから」」


 ……とか言いやがりまして。どうやら常識云々言うのはやはりどちらにも言うべきだったようだ。約束なく来る時間じゃねぇよ馬鹿野郎共が、そしてユウヤ貴様も冷静に家に招くな、説教してやるからさっさと帰って来い。


「ふむ、カイリ、アサキが心から不愉快そうな表情をしているね」


「あん? 何時もそんな顔してんだから放っとこうぜ」


「そんなこと無いだろう? 確かにアサキはちょくちょく不機嫌そうになる傾向にあるが、それは決して不愉快という表現ではなくてどちらかと言えば拗ねているような可愛らしい表情で――」


「黙らんかい」


「ほら、この様にね!」


「はっは! 確かに――イッテェ!!」


「天誅」


「何で俺だけ!?」


 我ながら素晴らしいコントロールでカイトの頭に蜜柑を投げ付けてやった、理由? んなの日頃の行いと色んな意味で依怙贔屓だ馬鹿がお前は一生蜜柑食ってろ。ちなみに良い子は真似しちゃ駄目らしいので真似しないで下さい。


「しかし、何をするにしてもアサキ、君はまず着替えをだね」


「家出る気無いから良い」


「おいヒッキ―かお前」


 追い出さないでやってるだけありがたいと思いやがれってんだ。……早起きは三文の徳とか言うけど、何処ら辺に徳があんのか誰か教えてくれ切実に。僕は朝はかったるくぐっだぐだな感じで過ごしたいんだよ。



「――という訳で僕は寝る」


「……おや、私達にはどういう訳だか全く理解出来ないのだがね?」


「折角起きたのに寝るんかい」


「此処で寝る、お前等は勝手にしろ」


 口に出してないから分かられてたまるかと言いたいが、僕はもう寝る気分になってるからツッコミは放棄する。炬燵でそのまま寝転がって目と閉じれば、二人が好き勝手に何か言ってるみたいだけど、特に気にすることなく眠りに就いた。休み少ないんだから、ゆっくりさせろっての。








「……アサキはユウヤのこと不用心って言ったけどよ、」


「そうだね、アサキも充分不用心だね。……双子だからかな」


「さぁ」


 そんなこと言われてたことだって、僕には聞こえてないのだった。以上。


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