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487+年の瀬と誕生日。


「ねぇ、お兄ちゃんって誕生日何時だっけ」


 はろう、ゼン君だよ☆ 今の台詞はシギの妹であるユリちゃんの台詞で、ゼン君は今ミヤと一緒にシギの家に居るのだった。そしてそんなことを言われたシギは運んできたお茶の乗るお盆を持ったまま固まっている。


「……ゆ、ユリ? まさかと思うけどボクの誕生日忘れたんすか……?」


「え? うん、忘れた」


「何でっすか!? 家族だよね!?」


「まぁ家族だけどお兄ちゃんだしね、お兄ちゃんってもあたしよか身長ちっさいし」


「それは言わないの!」


 シギとユリちゃんの会話は何時聞いても面白いと思う、シギがたまに「ゼン君もよく姉弟喧嘩みたいに言い合うじゃないっすか」とか言ってくるけど、俺と姉貴の言い合いはこんな可愛い感じで終わることが滅多にないからなぁ。どちらかが言いのめすか適当に切り上げないと終わらない。シギがさらっと引くから終わるんだろうよこの兄妹喧嘩は。ソオちゃんとミヤはそんな二人の姿をにこにこしながら見ている、仲良しなのは良いことだよね。


「ソオ! ソオはお兄ちゃんの誕生日覚えてるよね!?」


「えっと、十一月です!」


「ほら! ソオが覚えてるよユリ!」


「ソオ、あんたは未だ頭ちっちゃいんだから無駄な情報は入れちゃ駄目だよ」


「お兄ちゃんの誕生日無駄なの!?」


 キリッとしているところ悪いけど、ソオちゃんは多分何日までは覚えてないんだろうなとかゼン君は優しいから言わない。


「あ、でもあたしソオとミヤちゃんとゼン君の誕生日は完璧だよ」


「え? 俺?」


「たんじょうびー?」


「ゼン君が今月の三十日で、ミヤちゃんが四月の八日」


 ユリちゃんが渾身と言っても過言ではないようなドヤ顔で俺とミヤを指差す。うん、確かに間違ってないけど、後ろでお兄ちゃんがいじけてるよユリちゃん。


「セーカイ、流石ユリちゃんだね」


「あたしがゼン君とミヤちゃんの誕生日間違える訳ないじゃん?」


「ボクのは月も覚えてなかったのに……」


 拗ねたな、あれは完璧に拗ねた。苦笑してその様を見てたけど、隣のミヤが急に動いたと思えばシギの方にぱたぱたと行き、にこりと笑ってみせていた。


「しぎくんはねー、じゅうきゅーにち!」


「……へ?」


 それだけ言えば満足だったのか、俺の方を見て首を傾げてから戻って来た。隣に座り直すでなく突っ込んできたものだから結構な衝撃があったけど、そこは男として倒れる訳にはいかず受け止めた、さっすがゼン君。っていうか、


「ミヤ、シギの誕生日覚えてたんだな?」


「うんっ、みやちゃんしぎくんのたんじょーびおぼえたー」


 褒めてと言わんばかりの笑顔を向けてくるから、勿論のこと褒めてやる。何であの姉から生まれてきたのにこんなに可愛いのかなこの子、絶対義兄さんに似たんだ、だってこんなに可愛いんだもん。


「ミヤコちゃん……! 良い子過ぎて泣けてきたっす……!」


「お兄ちゃんうっせ」


「うっさいとか言わないの!」


「みやちゃんみんなのたんじょーびおぼえた! えらい?」


「「「偉い(っす/です!)」」」


「キミ等……」


 見事に被った三兄妹の言葉、いや、うん、そうだけどね、確かにそうだけどミヤが愛され過ぎててゼン君笑い堪えるのに忙しい。それこそミヤのことなんて三人は生まれた時から知ってる訳だから、可愛くて仕方ないって思ってくれてるんだと思うんだけど。……まぁ、それは俺にも言えた話なんだけどさ。姉貴と喧嘩した時の篭り場所なんて決まってシギの部屋だったとか、今思うとすっげぇ迷惑掛けてたなぁあははっ!

 我ながら思うけど、俺は結構他人に迷惑を掛けて生きていると思ってる。幼馴染のシギやユリちゃん、どちらかといえば妹って感覚のソオちゃんには勿論だし、シギん家のおじさんやおばさん、学校の友達にも。だからこそ、


「……シギが1119(いちいちいちきゅう)、ユリちゃんが0328(れいさんにいはち)、ソオちゃんが0409(れいよんれいきゅう)」


「……ゼン君?」


「後、おじさんが1122(いちいちにいにい)おばさんが0206(れいにいれいろく)、ついでに言えばサチのは0528(れいごうにいはち)だったな……」


「おにーちゃん、おかあさんとおとうさんはぁ?」


「……姉貴は0809(れいはちれいきゅう)、義兄さんは0624(れいろくにいよん)」


 せめてお世話になった人の誕生日くらい、絶対に忘れたくないって思うんだよね。


「心配しなくても、俺は皆の誕生日は忘れない、ってか、一度聞いた誕生日はぜーんぶ忘れないよ。……特にカワイイ子の誕生日はね?」


 我ながら空気に似合わないこと考えてたから、最後は適当なことを言ってみたけど。カワイイ子じゃなくても、大切な人の誕生日なら記憶失ったって忘れない自信があるモンで。――とか言ってたら、何故かユリちゃんに溜息を吐かれた。


「え、何よユリちゃん」


「ゼン君さぁ、これ以上イケメンレベル上げてどうすんの」


「……はい?」


「ゼン君ふざけてよく格好良いカラ☆ とか言うけど、ガチ格好良いからそういうところ。変な虫付くからそのイケメンちょっと自重した方が良いよ」


「ちょっ、どういうことなのそれ」


 プラスの意味でイケメン自重しろって初めて言われたかもしれないんだけど。


「あはは、ゼン君が格好良いのはボク達が良く知ってることっすからね」


「ソオも知ってます!」


 普段ならスルーされる台詞の全てがこの三兄妹には拾われてしまってゼン君真面目にびっくり。



「だから、ちょっと早いっすけど、」


 シギがひとつ笑えば、つられるようにしてユリちゃんもソオちゃんも微笑んだ。


「誕生日おめでとうっす、ゼン君」


「これからも、格好良いゼン君で居てね、あたしゼン君のそういうところ好きだし」


「かっこいいゼンお兄ちゃんでいて下さい!」


 昔から見慣れた三人の姿だけど、毎年欠かさずそうやって笑ってくれるんだよなぁ。つい呆れてしまいそうにもなるけど、其処は俺として、一言で返すってのが流儀ってもん。






「――勿論、ゼン君に任しときな?」


 ナルシストとでも好きに呼んでくれれば良いよ、――だって俺、カッコイイから。



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