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475+元気のない弟。/後

「お先ーっす」


 やけにバイトが長く感じたのは疲れてたからということにして。後は帰るだけのゼン君だぞ☆ ちなみに時刻はもう随分遅く、良い子とあっ君達はもう眠る時間です。ちょい長引いたよね、補導され兼ねないんだけど俺補導されたら覚悟しとけよ店長。……十二時前に寝るとか授業中しか無理だわ。

 さて。スタッフルームで着替えを始めつつ携帯を取り出せば、チカチカと目に痛いランプが点滅している。どうせ姉貴だろうとか思いつつ開いたら、つい上着を取り零す程度には驚いた。



『外でスタンバってる、なう』


「ナンダッテ?」


 件名、寒い。受信時間、十分前。送信元――あっ君!?

 脳が理解した瞬間に、滅茶苦茶急いだ俺だった。










「寒いんですけど」


「でしょうね! っていうか何してんの!」


 家に居たら確実に寝てしまうから、とのこと。……くそ、前言撤回だ店長、俺達が補導されたら肥溜めに埋める。


「メールの話しようと思って」


「え……明日じゃ駄目だったの?」


「僕も思ったけど。……なんか、急いだ方が良いのかなと。メールじゃスクロール尽き付きそうな話だし」


「あっ君って基本良い人だよね」


「んだと」


 俺があっ君にしたメールって、『シキちゃんがナツメの調子? が? 悪そうだっていうんだけど、何か分かったことあったらメールして!』だけなんだけど。以上なんだけど。バイトの終わる時間とかも言ってないから、恐らく何時からかずっとそこに居たんだよね、こんな初秋の肌寒い夜に。


「……ん? ってことは、……何か分かったの?」


「だから居る訳だよね、馬鹿なのゼン君」


 普段の数倍あっ君が辛辣である。


「原因はやっぱりシノノメっぽい」


「あ、やっぱり? でもあいつ自身が何も無かったって――」


「あいつ、明日からまた長期で自主休学するらしい」


「……あら」


 一年の時に色々言ってたから知ってたし、最近はほぼほぼ休み無しで通ってたみたいだったから気にしたことなかったけど。……またちょくちょく休んでたみたいだったっけ。


「以下推測」


「おっけい」


「僕等は詳しい事情聞いてないから何とも言えないけど、ムラサメは多分事情聞いてるんじゃないかな。……それか、聞いてなくても、心配してんだと思うよ。出席とか、勉強とか。後、……僕ならそうする」


「……そうする?」


「自分が心配してる人の前で、自分が心配してる様を見せたりはしない。だからムラサメは、シノノメの前じゃ普段通り装ってんじゃねぇのかな」


「……」


 今日の部活も、ツヅネは少し早めに帰ったそうな。あっ君は分からなかったけど、手を振って別れの挨拶を交わした後、一瞬だけ表情が曇った気がしたと、ゆっ君による報告有……か。


「……うん、了解あっ君」


 理由が分かれば対処は出来る、わざわざ来てくれて申し訳無かったけど、流石はあっ君頼れる男! ――言ったら冷めた視線を向けられることは間違いなしだから言わなかったけど。

 あっ君の家からは然程遠くないし、早く帰って寝るんだよ。そう言って自転車の鍵を取り出そうとしたところで、


「後ひとつ、」


「ん?」


「全く関係無いことなんだけど……」


 実に珍しくも、あっ君が罰の悪そうに言い淀んだ。一体どうしたの。





「――二年のクラスから、破損届が……三枚」


「……ん?」


「窓ガラス、花瓶、水槽…………イロイロ遭って、イロイロ浸水」


「……あっ君」


「……はい」


「“イロイロ”? 濁した部分、言ってみようか?」


 あからさまに視線を逸らされたけど、ゼン君は許さないよ。だってあっ君がわざわざ直接来た理由が分かっちゃったんだもん。


「……」


「言ってご覧?」


「……二年のクラスだけど、やったの僕等」


「良いよあっ君、“僕等”なんて言わないで。優しいなぁあっ君は、――で、俺が明日シメ上げなきゃいけないのはだぁれ?」


「……僕とカトウも若干関わったけど、主にユウヤとカイトとシノノメです」


「うん、知ってたよ☆」


 出来るだけ笑顔で言ってあげたんだけど、あっ君は顔を上げてはくれなかった。ふふ、――……はぁ。



 明日やろうと思ってたことがあるのになぁ……、もうやること増えちゃったんですけどォ。


 ……つーか――俺が居ねぇ時に問題起こすなよ馬鹿共が!!!!




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