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47+寒さ際立つスキー林間。/七


「奥様聞きました?」


「えぇ、聞いたわよ奥様」


「昨日ヒコクさん家のアサキ君ったら、人との約束も守らずにすやすやと寝てしまったんですってねぇ?」


「酷いですわよねぇ? ニカイドーさん家のアスカ君は寝てしまっていましたが手紙を残して下さいましたのよ?」


「まぁまぁまぁ! 随分とお優しいお坊ちゃんですこと……!」



「だからごめんって言ってるじゃん」


 おはようございます。朝起きたらカイトがグレ過ぎてて此の上なくすっきり起きてしまったアサキです。

 ……眠かったんだから仕方ないじゃねぇかよ、寝かせてくれたって良いじゃん。


「三時までさ、頑張って反省文書いててさ、寂しくてさ、部屋帰っても寂しいってさ……」


「だからさ、僕が三時まで起きてられる訳ないじゃん」


「でもさ、アスカは手紙書いてくれたってさ」


「眠気MAXの僕が手紙なんか書いたら“遅ぇんだよ屑が、しね”とかになるに決まってるじゃん」


 さっきからカイトがこんな調子で、少しも滑れてません。最終日ってんでフリー滑走なのに、……うわぁ、雪だるま作り始めちゃってるよ此の人。

 ユウヤはアスカ君からの手紙のおかげで元気百倍、其のノリのままカイトに絡んでる所為で余計厄介だよ全く。


「ユウヤー、頭作って」


「良いよ~!」


 初日あれだけスキースキー言ってた奴等がスキーウェア来て何故雪だるま作りだ。三人一組というルールに乗っ取ってるので、僕は二人と一緒に居なければならないのであって。

 僕の件を抜いても……反省文、相当答えたんだなこりゃ。


「る~るるるるる~」


 カイトがこんだけ壊れたのは始めて見たぞ。


「ユウヤ」


「おいさー」


「雪だるま出来上がったら呼んで」


「ほいさー」


 そして僕は出掛けました。

 何処にって? 暇だから近くに居た先生の所。


「先生」


「ん? ……あれ、アサキか……? ……アサキ?」


「そうですよ」


「ゴーグル外せ」


 嗚呼、忘れてた。寒かったんだもん。

 サクライ先生は見張りというか監視というか、何ともふてぶてしい表情で僕を見る。隣のアヤメ先生は何時ものニコニコ顔、しかし何時見ても凸凹コンビな先生達だ。そういえばもう一人は?


「サクライ先生、キクカワ先生は?」


「職務放棄してスキーしてる」


 本当に職務放棄だな。


「アサキ君、君はスキーやらないんですか?」


 隣のニコニコ顔――アヤメ先生が僕に言う。

 黙って雪だるま作成中の二人を指差す。

 先生達、黙って納得。


「何だ、あの陰険な奴等」


「サクライ先生の拷問が効いたんじゃないですかね」


「アヤメ貴様、拷問とは人聞きの悪い。俺は教育的指導をだな」


 そんなに酷かったのか、サクライ先生の反省文を書かせる拷問は。


「まぁ奴等が其処に居るのは見張りやすくて助かるな」


「それは確かに。でも……アサキ君は暇でしょうに……」


「いえ、僕は運動嫌いなんで」


 寧ろ早く帰りたいんだよ。

 サクライ先生は呆気に僕を見て溜息を吐いた、酷いなおい。


「お前ってよ、何でそうやる気無ぇんだよ」


「はい?」


「中学くらいならよ、もっとスキーやってたーい、とか思わないのかよ」


「思いません、あいらぶ家」


「其処まで言ったなら家も英語にしろ」


 自由な言い合いだと自分でも思う。……先生じゃないけど、結局一日しかスキーやってないな僕。三日あったのに何だ此の最短。


「あー君、雪だるさん出来たよー」


「どなたそれ」


 ユウヤがスキー靴をざっくざっく踏み鳴らしてやってきた。雪だるさんってどなた。


「あ、先生達も雪だるさん見て見て」


 ――其処にはスキー板とストックを使った雪だるまが。


「お前等スキーをやる気は皆無なのか」


「えへへ」


 折角のスキー板なのに足にされてしまって……。というか四本もスキー板足に使ってるのかよ、あれ普通に滑っちゃったりすんのかな……。

 そして照れてる様だが褒めてないぞ先生は。


「雪だるまを作ったのは良いんですがね」


「ん、何何アヤちゃん」


「そろそろ帰る時間なので、壊して下さい」


「アヤちゃん薄情者!!!!」


 アヤメ先生は雪だるまを壊せと言っただけで薄情者にされてしまいました。遠くのカイトですらこっちを見ている、……え、雪だるまってそんなに大事……?


「馬鹿野郎、雪だるまなんざスキー場のリフト近くに残せないだろうが」


「でもー……」


「でももかしこもねぇ」


「かしこ!」


「カイリ殴るぞゴラァ!!」


 サクライ先生がキレた……! 遠くのカイトのボケにもツッコめるサクライ先生はやはりツッコミかな。(※どうでも良い思考えですが本人は至って真面目です)

 つーかこのギャグ、昔ユウヤから聞いた。


「ほら、せめてお前等の手で葬ってやれ」


 サクライ先生は最早二人の思考回路に合わせてそう言い、二人は雪だるまの方へと向かった。


「――短い付き合いだったね」


「思い出をありがとう……雪だるさん」


 其処だけ空気が重い。

 帰ってくれないかな、あれ。


「楽しかったよ、また何時か……いや、一年後、銀世界で会おう――」


「また、此の空の下で会えたら……!」


「アサキ、何時終わるんだありゃ」


「心配しなくても平気ですよ、終わりませんから」


 ざっくざっくと二人に歩み寄る。ゴチャゴチャと未だ言っていたから、思いっきり――雪だるさんをキーック!


「「あー!!!!」」


「何時までやってんだよ馬鹿共! 早く行くぞコラ!」


「あ、あ、アサ君の人で無し!」


「人殺し!」


「うっせバーカ! 雪だるまは雪だるまなんだよ!!!!」


 ぐずぐず五月蝿い馬鹿共を引きずってスキー場を後にする僕。


「やっぱあの二人の扱いが一番上手いのはアサキだな」


「みたいですねぇ……。ユウヤが五月蝿い時、借りて良いですか?」


 そんな先生達の話はさておき、スキーの閉講式を終えて僕等は帰りとなった。


 ……やっと終わるか、スキー林間。



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