466+怠惰な夏休み傾向。
「邪魔するよっ!」
「ちーっす、アサキ何処だ」
「あ、ユキちゃんいらっしゃーい!」
「あれ、俺は?」
ユウヤでっす! 朝から洗濯物に精を出してたらユキちゃんとカイト君が遊びに来た。インターフォンが聞こえなかった気がするのはまぁ気付かなかったことにするよ。
「ちなみにアサキだったら未だ寝てるよ」
「あれ、もう昼になるのだがね?」
「夏休みだからね」
「ちなみに気になってたんだがひとつ聞いて良いか?」
「何ーカイト君?」
うちの惰眠マニアが何もなしに午前中に起きる訳が無いよ、暑いとかそういうのも無いのに――クーラー掛かりっぱなしだ――さ。何となくで七時くらいに起きれる俺には何でそんなに寝るのかよく分からないけど。
アサキが起きるまで待つことにした様子の二人に飲み物でも出そうかなとキッチンに向かいながら、カイト君の言葉に耳を傾ける。何を見てるのかな、ちらっと覗いてみたら、カイト君はソファの方を見ている気がした。
「あー、それは気にしなくて良いよ」
「いや気にするだろ、絶対気にするだろ」
「アサ君風に言えば所謂『返事は無いただの屍の様だ』だよ」
「屍っぽいけどな? どっからどう見てもマヒルさんなんだけどな?」
深夜バイトに出てさっき帰って来たただのマヒル兄だし、別に不思議な光景って訳でも無いんだけどなぁ。
「マヒル兄がバイト帰りに部屋まで行く元気が無かっただけの絵図だよ」
「そんなに!? マヒルさんどんだけハードなバイトしてんの!?」
「え、確か薬局だけど」
「薬局でどれだけハードな動きをしているのだろうね?」
「ええと、何だっけ、労働標準……」
「基準な」
「うぉあぁっ! マヒルさん起きてたんすか!?」
「近くでこれだけ騒がれたら起きるってばよ」
「マヒルさんが某忍者風に……」
「気にしないで、マヒル兄寝起き弱いだけだから」
ソファに俯せで死んでいたマヒル兄が起き上がる、本当俺以外朝(昼だけど)弱いったらありゃしないようちの家族。あ、母さんは得意かな? 父さんは家にすら居ないから知らないけど。
「おはよう、マヒル兄」
「おー」
「お疲れの様ですね、部屋で休まれては……というか我々が騒ぎに来てしまったのか、申し訳ありません」
「あー良いよ別に、夏休みだしな。もう回復したし」
「どんだけ素早い回復力っすかそれ」
確かマヒル兄が帰って来たの三時間前くらいなんだけどな……見てみたら確かにけろっとしてる。回復力抜群だよね本当。
「忘れてたけど出掛ける用事あるし、起こしてくれて助かったよ」
「え、出掛けるの? 深夜バイト明けて直ぐで大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、俺に不可能など無い」
「寝起きでマヒルさんがでかく出たぞ」
「人間寛大になるものだね」
まぁ何が一番凄いってマヒル兄がそれ言うと洒落になってないってことかな、俺の兄貴なのに何でこんなにハイスペックなのか弟十七年やってるのに分からないよ。
「……朝から沢山人が居る」
「もう昼だよアサキ!」
「さっさと起きろよお前! 宿題片しに来たのにお前が起きてないとか問題だろ!」
「ユキが居るならユキに聞けよ」
「私はユウヤの淹れてくれる紅茶を飲みに来ただけなのだよアサキ」
「え、そうだったの?」
「じゃあ帰れ」
結局アサ君が起きたの二時過ぎだったけどさ。
賑やかな方がやっぱり良いね。