462+仲良しの二人。
「先パイ先パイお帰りなサーイ!」
「え、あ、誰かと思えばシノ君!?」
「なんか超久し振りだなお前……!」
もう直ぐ夏休みなんだから成績表なんて消えてしまえ、カイリだぜ! 部室に懐かし過ぎる後輩が居て割と真剣にビビった。ツヅネお前最近見てなかったよな。
「何かと忙しくって大変だったんだーい! でも先パイ達修学旅行だのでナツメっちがぼっちなうになっちゃうのは可哀想だから気を遣って出てきたんだっていう本当のような嘘の話ただただ忙しくなくなったから学校来た! だけ!」
「うるせぇな、お前」
「カイ君先パイには言われたくなーい!」
確かに俺は五月蝿いがお前にだけは負けねぇよ。そういうナツメはどうしたと尋ねれば、先程のマシンガントークが帰ってきた。要約すれば後から来るそうな、……それだけ言えよ。
「アサ君とゼン君は生徒会の仕事行っちゃってるし、リョウちゃんも今日は予定あるとかで……久し振りの部活なのに人数少ないね」
広い部室を見て、ユウヤが苦笑する。テスト終わりの部活なんてそんなもんだろとは思うけど――何より俺達は三年だからな――、うちの部は基本ゼン以外暇だから三人とかは滅多に無い。……まぁ、アサキがそこで寝てるくらいのことが通常っていうか。
「そうか、俺達居なくなったら、ツヅネ達二人になるんだな」
先輩達ん時ですら三人居たのに二人って。二人って何だよ。
「勧誘とかしないから仕方ないかもだけど、夏休み明け文化祭だし、……人数多いに越したことはないよね」
「去年は先輩達が居たからな……俺達だけってどうよ」
「頑張るしかないというかオレもしかしたら夏休み後また抜ける気がするというかなんというか、」
「……よく分からんが大変なんだな?」
「いえいえそんなそんな! だからもし抜けることになってもいいように準備くらいは全力で助力しようと思う所存! 夏休み頑張りますっていうかなんていうか!」
ばっと挙手しつつツヅネが元気良く言うのを見
て、ユウヤも俺も何となく笑った。本当に喧しい奴だよな、こいつ。いちいち動作が大きいし、パワーに満ち溢れてる気が…………いや、俺に言われたくないだろうが。
「夏休みなぁ、俺達受験生らしいしどうよユウヤ」
「日々変わらず過ごしております」
「何処の挨拶?」
真顔で季節の挨拶みたいなこと言ってやがる。
「受験生とか全然無自覚だから夏休みはエンジョイするよ」
「それって受験生としてどうなんすかね!」
「シノ君も分かる日が来るよ、来年とか」
「分かりたくねー!! そんな現実逃避しか出来ないような人生オレエンジョイ出来る気がしねぇよ助けてナツメっちー!!」
「――呼んだ……?」
「うおっ、ナツメ何時から!?」
遅くなりました、お帰りなさい、と控え目に挨拶したナツメだが、心臓に悪いから知らぬ間に背後に立つのはやめてくれ。シキもそうだがムラサメ姉弟の特殊スキルはんぱねェよ。
「頑張ってこーぜナツメっち!」
「? ……うん、何が?」
「もしもさ、」
じゃれる二人を笑って見てたら、ユウヤが小さく首を傾げた。
「もしも二人になっちゃっても、ナツメ君とシノ君なら大丈夫だよね」
「ははっ……そうさな」
俺のその返事に、ユウヤも笑ってた。