46+寒さ際立つスキー林間。/禄
『反省文十枚と、朝までロビーで正座。……どっちが良いかお前が決めろ』
と、サクライ先生が僕等の部屋に来てカイトに言ったのは約十五分前の話。
……こうなるこったろうとは思ったよ僕は。
――あの後リフト乗り場近くに突っ込んでリフトを一時運転停止にしたカイトと、坂から落ちて捜索届状態になったユウヤ。どちらも僕がサクライ先生に報告したら、先生は笑顔で「あいつ等しねばいいのに」と呟いた。……二人がケロッとしてたのがより先生の怒りに触れた様だ。
馬鹿カイトは反省した態度皆無だったけど、そそくさと反省文を選んだ様だった。
まぁカイトがこうならユウヤもなんだろうな……。
『俺様が帰って来るまで寝んなよ!』
『アサキ、こいつが帰る事はないから寝ておけ』
とかなんとか言われたが……さて、どうするか。夕飯食って風呂入って、未だ十時だけど部屋の奴等は、
「「寝る」」
「お前達昨日の勢いはどうした!? ……まぁ俺も寝るんだが」
……だしな。
――Prr...
……ん?
何が鳴ってるんだ……嗚呼、携帯だ。と言っても僕のではない、心配性の母さんが使わない父さんの携帯を僕等に持たせたのだ。だからって何故父さんの……。
ユウヤが持って来るはずだったんだけど、
『ユウヤに持たせたら、ヘマった時先公にバレるからアサキが持った方が良いだろ』
というマヒル兄の冷静なツッコミで僕が持つ事に。……にしても誰から? 母さんかな……しかし見た事のない番号だ、とにかく出てみるか。
ピッ
「はい」
『あ、出てくれましたね。こんばんは、アサキ君』
「え……アスカ君?」
意外な人物からの電話だった。
『ご明察。気付いて頂けて何よりです』
「此の番号……ユウヤから?」
『はい、ユウヤを待っている間暇なもので……どうせアサキ君も起きているんでしょう?』
「誰が。僕がカイトなんざ待つ訳ないじゃん」
『でも、寝ないんでしょう?』
……僕はアスカ君に勝てる気がしないね。何故携帯を? と言った僕の質問に、アスカ君は無料料金が余り過ぎてるんです、と笑った。少し抜けているのは確かだ。
『一度聞いてみたかったんだけどさ』
電話越しのアサキ君の声にふと眠気が覚めました。……うわぁ、ざっと一時間話してますよ俺達。一時間しても帰って来ないという事は、本格的にユウヤ反省文にてこずってますね。
『アスカ君って――どうしてユウヤと仲良くなったの?』
アサキ君の質問。刹那の時をおいて俺は笑った。
「変わった質問ですね? そんなの覚えてませ――」
『覚えてる』
「……其の確証は何処から?」
『アスカ君は覚えてるよ、絶対』
……ふふっ、凄いですね貴方は。
「――確かに覚えてますよ、でも――」
『……』
「あまり楽しい話にはなりませんよ?」
『良いよ、ユウヤなんかと仲良く出来るアスカ君は凄いなって思っただけだし』
兄に凄い言い草ですね。
「何故です?」
『欝陶しいじゃん』
「じゃあ、アサキ君は何故カイリ君と仲良くしてるんです?」
『何で……って? カイトが何かあるか……?』
「だって欝陶しいじゃないですか」
「……ふふっ」
『……ははっ』
ユウヤよりも、アサキ君とは息が合う気がしますね。だから――話しても全然平気かと。
「――今度話しますよ。今日はもう遅いし、俺は眠くなっちゃいました」
『……実は僕も相当キテる。やっぱり待ってらんないよ』
「それじゃあ、また今度。お付き合いありがとうございました」
『うん、ユウヤに宜しく』
「はい」
そう言って俺達は電話を切りました。
ユウヤは未だ帰って来る気配はないですし、失礼して先に寝ましょうかね。明日も朝が早いし、体調を崩せば心配を掛けるだけですから――ね。