450+修学旅行で北の大地へ!/1
「飛行機飛行機! でっけぇ飛行機!」
「五月蝿ぇよ騒ぐな」
一緒に居るこっちが恥ずかしい、アサキです。
飛行機がそこそこ沢山並んでる外が物珍しい生徒達が騒ぐ中、そりゃあ騒ぐだろうと思っていたカイトがそりゃあもう騒ぎ出した。
毎回こんな流れな気もするけど、――修学旅行だそうで。
ぴろりーん♪
「何回撮るんだよ」
「何回撮ったって良いだろうが! 空港なんてそう何度も来れるもんじゃねぇしよ!!」
さっきからシャッター音が凄く五月蝿い、ついでにカイトが凄く五月蝿い。周りの生徒と比べても一際五月蝿いので、出来れば横空いてるんで座って貰えませんか? あとシャッター音どうにかなりませんか?
「何だよアサキ、お前空港にテンション上がらない派?」
「朝早過ぎてそれどころじゃないんだよ……」
七時集合とか馬鹿なのしぬの? 片田舎の庶民が張り切り過ぎなんだよ。目が開いてるのは奇跡に近い、電車で行く気だった僕等に『送ってってやろうか?』なんて軽い感じで空港まで送ってくれた兄貴に久方振りに全力で感謝した。けど眠い、目が死ぬ。
抱える荷物に凭れてもう頑張れば寝れるくらいには生き絶え掛けている僕、カイトは言うこと効かないからもう良い放っとく。
まぁ、確かに飛行機なんて代物に乗るのは今日が初めてだが。基本的好奇心なるものを全てユウヤに預けてしまってる所為で全然楽しみじゃない、寧ろ飛行機のお陰で飛行機嫌いになってきた。
「……そういえば、飛行機嫌いといえば……」
「呼んだ?」
「うわあ沸いた」
ふと思い出したそんなこと、一組だと何かと先に移動させられるから未だ居ないと思ってたのに。朝だっていうのに何時ものようににこりと微笑む茶金髪なゼン君が沸いた。
「ゼン君は沸くものじゃないよあっ君」
「ゼン君が沸いたら公害だもんね」
「え、ゼン君公害なの?」
大分。
「で、ゼン君」
飛行機嫌い、とは言ったけど、別にそんな話聞いたことある訳じゃあない。ただ飛行機っていうと――
「……高くないかな、物理的に」
「うん、俺死ぬかも」
――高所恐怖症にはそうですよね。
あくまでも笑顔なゼン君だけど、飛行機では茶々を――主にうちの愚兄が――入れさせないようにしようと誓った。
「着くまで寝てるつもりだから大丈夫よ、隣シギだし」
「あ、そうなんだ」
「たまたまだけどね、何かあったらシギの首締めるから大丈夫だよ」
それは何が大丈夫なんだろうか。
「――一組の皆さん、そろそろ機内に行きますのでさっさと並んで下さい」
「っと、ハヤサカ呼んでるよー」
「うん。カイト、行くぞ」
「おー、あっ、飛んでる飛行機! やっべぇテンション上がいたたたたアサキ痛い分かった行くからちゃんと行くから指の小指だけを引っ張んな折れるううううう!!!!」
余計五月蝿くなったけれど、空港の喧騒には敵わないから問題無い。
そのままカイトを引っ張りつつ、じゃ、とゼン君に手を挙げれば、
「じゃね、また向こうで」
と、笑顔で手を振られた。
――最後に小さく「生きて着けたら」とか聞こえたけど、ゼン君、それただの呪詛にしか聞こえないからね。
修学旅行突入。