448+日食についての勉強。
「金環日食って、結局何だったんだ?」
「アンタ、よく分からないまま見てたの……?」
「おう」
アサキです、一組です。カイトが今日の朝の話題を持ち出して、カトウに呆れられている。
「普通の日食と何が違うんだよ」
「普通の日食……アンタにとっての普通の日食って何よ」
「……」
馬鹿は何処の馬鹿も同じらしく、朝から日食日食と騒いだんだろう。ちなみに僕は寝てたから知らん、だってこの前薬局かどっかで日食グラスっての? 八百円くらいで売ってたんだよ、高いよ、誰が買うんだよ。――ユウヤが買ってたけども。
「だってよ、テレビも皆も金環金環って……キンカンって何、薬?」
それは別物だ。そしてこっちを見るな。
「金環は金環でしょ、金の環」
「わ? ……輪っか?」
こいつ何で首傾げてんの? 環だから金環なんだよね、というか見たんだよなお前。カトウに「だよね……?」と視線を送ったら、「えぇ! 凄く綺麗だったわ!」ときらっきらした視線が帰ってきた。……冗談という訳じゃなかったけど、君も見てたんですね。
「え、え、じゃあアレ、金環じゃない日食って何だよ」
「えっと……」
「皆既日食のこと言ってる?」
「「それ!」」
声を合わせないで下さい怖い。
「で、皆既日食ってのとの違いは?」
「お前全部僕に訊く気か」
「知ってんならその方が早くね?」
自分で調べろよ。
とは思うものの、時間も無いし簡単に説明してやることに。
「――全部隠れたら皆既日食、隠れなかったら金環日食、以上」
よし、説明終わった。ので寝かせて下さいと言わんばかりに机に伏せったら、「以上じゃねぇよ!?」とカイトに叩き起こされた。
「何だよカイト、僕はもう眠いんだ」
「俺何処のパト○ッシュだよ!」
狙ってねぇよ。
「何でそうやって、隠れたり隠れなかったりすんだよ」
「直径の差」
「……リョウコ、太陽と月って……?」
「太陽の方が凄く大きいわよ」
「どういうことだ……!?」
「馬鹿だろ、お前もう馬鹿だろ」
知ってたけど馬鹿だろもう、きょどり過ぎて吹き出しそうになったわ。
「僕等から見たらの話だよ」
「……あ、そういうことね」
「お前達、俺様を放って話を進めないように!!」
良いよ放っとくよ。
――凄く落ち込んだので仕方なく図を交えて説明をすること五分、やっと理解したので次の話に。
「月がその、地球から見えるだけの太陽の直径を上回るか否かっつーことか」
「そんな感じ」
「じゃ、何で被るんだ?」
「は?」
「いや、毎回毎回被るなら分かるけど、たまにしか日食起こんねぇじゃん」
「お前しねば良いのに」
「何でだ!? 解せねぇ!」
呆れを越して疲れた。本当に寝て良いだろうかこれ。
「それくらいなら私でも分かるわよ」
「なぬ……」
「日食って、別にたまにしか起きてない訳じゃないのよね?」
「ナンダッテ」
理系分野はカトウの十八番だからな、カイトが片言になったことは最早無視だ無視。
「見えないだけなのよ、ほら、少し前にあった日食、私達の地域からだと部分的にしか欠けなかったじゃない?」
「……あー……何時だ?」
「中学ん時」
休みの日だった気がする、寝てたらユウヤに叩き起こされたんじゃなかっただろうか。
「場所によっては完全に隠れちゃう、見えるか見えないかの差なのよね」
「カトウ流石」
「へっ!? ま、まぁこれくらいは当たり前の知識じゃないかしら!!!!」
「リョウコ、それじゃただの高飛車んだ」
「……?」
よく分からないがカトウが高飛車になった様子、どうしたんだ。
「けどまぁ……だ円軌道の法則とか、昔の人は何も知らなかった訳で、随分ビビったらしいよね」
「不吉の象徴とかだったかしら? 今じゃ沢山の人がお金叩いてまで見てるっていうのにね」
君もな。
「だ円軌道の法則って何だ」
「おいカイト、お前物理選択だろ」
大概にしろよお前。
「もっと詳しく話せるけど、授業始まるからもう良いよね」
「――というか、ヒコクアサキは何でそんなに詳しいの?」
「マヒルに聞いた」
「そろそろ本格的にマヒルさんについての調査報告書が必要な気がしてきたぞ俺」