439+春休み出勤。
「――でもさぁ、結局人間って一人なんだよね」
「「……」」
春休みの部室。ゼン君の発言に俺とカイト君が固まった。ユウヤでっす! えっと、……何の話してたんだっけ?
「いや、だからあれでしょ。家族がどうの話してたからさ?」
にっこりと笑顔を浮かべてゼン君が言えば、ああそうかと俺とカイト君がほっとする。生徒会のお仕事してたから俺達の話なんて聞いてないかと思った。……要するに、俺とカイト君が此処に居る意味特に無いってことかな! ――まぁ何で居るかって、アサ君が来てるからなんだけど――。
この前してた家族の話、ふと思い出して話してたんだけど。何だかゼン君は淡白である。
「親だろうと何だろうと、所詮は他人だしねぇ」
「えー、でも家族に会いたくないとか俺には考えられないよぅ」
「ブラコンは黙っとれ」
ブラコンじゃな……くはないけども! カイト君に笑われて、俺はとりあえずアサ君を見てみる。
「……? 何……?」
「今の話全く聞いてなかったことは分かったよアサ君!」
興味無しかお前は。
「カイト君だって家族に会いたいって思うよね!」
「え? あぁ、まぁ其れなりに?」
「カイ君ん家って単身赴任だっけ」
「そ、……ゼンとこは?」
「田舎に隠居なう」
隠居する程都会かな此処ら辺。微妙な顔してゼン君見てたら、何でか楽しそうに語って下さった。
「農業したいって理由だけで田舎引っ込む辺りが馬鹿みたいだよね、お陰であの阿呆と一時期二人暮らしとか。しかも結婚だなんて世迷い言にしか聞こえなかったことし出してさぁ、一人暮らしパラダイスかと思いきや義兄さんが外国で、子供は日本で育てたいだぁ? ――本当もう末永くおなくなりになられればいいのに」
――最後だけ真顔だったけど。
「ゼンって……本当姉ちゃん好きくねぇのな」
「ったり前でしょ普通! カイ君もお姉さん居るでしょう? 何か無ぇの!?」
「え……いや、俺は別に」
「ブラコンシスコンオンパレードかちっきしょう!!」
「ゼン君どうどう」
荒んでる、ゼン君が珍しく荒んでる。確かに家族のことあんまり好きじゃないって人のが学生とかだと多いイメージだけど、俺の周りは案外大切にする人のが多いかなぁ。
「でも、ゼン君だってどんなに嫌いでも居なきゃ良かったなんて思わないでしょ?」
「え、居なくて良いよ」
「あっさり!?」
其のキョトン顔は何だい君、どうしたんだい君……!
「まぁでも、居る以上仕方ないとは思ってるけどね。アレが居なかったら、なんて仮定な話するだけ無駄無駄」
ゼン君はひらひらと手を舞わせて言えば、そのまま書類の方に戻っていった。ある意味貴重なご意見というか……そういう価値観はアサキそっくりだなぁなんて。
「でも、親も兄弟も、仲良しに越したことは無ぇよな」
「だねー」
結局何もしていない俺達はそんな極論にたどり着き、いそいそとゲームに向かって行ったのでした。もう一回アサ君を見たけど今度はガンスルーですガンスルー、無視は酷いと思うよお兄ちゃん。