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437+暦と現実は大抵反してます。

「暦の上ではもう春になるが、未だ未だ寒い日が続くね!」


 アサキです、久し振りに会ったユキが何処かの社交辞令みたいなことを述べている。春休みの夕方頃、ふとユキが来訪した。


「寒いっちゃあ寒いね」


「夜なんて未だ未だ冬そのものだからね……アサキに心配は無用だと思うが、風邪を引かぬように気を付けたまえ」


「うん、――そっちの奴に言ってくれ」


 現在位置は僕の部屋、そしてユキの発言を聞いて僕が見上げたのは。


「……」


「おいこらシラ切り通せると思ってんのか馬鹿野郎」


「……病人は労るべきだよアサ君!」


 馬鹿は引かないはずなのに、何でか寝込んだ阿呆が其処に居た。馬鹿で阿呆って本当に救いようが無い。ちなみに何でかとか言ったけど、昨日降った雨が原因なのは知ってる。おちおち降られたりするから風邪引くんだよ。


「はいはいお大事に」


「心の込め方って知ってる?」


「ははっ、其れくらいの元気があるのなら大丈夫じゃないのかい?」


 元気そうには見えるが、熱が其れなりにあるらしく。歩かせるとそのままぶっ倒れるからベッドに張り付け状態という訳。運ぶの面倒だから、マヒル出掛けるから僕しか居ないし。


「というかさ、寝込んでる病人が居る部屋に何で居るの?」


「下寒いから」


「経費削減ってやつだね!」


「移るとか考えないのお二人さん……」


「移したら埋める」


「あー、埋められるのは俺なんだろうなぁ……」


 良く分かってるじゃねぇか。


「まぁ俺は楽しいから良いんだけどさ」


「寝ろよ」


「昼間からなんてアサ君じゃないんだから寝れないし、友達居るとこでとか寝たくな――ふあぁ」


 ぎゃあぎゃあと騒ぐユウヤは一人で騒いで一人で勝手にぶっ倒れた。何やら奇妙な声が聞こえたが、座ってる僕等には姿が消えたくらいにしか見えない。


「ユウヤ、大丈夫かい?」


「だいじょぶー、ふらっとしただけー。……そういえばー、今日カイト君居ないんだね」


 熱だけの時は確かにふらふらする、なんてことはどうでも良いが。ユウヤはそのまま横になったようだが寝る気はやはり無いらしい、そんなことを問うた。


「ユキちゃんとアサ君が居たら何かカイト君も居るイメージ」


「そう……?」


「ふふっ、アサキに会いに来る時は同時にカイリにも私は声を掛けるからね」


 そうだったのか、相変わらず一物ありそうな笑い方だな。


「まぁしかし今日は予定があるらしくてね、残念なことだよ」


「俺的にはカイト君に予定なんてものがあったことに驚きだよ」


「ユウヤ、其れはカイリに失礼じゃないかい?」


「……」


「そしてアサキ、君も同じことを考えていたようだね!」


 だってあいつに予定なんて滅多なことじゃないと聞かないから……! ユキに苦笑交じりに指摘され、つい視線を虚空に投げた僕。


「カイリだって歴とした一個人なのだから、予定のひとつやふたつあってもおかしくないさ、そうだろう?」


「まぁ……」


「――ただ、通常より極端に少ないというだけで」


「ユキちゃん其れ真顔で言っちゃうんだ」


 ふらふらな病人ユウヤをも起き上がらせてしまう真顔ボケをかまして、ユキは満足げに笑った。










「ところでユキ、夕方になんか来て何の用なの」


「うん? 買い物帰りに寄っただけだよ」


 おいこら暇人、真っ直ぐ帰れよ。





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