43+寒さ際立つスキー林間。/参
「“消灯時間は十時、其れ以降は部屋からの外出は禁じ、次の日の事を考えて速やかに睡眠を摂りましょう”」
「うわ、面倒ー」
「“因みに俺等教師が寝るのは十二時くらいだから、其れ以降だったら何しても構わないから其れまでは大人しくしている様に”。はい、此れが班長会議の内容」
実にサクライ先生らしい。
「さっすがサックラ先生! よし、じゃあ十二時まで寝ようぜ」
「嫌だよ其の二時間睡眠」
こんばんは、勿論アサキです。ミトウからそんな会議内容を聞いて、カイトが五月蝿いです。やっと寝れるんだから寝ようよ……寧ろ眠いよ……。
「何だよアサキー、お前はスキー林間だってのに易々と眠りに就く気なのかよー」
「十一時」
「何が」
「普段の就寝時間」
「「早」」
パジャマ姿でやいのやいのやっているハルナとチアキが唖然とツッコミを入れた。何だよ、一般人ナメんな。
「にしたって一時間ロスタイムあるじゃん、其処は二時間寝て後は遊ぼうぜー?」
「さーんせー!」
「俺もー!」
「はい、ハジメとタクと俺で三対二で起きてる決定ー」
「あれ、俺と意見は聞かないんだ」
「セイタ軍曹はどうせすぐ寝ちゃうタイプだろ?」
「俺は朝まで某動画サイトでアニメとかを見ているかゲームを攻略してるタイプだ」
「「ヲタクかよ」」
「ハルナ、チアキ! 俺はヲタクじゃないぞ!? 不眠症で大変なだけなんだ!!」
「ヲータークー」
「カイトまで……参謀、君はどう思う……?」
「ぐっじょぶ」
「なら良いか」
セイタは軽いパソヲタ気味な事が今解明された。少し親近感が沸いた。
「でも、アサキが寝たいっていうなら寝かせてやれば良いじゃないか」
「何を言う軍曹! 皆で騒ぐからスキー林間なんだろうがばーか!!」
「「そーだそーだ!」」
「だ、だが明日だってあるし、寧ろ今日はスキーやってな――」
「それは禁句だ!」
「「そーだそーだ!」」
何やってんだこいつ等。
未だ消灯まで三十分あるけど、僕は一人毛布に包まってぬくぬくる(※無理矢理動詞シリーズ)。
「……ねむ」
「あー、其れあったかそう」
「む」
「俺もやる」
論議は終わったらしい、相変わらず熱しやすく冷めやすい連中だ。カイトは隣の毛布に包まってみている、何か楽しそう。
「わふー」
「……」
げしっ
何か悦る顔にムカついたから毛布から出て蹴り飛ばしました。
「あ、俺も」
「俺も俺も」
「お前達、容赦ないな……」
「わふわふー」
次々とげしげし蹴られるカイトだが、毛布のお蔭で痛くない様だ。何か余計ムカつくから――上から敷布団を全てかけてやった。
「――」
何言ってるか聞こえなくなったから良いや。このままにしておこう。
「……にしても、せっかくのスキーなのにスキーしねぇとかマジ最悪ー」
「本当だよなー。明日出来るといいんだけど……」
そんなハルナとチアキの台詞に外を見る。吹雪は止んだけど雪が降り止む様子はない。……まぁ唯の雪ならやるんじゃないかな。
「アサキとカイト、Sだよな?」
「うん、チアキは?」
「α。セイタとハジメもそうだったよな?」
無言の首肯。
「僕もαが良かったな……」
「何何!? 俺達と一緒が良かっ――」
「黙れ愚民一等兵」
「はい」
「ま、明日まで蕎麦作りになることはないだろうなぁ」
「蕎麦作りだったら俺グレて良い?」
「つか、もう消灯になるじゃん、タクちゃんもう眠ーい」
「お前キモーい」
「五月蝿ーい」
久しぶりな平和な会話。
寧ろチアキも眠いってんならもう寝ようよ……。因みに途中からチアキとハルナの会話です。
「――」
「カイト、喋るなら布団から出て来い」
聞こえない。
もぞもぞ動いてカイトが出て来る、お疲れ。
「じゃあ今日は寝るか」
――との事で。
始めからそう言ってくれりゃあ良いんだよ、眠いんだから僕は。
時刻も消灯時間ですし、今日は寝ましょう、明日に向けて。
では。
「アサキ、誰に言ってんの?」
「お前まで心を読むなよミトウ」