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421+考えてること分かりゃしない。


 よう、マヒルだ。

 といっても時刻は夜、もう皆寝静まっちまってる十一時過ぎ。弟達は相変わらず、就寝時間が早いんだよな――まぁ、俺も人のこと言えないけど――。


「……はぁ」


 冬だ、真冬だ、冬至も近付いている。大学も無事卒業出来るだけの単位も取ってあるし……ある、のに。


 言えてない、未だ両親に言えてないことが、ある。

 我ながらさっきから溜息しか零れなくて、ほとほと困る。そりゃ話せる時間が少ししか無いのとか、そういうのを理由にすれば良いかもしれないけど、此れはただ、俺に言い出す勇気が無いだけ、か。いや、多分他からすれば些細なことだと思うぜ? あの人達からしても……、多分、大幅に。


 俺が言い慣れていないだけだ、……自分の意思のようなものを。




「……あら、マヒル?」


「あ、……お帰り」


「うん、ただいま」


 溜息ばかり吐いてたら母さんが帰って来た。いや、待ってたんだから帰って来てくれて良いんだけど。


「何か話でもあるの?」


「え……」


 着ていたコートを脱ぎ捨てながら母さんがそう言うから、思わず固まってしまったけれど。


「? アサちゃんとユウくんのことじゃなくて?」


「あ、嗚呼そっちね、……いや、二人は今日も元気ですが」


 俺が双子の話しかしない人間だと思ったかこの野郎。……あながち外れちゃいないが。けど違う、今回ばかりは違うんだ。だから……なんか言い辛いんだけどさ。


「元気なのは良いことよね! ……じゃなくて、どうしたのよ、そんな改まって」


「改まっちゃいないっつの」


 本当はずっと前から言わなきゃと思ってたんだが、如何せん時間やタイミングが合わなくて師走にまで引き摺っちまった訳だが。


「対した話じゃないんだけどな? ……俺、来年卒業なんだけど」


「あら、もうそんな経った?」


 ええ経ちましたよ、四年経ちましたよ馬鹿野郎。あら、じゃねぇよ。


「……」


「……マヒル?」


「俺、……卒業、しないというか……しない」


「…………うん?」


 ごめんもう一回と言われ、改めて一言。


「大学に残りたいんだけど、って……そんだけ」


 そう言い直して、母さんの様子を伺う。我ながら大分誤解を生む言い方をしたような気もするけど、……うん、母さんの頭じゃなんか許容量超えてんな、こりゃ。


「時間ある時父さんにも話すし、だから――」


「――い、良いんじゃないかな!?」


 タイムラグを経て、母さんからの上擦った返答に、今度は俺の許容量を超えた。


「あ、ごめんね? だからあれよ、マヒルがやりたいことするのが一番だってお母さん思うの!」


「は? え?」


「細かいことは其れこそシンヤ君に話してくれれば良いわよ? お母さんはマヒルの味方だから!!!!」


 じゃ、お風呂入る! そう言って、何処かるんるんな感じで母さんは言ってしまった。……何か喜ばせるようなこと言ったか……俺。個人的には、もっと前に言わなきゃだったことだから言いにくかったのに。



 機嫌が良かったんだ、……そういうことにしとくか。適当な解決策を考えて、俺は深く深く溜息を吐いた。





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