417+無言の理由。/放課後
アサキだけど。
時はすっ飛んで放課後、結局ゼン君は一日あのままだった。昼休みにフドウに話を聞いたところ、休み前日からあんな調子だったらしい。一体何があったってんだ。
テスト前で下校する生徒が多い中、ゼン君は未だクラスの端の席で窓の外を眺めている。
「……怒ってる、みたいじゃなさそうだな」
「そうみたい」
朝のメンツで廊下から再びクラスを覗きつつ、カイトとムラサメがそう言った。
朝は怒っているように感じていた(らしい)気配がどうやらそうでも無さそうだと悟った面々は、じゃあどうしたのだろうかと様子を伺っている。……僕からしてみれば、朝からゼン君は多分――
「あ、」
カイトの声でクラスを見る、するとゼン君は自分の携帯を見て、慌てた様子は無いけれど急ぐようにクラスを飛び出して行った。
「お、追うか?」
「戻ってくるのを待てば良いのではないかしら」
「其れが良いだろう」
ゆっくりと頷く女子二人を見て、カイト共々クラスでゼン君を待つことにした。
「ストレートフラッシュ」
「なぁアサキ、お前本当どうなってんだ? なぁどうなってんだ?」
「アサキは本当にトランプの申し子だな」
「そんな申し子は嫌だ」
ゼン君だよ、メールを待っていたのに電話が掛かってきてクラスを出たのは既に三十分以上前。電話を終えてクラスに戻ったら、何でかトランプ中な友人達が居た。
「あ、ゼン」
「……皆どしたの?」
思い出すと、今日皆と全く言葉を交わしていなかった気がする。っていうか喋ったっけ俺、あれ?
記憶に無いままそう尋ねたら、皆がほっと(あっ君は除く)したように俺を見た。ええと……どしたの?
「お前が何か何時もと違ぇから、皆で心配してたんだよ!」
「え」
「話し掛け辛いオーラ発してたから声は掛けられなかった、すまない」
「わたし達の勘違いなら、其れは其れで良いのだけれど」
……自分がそんなに分かりやすいオーラ発してたなんてゼン君びっくりだよ。
三人の視線を一斉に受け止めながら言うか言うまいか悩んでいたら。
「――で?」
机上のトランプを集めたあっ君が其れを切りつつ俺を見て、
「心配事は、片付いたの?」
と、見事に心中を悟られていたことに気付かされる問いを発した。他の三人はそうなの? とでも言う様に首を傾げただけだったけれど、さもつまらないものを見るように――言っちゃ悪いけど、よく考えたらあっ君は何時もそんなだった――そう首を傾げたあっ君。
別に言いたくないなら言わなくて良いけど、其れだけ言えばトランプを配り出して、再びポーカーと洒落込み出した。
言いたくないことでは無いけれど。言う程のことでは無いと判断した俺は、心配してくれていた風の皆にお礼を言ってから、急いで教室を後にした。
早く帰って、ミヤに教えてあげないといけないことがあるんだ。