415+十月末に文化祭。/5
結果から言おう、要するに死ぬかと思ったアサキです。
嗚呼来たさ、来てやったさお化け屋敷。生徒会室前までムラサメとカトウに声を掛けに行ってから――二人は全力で拒否をしたが、シノノメのマシンガンには敵わなかった――長い行列を並ぶのかと思いきや、先にドウモトと並んでいたコガネイが「あ、アサキー、シギが未だ来ないから此処譲るよー。だからまた後で一緒に入ってなー」と列を譲られ、四人で入れば無論全力で拒否した二人が恐ろしくビビりで(カトウがこうなのは知っていたことだが)なかなか進めなかった。
『一枚足りないー』
『あ、フウカ先ぱ――』
『きゃあああああああああ!!!!!!!!』
『わーいフウカ先輩怖ーい☆』
『――……』
あからさまに怖がっていないシノノメはさておき、耳元でカトウに叫ばれ鼓膜が臨終寸前だったのと、ムラサメがザ・硬直で大変だった。おいムラサメ、シノノメに抱き着かれている場合じゃないぞ、動け、お前一番背が高いんだから運べないぞ。というかフウカ先輩の大根役者っぷりも流石だが、其れにビビったお前等もどうなんだええ……!
出口から出る頃にはカトウは叫び疲れ、ムラサメはげっそりしていた。仕事後にお疲れなことだ、だがしかし今お前等が何を言っても僕の鼓膜は震えん、フリーズ中でぐわんぐわんしている。
お化け屋敷に満足した様子なシノノメはそのままムラサメに押し付け、カトウはエノミヤのところに行くからとそのまま別れた。さっきコガネイに後で一緒に入れと言われたことを思い出し、律儀にも電話を入れれば茶道部に居ると言われ仕方なく行ってやった僕。普通に茶ぁしばいている面々を発見し何してやがると思ったが、そういやフドウは茶道部だと毎度忘れる事項に溜息を吐く。
『お化け屋敷より美味しいものの方がいいよなーってことでこうなったんだー』
『あー君此の抹茶美味しいよお! あー君もほらほら!』
『え、えへへ……あ、今やりますね!』
どうでもいいがお前等、茶室で騒ぐなばかやろう。
其れで済んでいれば僕とてどうにも思わなかったが此のドジ野郎、他二人には上手く出来た癖に僕の時だけトチりやがって抹茶を零し、慌てた結果そのままお湯を被り、あれ此れどういうこと? の勢いで泣き出し、そして保護者(ゼン君)に連絡を入れると大忙しだった。
謝り倒しなフドウだが僕は別に被害を被っちゃいないから怒ったり怒ったり怒ったりは――少ししかしてない訳で謝られる筋合いは無いのだが、平謝りロボットと化したフドウはしょぼんとしながら僕に謝り続け、其れが逆に僕の怒りの沸点を凌駕し、イロイロ大変だった。
で、今に至る。
「文化祭、面倒臭ぇ……」
「まぁアサキ、此れでも飲んで元気出せ」
「ありがと」
僕は二組の喫茶店にやって来ていた。喫茶店なのだから静かだし、此処ならタダ飲みし放題だからな。(※お代はキッチリユウヤに請求されます)
一人で来たのだが、前の席にはカイトが座っている、バーテン姿で。要するに担当時間なんだろう、何故其処に座ったよお前。
「お疲れなこったなぁ、……そういや会うの朝以来か?」
「疲れた、死ぬ」
カイトに会うのは確かに朝以来だ、貰ったコーラを飲みつつ机に伏せる。どうだ器用だろう。
「何か食うか?」
「要らん」
「何しに来たお前」
「疲れた」
「嗚呼そうかい」
もう文化祭も僅かで終わる、一日疲れただけで終わっただと。
ぐでる僕を見てけらけらと楽しそうなカイトが暇なのも、お客さんは人が減ってきたのが理由だろう。其処を狙ったという訳では無いが、確かに一人で居るよりはマシか、変な客扱いされるだろう一人なんて。疲れて頭回ってない自分に、僕は相変わらずに溜息を吐いた。
「随分楽しんだみてぇじゃん?」
「うるせぇ、何処がだ」
「全体的に見てだぜ?」
「うるせぇ黙っとけおかわり」
「まさか過ぎるぞお前」
そう言いつつもおかわりを持って来てくれたので僕は遠慮なく其れを受け取った。ふ、なかなか使えるバーテンじゃないか。――口さえ開かなければ。
「ようアサキ」
「あ?」
「――お疲れさん」
「……うるせぇ」
人付き合いは確かに疲れる、畜生、絶対認めない。
なんやかんやでカイト氏やユウヤといるのは楽だと気付いたそんな文化祭でした。