411+十月末に文化祭。/1
学校内が一段と騒がしいことに虫酸が走ります、アサキです。
「トリックオアトリート!」
「……どうぞ」
目の前で楽しそうにそう言った少年に持っていたお菓子を与える、……ふむ、子供とは本当に奇なり。お菓子ひとつできゃらきゃらと騒ぎやがる。
そんなことを僕が考えているなぞ知らない周りは、ざわざわと騒ぎ散らして僕を不快にさせている。
――はい、今日は文化祭です。
文化祭がハロウィン近くにやるならお菓子でも配っておきゃよくね? と言ったのはサチト先輩で、其の配るお菓子を持って来たのは無論フウカ先輩。仮装して配るなんて面倒な案を出して下さったのはハヤ先輩なのだが、ハヤ先輩で無かったら僕が其の案を呑むはずがない。向こうでシノノメがミラクルハイテンションなドラキュラ姿を晒しているが……あのテンションに着いていけない人が僕に声を掛ける訳かそうか。
無意味な生徒会選挙も終わり、代替えは済みはしたんだが。どうやらあな三人は卒業まで部活にも、委員会にも参加してくれる様子。しょっちゅうバイトに消える生徒会長殿も暫くは助かるだろうよ。
「トリックあんどトリートお!」
「はいは……何してんだお前」
また餓鬼が来た、と慣れた作業に移ろうとしてたら。あんどって何だあんどって、菓子は頂くが悪戯も欠かせねぇってか、なウェイトレスことドウモトが現れた。
「お疲れ様ね、私達は休憩時間なの」
の、隣には万年無気配なムラサメ姉も居て、此方は普通の制服姿。……まぁ、うちのクラスはアイス売ってるだけだしな。
「他の皆さんは?」
「最初は僕とあいつだけ、後は出払ってる」
「そう」
ムラサメは数度頷いてから、じっ、と向こう――シノノメを見つめる。
「はいはいはーい! 合言葉を言わないとドラキュラさんは皆にあれやこれや悪戯をしかけちゃうよん! っていうか普通逆じゃね? ドラキュラは受け取る側じゃね? とか言ったら駄目だかんねー!!!!」
「――……元気ね」
「弟の友達だぞ」
「……仲良くやれているのかしら」
こんな時まで姉の不安は募る訳か、大変だな。
「という訳でアサキ君、」
「ん」
「――トリックユアトリート」
「どういうことだ」
「あなたのお菓子をぶん投げます」
「ぶん投げるのが悪戯ってか? ええ投げるってか?」
真顔でボケをかますな、という訳ってどういう訳だ、何なんだどうだと言うんだ……!
「まぁまぁあー君! テナ達にもお菓子ちょおだいっ!」
「ほらよ、持ってけ泥棒」
「こそ泥で構わないわ、所詮私達はお菓子を掠め取るこそ泥風情……」
ムラサメのテンションが文化祭ということで地味に上がっていることは分かった、うん。
「というかあー君は仮装して配らないのお?」
「何を言う、一般人Bの仮装中ではないか」
「Aは誰なの?」
「多分ハヤ先輩」
面倒なことなんて、僕自身がやる訳ないだろ。