41+寒さ際立つスキー林間。/壱
白い雪、白い空、何処までも白い視界。
「なぁアサキ」
「何だカイト」
「俺達、スキーに来たんだよな……?」
「其の通りだ」
「じゃあさ――」
会話の通りスキーにやって来た僕等。長いバス移動を終えて――僕は爆睡だから知らない――ホテルのロビーにて外を見る僕等。スキーのウェアは着てません、だって――
ゴー――――――……
「な・ん・で、外吹雪なんだよ!!!!」
文字通り“ゴー”っと音を立てて吹きすさぶ雪があるから。そう、外は雪を越えて吹雪なんだよ。
「天候にいちゃもん付けるなよ」
「コラ二人、とっとと部屋行って地下に集まれ」
「あ、サックラせんせー! スキー出来ないじゃん! 何で吹雪なんだよー!」
「うっせ、天候にいちゃもん付けるな」
そして俺はサクライだ、とクールにも反論をしたサクライ先生。何やら吹雪で今日はスキーが出来ないらしい、……よっしゃあ。あ、聞いてりゃ分かる通りアサキです。
「お前等の部屋は上だろうが、とっとと行け」
「「はーい」」
ふむ、このスポーツ少年は余程スキーをやりたかったんだと見える。別に良いじゃないかスキーなんて、僕は好きくないし。
ふて腐れながらカツンカツン階段を鳴らすカイトはドラムバックを引きずって上る、重くないか其れ。
「明日があるじゃん」
「へん! 俺のコンディション的にゃ今日からスキーだったんだよ! 何が楽しくて長時間乗って来たバスの後に蕎麦作り体験しなきゃいけない訳!?」
「良いだろ別に、僕蕎麦好きだし」
「そういう訳じゃねぇんだよ!!」
五月蝿いなこいつ。とりあえず部屋についた僕等は荷物を下ろして其処に待機。時間なんて何時か来るさ、嗚呼帰りたい。
「じゃ、俺班長会議いってくるなー」
「え、セイタって班長だったん?」
「カイト、書類に勝手に書いたお前が言うな」
「アサキがやった」
「人に押し付けるなよ!?」
「悪かったと思ってる」
「嘘付け」
とかなんとか言ってミトウは行った、と。
「ちなみにアサキは保健だから」
「何で僕が」
「一番似合わなそうだと思ったから」
唯の嫌がらせかよ。
という感じで、僕等の班はミトウこと軍曹――逆って言うな――と、
「うえーい! 吹雪ー!!」
「雪国育ち万ざーい!!」
何やらハイテンションなハルナとチアキと……って何が雪国育ちなんだよ。其れと僕等の五人部屋。何気にこいつ等とはつるむな……とか思った僕は何か負けな気がするので何も言わない。
「――よし、暇だから遊び行ってくる!」
「へーい!!」
「切替早いなお前等」
雪国がどうとか言ってたと思ったらもう暇になったのかよ、早いよ、もっと雪国について語ってればいいじゃないかよ。
「「……」」
暇だ。
いきなり二人になったらそりゃ見るものもなくなって暇でしょうが。
「よし、じゃあ菓子でも食いますか」
「早いが其れで良いか」
暇になったら何か食え。
カイトの案に乗って僕は鞄からお菓子(※二千五百円相当)を取り出した。絶対多い。
さくさくさくさくさくさくさく
「うまーい」
「お菓子だもん」
さくさくさくさくさくさくさく
「さくさくスナック」
「唯のポテトチップスなんだけど」
さくさくさくさくさくさくさくさくさくさくさくさくさくさくさく
「「ご馳走様」」
はい其れで更に暇。
……流石にこの数十分でもっと食うとかしねぇよ。
と、其処に。
コンコン
「はーい」
「失礼しますね」
ノック音と共にやって来たのは久々に見る――アスカ君。……や、名前忘れてたとかないから、うん。
「あー、ユウヤのお友達じゃん、そして俺のお友達でもある……!」
勝手だ。
「はい、そうですね」
ニコリと笑ったアスカ君には後光が差している様に見える。すっげー。
「アスカ君、来れたんだね」
「はい、お蔭様で」
熱が下がったので、と心底嬉しそうに笑うアスカ君。実は腹黒なのに今回ばかりは本当に嬉しいみたいだ。というかユウヤが激テンションハイで居たから来たとは思ってたけど。
「でも今日は蕎麦作りと言いますから、スキーはおじゃんの様ですがね」
「そーなんだよあっすー!」
誰だよ。
「此の俺様カイト様はスキーなコンディションだったにも関わらず蕎麦作りだなんて……!!」
「お前だけだよそんなスキーに執着してんのは」
「いえ、もう一人……」
……うん? もう一人……?
アスカ君はベッドに乗り出して孤高に語るカイトを尻目におずおずと述べた。
――脳裏に浮かぶは一人の身内。
「アスカ君」
「はい」
「行くか」
「是非」
スタンドアップ。
「何処だ」
「ロビーです」
ウォーキング。
そしてカイトを置き去りに僕等は部屋を出た。
「スキーやーりーたーいー!!」
「仕方ないじゃないか。吹雪なんだよ? こんな中行ったら流石のユウヤも死んじゃうって」
「分かってるよあーや先生! でもでも何でこんなにこんななのさー!!!!」
はい案の定。
ロビーに着いたらアヤメ先生に向かって無駄に抗議を繰り広げるユウヤが居た。
――とりあえず飛び蹴りしておいた。
「オラァ!!」
「ぐはッ!!!!」
「元気ですね」
よし命中。
はっはっはと笑うアスカ君はやっぱり腹黒いと思う。
「公共のホテルのロビーで騒ぐな、みっともない」
「こ、公共のロビーで兄に飛び蹴りを喰らわすアサ君に言われたくな――」
「うるせぇカス」
踏み。
「うひゃ!」
「アスカ君、アサキ君を連れて来てくれて助かったよ」
「いえいえ、ユウヤが騒ぎ出したのを止められるのはアサキ君だけですから」
笑顔でカオスな会話が横で繰り広げられているが、僕は全く気にしない。其れどころか本当邪魔だから、とにかく此れをとっとと蕎麦作り会場の現場にでも運んでしまおう。
「ほら行くぞー」
「ま、待ってアサく……アサキ! 痛ッ!! ちょ、アサキ其れはゴミじゃないんだよ!? お兄ちゃんの右腕!!」
「知らん、僕には見分けつかないぜ。アスカ君も行こ」
「はーい」
あれ? ゴミとユウヤって同音異義ならぬ異音同義語じゃなかったっけ?
僕はそんな事を考えつつ、ニッコニコアスカ君と連れて早めに会場に向かった。
「仲の良い兄弟ですねぇ……」
「アヤメ、お前目は確かか?」
「シロちゃん、イツキ君に心配されてる様じゃ危ないぞ?」
「キクカワ、テメェはもう駄目なんだな」
ロビーに居た他二人の担任教師。そんな三人を見送りつつそう呟いたとさ。