407+季節終わりの祭りごと。
アサキです、祭りです、寒いです。
「アサ君何か食べないのー?」
「要らん」
十月も下旬になるという此の時期、一年で最後になろうという祭りが今日行なわれた。朝からゲーム攻略部隊に配属されていた僕はそんなことどうでも良かったんだが、ユウヤが至極行きたそうだったので仕方なく付き添うことになった。どうせならアスカ君とか誘って行けよお前、面倒臭ぇな。
「むあー、イカ焼き食いたいー」
「お前……今たこ焼き食べてるじゃん……」
「イカとたこ様は別物だよアサ君!!」
「何故たこだけ崇める」
人込みの中で器用に身体を捻りながら、イカを丸ごと食い散らかす我が兄貴。ちなみに夕飯食べてから来たんだということを先に述べてから、こいつは此れの前にお好み焼きと唐揚げとチョコバナナを食べたということを告げておこう、――食い過ぎ。
「アサキー、ねぇ食べないのー?」
「夕飯食べたばかりだっての」
「ええ? もう三十分経ったよ?」
「お前の消化管どうなってんの?」
双子なのに体内機能の違いあり過ぎだろ。
「おーい、あっ君!」
「……」
買うならせめて其れ食い終わってからにしろ、と言ったのは確か一分前程度の話だったんだが、ユウヤがたこ焼きを買っている今。人込みから呼ばれて其方を見れば、案の定知り合いが二人程居た。
「……お前等」
「はろーあっ君、皆のゼン君だよ」
「こんばんはアサキ君!」
楽しげに笑う幼馴染コンビ、又は金髪コンビことゼン君とフドウが居た。まぁ、ゼン君はまぁ良いと思う、うん、良いと思う。ただ何にツッコミたいかと聞かれれば、フドウが手に持っているチョコバナナにあるんだ。――何で三本持ってんだお前。
「……」
「……あ、此れ、要りませんか……?」
「……」
数歩後ろのゼン君が爆笑を堪えているのが非常に気になる。
「シギ、さっきチョコバナナくじのところで買って、四本当てちゃってさ」
堪え際にそう教えてくれたゼン君は、俺あんましバナナ好きくなくてさ、と言ってから結局耐え切れず爆笑を始めた。片手に一本片手に二本、持ち難そうにチョコバナナを持つフドウ、一本だけ自分って食ったということなのだろうか。
「ボク色んなもの食べたので、一本が限界っす……」
「なけなしの運何処で使ってんだよお前」
「なけなし!? ボクの運なけなし!?」
「あれ、シギ君にゼンくーん!」
どう見てもなけなしである。
其れから直ぐたこ焼きを買って戻って来たユウヤ、シギ君のチョコバナナを見れば僕と同じく理由を気にして、そしてゼン君と同じく爆笑した。
「良かったじゃないシギ君!」
「ううっ、良くないっすよ……ボク此れから帰るまでに手が死んでしまいます……!」
一通り馬鹿にした後、僕とユウヤで一本ずつ貰ってやって――ユウヤは此れで二本目だが――、結局そんなに好きじゃないと言っていたゼン君も貰ってあげていた。やはり良い人なゼン君だ、本当、此れでナルシストじゃなければ完璧なのに。
「そういえば今日カイ君とかは?」
「来てないよ」
祭り事を好むあの馬鹿が来ていないなんて驚くべきことだが、其れには勿論理由ってものがある。
「――今週テストだから」
中間テスト、二年の此の時期にそこそこに危ない点を採った暁にはウミさんが恐ろしいことになる……と、ぼやいていたのを聞いている。そりゃ保護者なんだから仕方ないだろ、そう考えるとマヒルがどれだけ緩いか具合が伺える。良かったなユウヤ、僕は許さんが。
「カイ君大変だねぇ、親と別暮らしで良かったー俺」
「うちもとやかく言う人滅多に居ないから此れが余裕ぶっこいてられるんだ」
「え? 何か言った?」
「黙って食ってろ」
「ふーい」
「……」
祭りの場だから今は許そう、碌でも無い点数を採ったその時、覚えていれば其れで。




