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401+夏の合宿編。/五日目



 アサキですけど。やっと最終日。とっとと家に帰りたい僕としては嬉しい限りだけど、学校始まるとなると怠さ百二十%ではある。明日の朝一で帰るから、今日は皆で遊ぼうぜ! 的なことをサチト先輩が言っていた――んだけれど。



「ハヤがぶっ倒れた」


 とか、朝一で伝えられた僕等にどうしろと言うんだか。

 朝飯時に一番遅く起きてきたと思えば、どうやらハヤ先輩がハヤ先輩らしくくたばったらしい。

 三年生は昨日まで詰め込んで勉強会だった訳で、サチト先輩やフウカ先輩に言わせれば当然の事らしい。


「って訳でハヤは部屋でくたばってっから気にしねぇでゲーム大会な」


「気にしないんですか!?」


 ユウヤのツッコミに流石の僕も賛同だが。


「あー良いの良いの、ハヤなんてそんなモンだ」


「あっはっはさっちゃんってば慣れてるー」


 けらけらと楽しそうに笑うゼン君に三年目ともなればこうなるわ、的な溜息で返事をしたサチト先輩は、「ともかく! 今日は一日遊び倒すからな!」と珍しくも部長らしい掛け声を掛けて僕等を見た。……嗚呼、部長だったか。


「はい、やりたいものある人ー」


「何でも」


「ぶっちゃけ俺達結構遊び倒してたから先輩達がどうかって感じだよな」


 カイトの言葉に頷く面々。

 それを見て少し考えた風だったのはフウカ先輩、若干俯いた後に顔を上げ、すっと手を挙げてサチト先輩を見た。


「ん、どうしたフウカ」


「意見」


「流石の俺も見れば分かる」


 何かあんなら言って良いぜ、と部長風を吹かせてフウカ先輩を差した部長。フウカ先輩は手を下ろし、此の話し合いなんだか何だか良く分からない謎の会議に、




「ゲームしながら考えれば、問題無い」




 あっさり終止符を打った。とりあえず僕は、開始数秒で飽きていたらしいシノノメとユウヤがやっていた携帯ゲーム機を見て、一発ずつだけ――本気で首に手刀を入れておいた。








「先ぱーい……入りますーよー……?」


「ゼン君、何でそんなに恐る恐るなの」


「ばっかあっ君、もし先輩が寝てたら失礼っしょ?」



「ははっ、気遣いありがとうな、ゼン」


 昼過ぎ、ゼン君と二人でハヤ先輩の部屋に来た。

 寝てるかもしれないって言われたけど、だったらゆっくり開けて声掛けなきゃいいのに、とか思った僕の考えはどうやら起きていたハヤ先輩には無用だったらしい。


「先輩、大丈夫ですか?」


「嗚呼、何時ものことだから問題無い、ありがとう。……何かあったか?」


 先輩は何時も通りの笑顔で、朝方ぶっ倒れたなんて信じられないけれど、其れが何時ものことって此の人どれだけ倒れ慣れてるんだか。

 ベッドの上に居るってだけで特に変わりは無い先輩はそう言って首を傾げた。


「あ、何かフウカ先輩がとっておきの入り江に連れて行ってくれるとか何とか……」


「だから、先輩に一声掛けに来ただけです」


「そうか、わざわざすまないな、ありがとう」


 畜生此の人人間が出来過ぎてて最早苦しい。

 若干申し訳無さそうにそう言った先輩は、「楽しんで来いよ」と僕とゼン君に言った。


「だったらハヤ先輩も行ければ良かったのに、サチなんて超ノリノリでもう部長らしさ零っていうか」


「サチトらしいじゃないか、俺の分までお前達が頼むぞ?」


 ゼン君の文句に、くすくすと楽しそうに笑う先輩。本当此の人とサチト先輩が同じ人間ということだけでも解せないっていうのに、先輩を差し置いて出掛けるなんて此の僕が喜ぶと思うかええ。――ただ外出したくないだけだろって言った奴誰だ。




「こうやって、倒れ慣れてる俺みたいな人はな、」


 ふと、黙っている僕を先輩が見ていることに気付く。


「気を遣わないで楽しんできてくれる方が嬉しいんだ」


「……」


 ――まさか、読心術まで心得ているとは……!


「ゼン君」


「んー?」


「行くよ」


「え、何故そんなに乗り気な……え? じゃ、じゃあ行ってきますハヤ先輩!」


「気を付けろよ」


 背後から苦笑する声が聞こえたが、僕は聞いていないということにする。とりあえずとっとと行こうじゃないか、ええと入り江だっけ?


 何故だろう、僕はあの手のタイプの人に一生敵わない気がした。

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