397+夏の合宿編。/三日目3
「でもよ、シノはよく来れたよな」
ゼン君だよ、三日目の夜ともなると宿題なんて終わっちゃってる――一部は除くけどね――訳で皆でこんな時間(深夜二時)までゲームしてたんだけど。そろそろ寝るかぁ、と言ってお喋りに入ってからそう呟いたのはカイ君で、当のシノはキョトン顔で応えただけだった。
「いや、だってお前ほぼ飛び入りだったろ?」
「あーあーあーそういうことですかカイ君先パイ」
ぽん、とわざとらしく手に手を置いて、ゲームを片付けながらシノは笑う。
「お前、忙しいからとか何とか言ってたのに夏休みは本当暇なんだな?」
「別にオレが忙しい訳じゃないし夏休みは暇だし宿題は最終日にやる予定だったしタダだし蹴る理由が無かっただけっすよー!」
「……嗚呼、そう」
シノがうちに入ったのは夏休み中だし、確かにこの合宿は急っちゃあ急だったしな。とりあえず声だけ掛けてみてくれってナツメに言ったら案の定『し、シノノメ君来れるそうです……』なんてメールが返って来た訳で。……俺シノとメールしたこと未だ無いけど、どうせメールもテンションたっかいんだろうなぁ……ナツメとシノのメールなんて絶対温度差あるだろうよ、テンション均衡しろ、お前達。
「こーやって皆でゲーム出来るのも楽しいし! ま、皆って言ってもあっ君先パイは寝ちゃってますけどねー!」
けらけらと楽しそうなシノの言う通り、あっ君は当にご就寝済。昨日までは何やかんやで起きてたんだけど今日はもうくたばった、寧ろ結構早めにくたばった。朝もギリギリまで寝てたのに寝れるって深夜でもゲームするオレにしては凄いと思うんだよね。
「うちの弟が夜寝てるのはもう何時ものことだよ」
「案外ユウヤも直ぐ寝んじゃねぇかよ」
「まぁねー」
そう言いながら欠伸をするゆっ君を見つつ、俺は苦笑しておいた。先輩達は――特にハヤ先輩なんかは夜は寝ないとだから勿論居ないし、サチがハヤ先輩を一人にする訳が無いし、で居ない。一、二年の野郎だけでゲーム大会ってか、あーあ寂しいこって。なんてね。
「あ、高校入ってから何も無かったから嬉しかったっすよ! 合宿!」
「そう、なら良かった――未だ終わってないんだけどね」
ついそんなことを言ったけど其れは事実で、宿題終わってもあと二日あるっていうこの合宿。三年組がどんな進みなのかは一切知らないんだけど、結構詰め込んでるみたいだから最終日くらいは休むつもりなんじゃねぇのかな、なんて考えてる俺。
「明日から存分に遊べると思うとうははははは」
「カイ君達、今日頑張ったもんね」
俺達がゲームしてる間も頑張って勉強してたってリョウコちゃんに聞いたし、明日明後日は皆で遊べるね。やっぱり皆で遊んだ方が楽しいし、今日頑張った二人もきっとそうやって思ってるから頑張ったんだろうな。約一名一人でも楽しそうなの居るけど、……まぁ、ゲームする時くらいは付き合ってくれるよね。
「皆で海行って皆で花火して皆で肝試しとかイイと思うなぁオレ!」
「あははっ、シノ君夏の風物詩全部潰すつも……え? 最後なんて?」
「え?」
先輩風吹かせて風物詩なんて言ったゆっ君の言葉と笑顔が一瞬で止んだところを見ると、ゆっ君は恐らく怖がりなんだろう。
「肝試しって夏ならではって感じですよね先パーイ?」
「そうだけどね……? で、でもほら……ね、カイト君?」
「俺に振るなよ!!!!」
あ、此れカイ君も駄目だな。嘘吐けないなぁ、二人って。
「夏だからな! 何があるかどうかは分からないけどほら! 皆に聞いて、な!」
「そ、そうだよね! うん!」
「ナツメ、お前怖いのは?」
「……?」
このままだと本当にやりかねないからちょっと確認の為に隣でのんびりしていた後輩に聞いてみたが、何故かキョトン顔された。逆に此の子は平気なのね、世界って難しい。ちなみにゼン君は全然オッケーだよ? ――人が何でもかんでも駄目だと思ったら大間違いなんだからね。
此れは皆に要相談、かな。楽しそうなことなら、俺は喜んでやるんだけどねぇ?