396+夏の合宿編。/三日目2
「良い? だからこっちが繋がったらコレがこっちに――」
「ふぇ? おぇ? あぅ?」
「アンタの理解力の低さに改めてびっくりよ私!!」
「あ、ナツメっち其処!」
「え……?」
「そっちだよ、あ、此処此処」
「今ゼン君が立ってるところ」
「あ……此処、ですか?」
「そうそう! さっすがナツメっち!」
カイリだ。
さっきまで海で遊んでたけど再び勉強のターンが来てしまった。って言っても勉強なんてしてるの俺とユウヤくらいなんだけどな。他はみぃんな宿題終わったっぽくて、リョウコは未だ終わってねぇみたいなんだがユウヤに生物教えるのに忙しいみたいだ。生物に限ってはアサキもゼンもやってねぇから、リョウコだけが頼りって感じ。ちなみに俺は物理だからもう嫌って程頭良い二人にみっちり教えてもらったから終わった、頭が痛過ぎる。
「わ、」
「お、出てきたねぇ大物! 狩りに行こうぜ!」
「もう狩りに来てる」
「あっ君クールにツッコミを入れるんじゃありません俺が可哀相でしょう」
「あっはっは! あ、あっ君先パイそっちに行ったっぽいというか……えええええあっ君先パイ此の状況で採掘とか流石過ぎる!」
宿題終えた組は皆して携帯ゲーム機で遊んでるしよ……此れはあれだろ、新手のぼっちプレイだろコラ。そりゃ俺だってあと漢字だけだからユウヤよかは進んでるけど、こういう地味な作業ってのが俺は一番嫌いなんだっつーのー!! しかも目の前の奴等はゲームだぜ!? 何此のお預け! ふざけろばかやろ!!!!
「カイト、手」
「すんません」
やりますよ、やれば良いんだろ!!
「お、おおおお、終わった……!」
――おおう寝てた。
時計を見る限り、寝ていたのはほんの一時間弱だったということは分かった。漢字書くだけなんて飽きることさせられたらそりゃ寝ちまっても仕方ないだろ、寧ろよく起こされなかったな俺。
「んぁ、ユウヤ終わったん?」
「生物はね!」
「……お前未だ残ってんのか……?」
「えっ、駄目!? っていうかカイト君おはよっ!」
俺ですらあと此の漢字だけ……ってあれ、冊子が消えてる、何処に行った。辺りを見回してみれば其れは床に置かれていて、前のめって寝ていた俺が寝やすいようにどかしてくれていた様だった。
「ムサラメ君とシノ君が寝やすいようにってやってたみたいだけど」
「後輩の鑑よね、二人って」
唯一部屋に残っていたユウヤとリョウコにそう言われ、思わず後輩共を撫で繰り回したくなった。畜生俺はお前達が大好きだ!!
「……で、あの四人は?」
「「テレビゲームしたくなったからって部屋戻った(わ)よ」」
「……」
宿題終わった方々は余裕なこって!!
果てしなく参加したい俺だが今少し寝てしまったこともあって頁は進んじゃいない訳だ。今遊んでも良いけどそれじゃあまた明日やんなきゃだし、だったら今必死こいてあと二日遊んだ方が絶対良い。おしそうしよう、そうするのがベストだ!
「っし、俺は終わらしちまうからな!」
「えぇ!? 置いてかないでよ俺も頑張る……!」
「あはは、頑張んなさいよー」
夕方も近いし、飯までには終わんだろ! 余裕綽々なリョウコを恨めしく思いながらも、そう力んで漢字に取り組んだ俺だった。……俺達だった。