395+夏の合宿編。/三日目
夏の海辺からこんにちは、アサキです。
三日目の昼過ぎ、一足先に宿題全部終わらせた僕は午前はずっと寝ていたんだけど、海行くからと言って起こされた。ユウヤやらカイトやらが起こしに来るなら誰が行くかの一点張りで凌げる(※確立は20%)のにあの野郎共知恵を付けやがったのか、起こしに来たのはムラサメとシノノメだった。
『あっ君先パイあっさでっすよー! 起きて起きて起ーきてー! 皆で海に行っきまっしょーう!』
『……もう朝じゃ、無いですけど』
後輩寄越すなんてあいつ等も知恵が付いたものだ、とか寝起きの僕は思った訳だが、今思えばあいつ等宿題が終わってないから自分で海行きたいとか言えなかったんだろうな。まぁ来なくて正解だったが。
「へいユウヤ!」
「おうらいカイト君! とりゃあ!!」
――バシンッ!
「ひゃあ!!」
「っと! ……うっわ外した」
「へーい俺達の勝ちー!」
「ッたり前の結果だけどな! 俺様が居て勝てない訳は無ぇ!」
「アンタ達本気過ぎんのよ!! 私が居るの考慮してくれてる!?」
「勝負に考慮なんて言葉必要無いね」
「二人共考慮って字書けるの?」
「「……」」
遠めに見える僕を抜いた二年四人は、海に入らず其処でビーチバレーをしている。水着姿四人中約二名が本気らしく勝負の勝ち負けは決まりきっているが、頭の具合は完全に負けてるな、と。っていうか砂浜で遊ぶのに水着になるのか、ゼン君なんてパーカー着てるし普段着で良かったんじゃないの、此の後泳ぐってことかな。
「るんるんるー、んーるるんるーん、る!」
「し、シノノメ君……何作ってる、の?」
「コロッセウム!」
「コロッセ……? え?」
そしてもう二人、一年の二人は僕のまん前で砂浜遊びをしている。シノノメが何処かの円形闘技場を作ろうとしてるらしく、ムラサメはマックスキョトン顔だった。ちなみに敢えて言わないが無理だと思うんだけど……まぁ、作るというのだから夢を壊さないでおこう。
――バヒュン!
「ぐふっ!!」
「うおおおおっ!? ユウヤ大丈夫か!?」
ただの城になりつつある某円形闘技場から目を離し、声の方に視線をやる。何時の間にかうちの兄がぶっ倒れていた。
……見るに、ゼン君の殺人アタックが炸裂して砂浜に脳天からダイブした模様。ビーチボールなのに大袈裟な。……ん? 其れともゼン君の方の威力がおかしかったのか?
ばたばたと歩み寄る面々――無論僕は傍観だけど――が集まる前にむくりと起き上がったユウヤだったが、「ふぁあ」と不可解な一言を残して再び背後のノックアウトした。砂浜なんだから頭打っても大丈夫だよね、何してんのあいつ。
「だ、大丈夫大丈夫! 立ち眩んだだけ!!」
「ごっめんゆっ君、顔面は無いよね」
「狙ってやったんじゃないんだから良いよ! 俺丈夫だし!」
「――……」
「……おーいゼン、視線が飛んでってんぞ」
「わざと!? アンタえげつないわね!!」
凄いコントロールだなぁ、ゼン君。(※暢気)
「おーい!」
其れから数時間、途中から皆して建造物を砂で建築し始めた頃。
合宿所の方から三年三人と、トウマがのこのこと歩いてきた。此方に手を振っているのはサチト先輩、其の手には大きな西瓜がぶら提げられていた。
「あ、サチ」
「西瓜持ってきたぞー、割ったりはしないが皆で食おうぜ! ――って、待てお前等此れ何?」
いち早く気付いたサチト先輩が苦笑を浮かべてそう言う、此れ何、と聞かれても建造物としか良い様が無い。僕は作……造ってないけれど。
「上手」
「フウカ先パイ本当ですかやったねオレが最初に作り出したんだもんねやっほーい!」
「良かったね、シノノメ、君」
しゃがみ込んだフウカ先輩がそうやって褒めるから、シノノメが万歳して喜んでいる。ムラサメが保護者になってる気がするのも気にしたらいけないんだろうな。
「よっし、じゃあ西瓜切るねー」
「ほらお前達、アマギリ先生が切って下さってる間に手、洗って来い」
『はーい!』
お前は大丈夫そうだな、と笑うハヤ先輩にひとつ頷き、僕はどたばたと手を洗いに走る後ろ姿を見送った。
「終わったら宿題の続きだかんな」
皆が行ってしまってからくくっ、と笑みを零したサチト先輩。時間的にはそういうことになりそうだな、とは思ったけれど、まぁひとつだけ言わせてくれ。
水着まで着てんのに――海入んねぇの、お前等?
アサキさんだけ普段着+パラソルの下だと思っていただければ良い(何が)