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391+夏の合宿編。/一日目4


 夕飯だよユウヤでっす!


「お前達、結局あれから戻って来なかったろ」


 苦笑するハヤ先輩にそう言われ、俺とカイト君は自信満々に頷いた。リョウちゃんなんかは罪悪感なんだか分からないけど落ち込んでる、良いじゃん一日目からそんな頑張らなくたって!


「明日から頑張りまーす」


「俺もー」


「分かってるよ、終わらなかったら酷いぞ?」


 何が酷いんだろうハヤ先輩ったら! そんな甘いマスクで言われたって怖くないんだから――


「――アサキが」


「「頑張ります」」


 怖い、多分怖い。今までの経験的に反射で返事をした俺とカイト君だった。


「先パイ達はずーっと勉強してたんで?」


 話の的であるアサキは夕飯運びを手伝っている為――こういう時だけ気遣い出来過ぎてお兄ちゃん泣きそう――聞いていなかったらしい。俺達と同じく席待ち組のシノ君は隣のフウカ先輩にそう尋ね、フウカ先輩はこくこくと数回頷く。


「教え方が上手だから、長くは感じなかった」


 視線の先にはアマギリ君、流石頭良いだけあるよ。


「ん? そんなことないよっ! 皆が頭良いからスラスラ進められるだけ! 僕なんて要らなかったんじゃない?」


「そんなこと無いですよ、とても助かっています。大学四年の夏休みなんて貴重なお時間を費やして頂いてるんですし、彼等と遊びに出掛けたりして下さいね」


「ありがとさーん、でも大丈夫だよ? もし遊ぶなら三人も一緒のが良いし。皆でねっ!」


 アマギリ君は極上の笑顔を浮かべてそう言った、やっぱり全然変わってないなぁ。俺の記憶の中に居たアマギリ君は高校生で、マヒル兄の変わった友達としか思ってなかったんだけど。



「はいはーい、話は此の辺にして夕飯としましょ」


 そして、そんな話していれば。ウェイターさんみたいに皿を運んできたゼン君にそう言われ、一瞬皆が唖然とする。


「うわぁ、ゼン凄ぇ」


「相変わらずだな……お前」


 合宿とは言うけれど、炊事洗濯は基本俺達が自分でやらなきゃいけない。ローテーションで二人ずつっていうことで、初日はゼン君とリョウちゃんが担当だった――のは、良いんだけど。


「ユウヤ並」


「下手すりゃユウヤ以上だな」


「私やること全然無かった……」


 運ばれてきた料理は、何と言うか――イタリアン? 風? 一緒に戻ってきたリョウちゃんの口ぶりからすると、ほぼゼン君がやりましたってことだよね。

 昔馴染であるサチト先輩もそう言っているから元から得意だったんだろうね、今更ながら料理得意だったんだなぁ、と俺びっくり。


「俺ってば何でも出来ちゃうもんだからねぇ、さっすがゼン君☆」


「流石っすゼン先パイ……!」


 ゼン君信者と書いてシノ君も騒いでる――嗚呼、其れは何時ものことだった。皆慣れてるから、大抵のことならゼン君をスルーするんだけど、今回ばかりはサチト先輩以外本当に驚いたっぽくて口々にゼン君を褒め称えていた。



「超美味そうじゃねぇかよゼンコルァ!!」


「合宿って感じはしないな、サチトは知ってたのか?」


「まーな」


「ま、冗談は良いとして、俺が出来るのは料理だけよ。洗濯とかは怠くてやってらんねぇっての。――まぁゼン君器用だから何だって出来ちゃうオールマイティっていうか?」



『いっただっきまーす』


「嗚呼、其れは聞いてないのね」


 冗談は良いとしても自慢入っちゃうところがゼン君と書いてナルシストらしいよね!


「凄いなぁ、俺あんまりイタリアンとか作れないからなぁ」


「そうなの? ゆっ君なら何でも作れるイメージあったよゼン君」


「マヒル兄ならね」


「あー、高校の時に色々作って貰った覚えある。マヒルって高校からああだったけど、今会ったら料理スキルとかもっと上がってたりして」


 くすくすと楽しそうなゼン君にそう言われ苦笑で返す俺、アマギリ君は思いに耽り出したけど、……んー、マヒル兄の場合上がったのは料理スキルではなくて家事スキルかと。



「――というかさ、俺今思ったんだけど、アマギリ君とかアサキも食事当番入ってるんだよね?」


 少し違うことを考えていた結果、ふとそんなおぞましい事実に気付いた。


「? そりゃあね、僕だけ作らないなんてそんなことは――」


「いやっ! だってアマギリ君に作らしたらキッチンとんでもないことに……!」


「大丈夫だよユウヤ! 僕だって昔の僕じゃあ無いよっ!」


 そんなにキラキラとしたオーラ纏われても既に様々なドジっ子ぶり目の当たりにしてるからね!?



「――包丁だけは、落とさないようにする」


「アサキお前、其のレベルからなのか……!? ……ちょっと待て俺お前と明日食事当番だぜ!?」


 一足先に夕飯食べ始めたアサキは、フォークを指先で持ちながら呟いた。戦いたのはサチト先輩、本当にドンマイとしか言えないよ俺。いざとなったら俺が応援に行くっきゃないだろうけど、宿題やれって追い返されそう。

 明日から本当どうなるのかな、そう思わない訳ではない。でも今はとりあえず、冷めない内に美味しそうなご飯を食べよう――其れだけを思った。



 俺ってば懸命!




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