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390+夏の合宿編。/一日目3


 アサキです、疲れた。

 何に疲れたのかと聞かれると、無論宿題なんだが。海行きてぇだの遊びてぇだの騒ぐ馬鹿は全力で無視して――音楽聴いてたって普通に聞こえるっつーの――黙々と進めていたら、僕の半分以下も進んでいないであろう宿題の一部を終わらせた奴等はとうとう飽きて、


「アサ君、休憩所望!」


「外行こうぜ外!!」


 とか叫び出したから仕方なく許可した。三時間――保った方だろこいつ等にしちゃあ。


「先パイ先パイあっ君先パイオレらも休憩したいですよ! なぁナツメっち!」


「え……俺は別、に――」


「はい休憩! 外行って遊ばないとねナツメっちー!!」


 そして先輩がそんなだから後輩も折れた。そして尋ねたなら少しは聞いてやれよシノノメ、其れと僕に許可を取る必要は無いはずなんだが。

 まぁ、僕も多少疲れたし休むことにする。ゼン君は何時の間にか其処ら辺で寝転がってたし、カイトも英語は進んだみたいだし――要はうちの身内だけろくに進んでないってことなんだが本人は気にしてないんだろうな。


「やっぱり涼しい環境って宿題も進むものよね」


「リョウちゃんの家クーラーは?」


「昼以外はあんまり付けないようにしてるのよ、アンタ達は?」


「少し目を離すとにゃんこが干乾びそうで怖いから、リビングだけ付けるようにしてるかな」


 猫って干乾びたっけ。

 そんな僕の疑問は余所に、休憩だからと此方にやって来たムラサメとシノノメ。寝転がってんのかと思いきや本当に寝てたらしいゼン君を覗き込んで何やら楽しそう(楽しそうなのはシノノメだけだが)だけど、外に行くなら起こしてあげた方が良いんじゃないのかな。


「海があるなら海に行くべし!」


「おういえすっ! 行こうぜカイト君!!」


「ちょっ、アンタ達休憩とか行ってもう絶対やる気無いでしょ!?」


「ほーれリョウコも行くぞ、今回の為に水着買ったんだろ?」


「は!? な、な、何で知ってんのよアンタ!!!!」


「お前の行動くらい馬鹿でも読めんだよざまぁ」


「凄いなカイト」


「何せこういう時じゃないと女として見て貰えないからな」


「……誰に?」


「バッ……ロクジョーカイリィいいいいいい!!!!!!!!」


「おっと口が滑った、――ってリョウコ怖ッ! お前何振り上げてんだよぎゃあああああ!!!!」


「えぇ!? 俺まで被害受けてるんですけど!? ちょっ、うわあああああ!!!!」



「カトウまであんなに張り切って、そんなに海が楽しみだったのかな……」


「……あっ君、其処まで来ると最早罪だよ」


 あれ、ゼン君が起きた。

 カトウが教科書文房具その他諸々を振り被って投げ、其の被害に遭うユウヤとカイト。三人は一足先に部屋を後にしてしまった。


「おはようゼン君」


「ん、おっはよん。で? もう遊びに行くの?」


 ちらりと時計を見てそう言ったゼン君。「まぁ、頃合だよね」なんて苦笑も足されたけど、あの二人にしてみれば上出来な勉強時間だから僕は良いと思ってる。


「折角近くに海があるなら少しくらい泳いだって文句無いと思うっすオレ!」


「まぁね。でも、ゼン君ぶっちゃけると其処まで泳ぎ得意でない」


「ゼン君って結構使えないね」


「あっ君、もう少しオブラートに包もうか」


 高いところ駄目だったり泳げなかったり――本人曰くカナヅチな訳では無い――、中身がへっぽこってどういう。


「ね、ね、先パイ達も行きましょうよう! 折角なんだから泳げなくったって行った方が絶対お得だって! なぁナツメっち?」


「え、……うん」


「ほうらっ! ナツメっちもこう言っていることだしこうなったら行くっきゃない! 行くっきゃないってそりゃそうさー!!」


「え、あ、シノノメく……え?」

 

 そうしてノリに負けて意見を変えざるを得なくなったムラサメは、何時でもハイなテンションで我が道を行くシノノメに連れ去られていった。



「元気だねぇ……」


「たったひとつ下なだけだよゼン君」


 寝起きは関係ないだろうが年老いたようなことを言ったゼン君は窓の外を見る、つられて僕も見たけど、未だ誰かの人影がある訳では無い。其の内きっと、馬鹿みたいに盛り上がった馬鹿が現れるんだろう。同じことを思ったのだろうゼン君は、「行くだけ行きますか」と、呆れるように言って笑った。


 先輩達も終わったかな、声を掛けてから行こうか、とだけ、僕は思った。




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